【洸介の場合】

俺が初めて響太と出会ったのは、

幼稚園の時だった。


俺は昔から何かと器用で

幼稚園の頃から不自由なく楽しめていた。

先生にも気に入られていた。


響太はというと、

1人でいる事は無かったけれど

特に目立つ訳でもなかった。


けれど、何故か俺の母親を含め母達から

響太の評判は良かった。

「響太くんは本当にお利口ね」

などと言われているのをよく耳にしていた。


だからか、響太のことはいつもどこかで

気になっていた。


そして、俺達は小学生になった。

俺は相変わらず誰よりも「子供らしく」

それでいて周りからの支持も得て

物事をそつなくこなしていた。


響太とはまだ同じクラスになった事は無かった。


4年生になった頃、響太が1人走って

学校のプールの裏側に行ったのが見えた。


何故だかそれが気になって

俺はこっそりとついて行った。


すると、響太が一生懸命何かをしていた。


よく見ると何かの種を植えている様だった。


「何してんの?」


俺が声をかけると、

響太はすごく驚いていた。

誰かが近くに居た事にも気づいていなかったのだから、当たり前だ。


「何してんの?」


もう一度、聞いてみた。


すると、

「昨日、小鳥が死んじゃってたから…ここに埋めたんだ。でも、いつか忘れちゃったら嫌だなと思って」


「そんで?」


「忘れないように花の種を蒔きに来た」


俺は驚いた。


実は昨日、校庭で小鳥が死んでいたのを

俺も知っていた。


そして「キモっ」と思っていた。

俺といつも一緒にいる奴らも同じように

「キモっ」と言ったので、

木の棒でとりあえず端っこに追いやっておいた。


本当は「キモっ」と言いながらも

誰にも踏まれない様に

端に寄せたのだ。

でも、俺に出来た事と言えば

それが精一杯だった。


響太は種を埋め終わったらしく、

こんもりした土を両手でポンポンと固めていた。


それを見て、俺は水道へ走った。

そしてジョウロに水を入れて戻った。


響太はまた驚いた顔をしながらも、

「ありがとう」と言った。


「ちなみに何の種を植えたの?」


「分からない」


「え!?分からないって何だよ?」


「家にあった種を適当に持ってきたから」


「何だよ。それ」


俺たちは顔を見合わせて笑った。


それから俺たちは当たり前のように仲良くなって行った。


数ヶ月後、そこには名前は分からないけれど

真っ白でとても良い香りのする花が咲いていた。


その花が何の花だったのか、

未だに分からないけれど

俺はあの時すごく嬉しかった。

そして、今でもあの花の事をよく思う。


その後、嘘みたいな話なんだけど

俺には響太には特別なオーラの様な輝きが

見える様になった。


普段は優しい黄色っぽい金色、

時にはキラキラとした虹色。


正直何度目を擦ったことか。

けれど、何度見直しても

その光はいつも響太を覆っていた。


こんな話、

恥ずかし過ぎて

一生誰にも言えないけれど。


俺の家では色々と面倒なことが起きたり、

心がやさぐれそうになる事も沢山起きたけれど、

響太が居れば大丈夫だと思えた。


勿論、更に女の子がいれば言うことはないんだけど(笑)



その後、俺達が初めて大きな会場で

ライブをやることになり、

あの白い花を何十年ぶりに見た。


他の沢山の花と一緒に

大きな花束となって届いていたのだ。


「響太!この花って…」


「ジャスミンって言うらしいよ」


俺達は本当はかなり緊張していたんだけど、

その香りで一気に気持ちが落ち着いた。

(響太も顔には出さなかったけれど、何度も同じところを行ったり来たりしていた 笑)


今日の響太は優しくてキラキラした白い光に

覆われていた。


うん!やっぱり響太がいれば大丈夫だ。


って、俺は女のコが大好きなのにな(笑)


響太の事を好きな自分も悪くないな〜

といつも思っている。


多分、響太もそうに違いない(笑)





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