病名「設定厨」

 やあ、こんにちは。

 一話を投稿してから早速エタった物書き、そう……僕だよ。


 ──時に諸君。中二病と言う病気を知っているかね?


 中二病……それは思春期に発祥する病で、自己愛に満ちた空想や嗜好の諸々が行動に出てしまうという厄介な病気である。自分には特別な力ないし才能があると過信した挙句、気障な言動を取ったり、大人になって振り返ってみればベッドの上で「ア゛ア゛ア゛ァァァ!! 痛い痛い!!」と後悔に転げまわること必死の、大人になってから痛みがぶり返してくる恐ろしい病である。何より、発病中には実感がないため、完治してからのダメージふり幅が高い病気だ。


 知っている諸君にはもう説明するまでもないだろう。やたら「闇の~」とか、「光の~」のような概念的属性言語を多用したり、火や炎のことを「紅」と比喩表現したり、何故か「巨悪=カッコいい」とダークサイドにのめり込んだり、まあともかくそういった病だ。


 因みに完治後発祥する事例として批判病の高二病、スタバ信者もとい大二病なる病気を発病することもあるがここでは割愛させていただく。何故なら僕はもうすぐ社会人の身の上でまだ中二病を拗らせた末期患者だから。あと、僕はドトール派である。カードも持ってるぜ。


 閑話休題。


 さて、この中二病と呼ばれる黒歴史恐ろしい病を何故、冒頭から説明したかと言うと、それが今回のエタテーマ所謂「中二病作品」に繋がるからだ。


 「中二病作品」……もはやライトなノベルでは満足できなくなった末期ディープな同胞ならば心当たりがあるかも知れない。


 怒りの日、G線、シュタゲ、バルド。どれか一つでも聞いたことがあるならおめでとうアンドよろしく、多分君とは仲良く馴れるぜ。


 とはいえ、ここはあくめ……じゃない、天下の角川が運営するWeb小説の場所。と言うことで該当する例(作者私見)としては僕も特典目当てで発売日当日に必ず三、四冊は購入している竜ノ湖太郎先生の問題児シリーズなんかが当てはまると思われる。


 中二病という概念自体、確固として説明できる意味は僕が知る限り無いが、作品に用いられ読者が定める傾向として、作品世界を彩る事細かな設定、壮大な物語、群像劇チックに一人一人練られたキャラクター達、時に主人公より栄える悪役、そしてその悪役を前にして尚、カッコいい主人公。というか皆カッコいい。


 まあ、とにもかくにも現実やら日常やら諸々をぶん投げひたすら我が道を往く作品群が主に該当する。大衆受けは場合によりけりだが、そういったニッチなジャンルが好きなファンが付けば、一定支持で続けられる分野だと僕は分析している。


 他にもキャラクターが作中で活動するだけのものらと違い、物語自体に一つの確固たるテーマがあったりするのも特徴か。


 私見で選ぶならば上記の問題児シリーズ以外だと、カンピオーネ!や境界線上のホライゾンなども該当するか。セカイ系と呼ばれるジャンルと重なる部分も多いかも知れない。


 これでだいたい、分からない人にもイメージできただろうか?

 僕の例が良く分からないならばもう最近流行の「FGO」を頭に浮かべていただければよろしいと思う。

 コレの原作こそ本家本元、信者興奮の名作中二病作品だと思うので。


 ところで先生、僕はFateより、まほよか月姫リメry……。


 私情はともかく。以上の例にあるようなものが中二病判定を受ける作品群だと理解していただけただろうか。

 では本題に入ろう。


 Webで小説を書くとき、エタる要因とは様々あると考えられる。単純に現実が忙しいというものやスランプに陥って中々書けないなどなど……。

 そうして長く筆を取らない内に感覚やらやる気やらを無くして、と。


 そういった数多あるエタってしまう理由、その中でも特に僕に該当する理由付けとして挙げられるのが所謂『設定作りこみすぎてエタる例』である。


 先ほど挙げた『中二病作品群』。これに嵌り込み、自分でも書いてみたいと筆を取った筆者がいるなら分かるだろうが、これらの憧れを胸に筆を取った場合、どうしても細部まで作りこんでしまう病気にかかってしまう。


 何せ、それが好きで憧れて、自分でも筆を取ったのだ。

 そりゃあ作風真似るのは致し方なく、設定作りこんでしまうのも業腹だが仕方ない。


 例を挙げるなら例えば、異世界モノを書くに当たって登場する『魔法』。

 基本的にフワフワした設定で良いのにやたらとガッチガチに作りこんだり。


 一、『魔法』

 術式を用い起動する魔術とは異なり、魔力を用いた世界との契約、法則そのものと昇華された業。

 あらゆる既存法則に優先する個人法則ともいうべき力であり、例えば、「全てのものを燃やす」という魔法であった場合、原理的に燃えないものや既に燃えているものといった燃えないものですら、それら法則を一切無視して燃やすことが出来る。いうなれば魔力を用いた法則の押し付け、自分のルールを世界に通すともいうべき御業。

 その特性上、詠唱や魔法陣は一切不要。望み、念じた瞬間にルールは世界に具現化しあらゆる現実を侵食して発動する。

 そのため対抗するには同じ魔法使いであるか神や天使と言った世界が与えた法則そのモノ、いわば概念存在と言うべき存在でなければ対抗不能。


 ……と上記は作者が思いつきの即興で書いたため個人的に作りこみが随所粗いと思うが、大体、このように普通は「そういうものだ」とフワフワ流される設定に対してやたら理論付けしたり、理由付けしたりする傾向にある。


 ところで、もう察しの言い方は気付いているだろうが、魔法一つ、こうして態々は細々とした設定をつけていけばどうなるか。いうまでもあるまい。


 とにかく疲れる。そんでメモしないと忘れる。それに尽きる。


 例えば僕の場合、利用するWeb小説でメインの某大手二次創作小説サイトでカンピオーネ!の二次に挑んだ事がある(現在エタ中)


 では、分かりやすいよう僕が書くにやったことを端的に記す、


1、神話の資料を集める。

2、それを徹底的に調べ、検証。

3、こじつけられる設定を作る。

4、可能な限り矛盾が起こらないよう説明を作る。

5、作り上げた設定に噛み合うようシナリオ構成。

6、原作との矛盾が発生しないよう読み直し確認する。

7、以上、登場できるほど作り上げた設定に対してキャラ付け。

8、先の物語の展開も考えながら書く、時には伏線も。


 ……である。

 分かってくれただろうか。それはもうとにかく疲れる。


 ここまで読んで思った人もいるだろう。

「物語はもっと自由なんだから気軽に書こうぜ」、と。



 全く以ってその通り。反論の余地もない。


 だがしかし、残念なことに僕に類似した人が筆を取った動機は既に述べた通り『中二病作品群』に憧れて筆を取ったものである。

 そしてそういった作品に憧れて筆を取ったもの……『設定厨』たちはもはや宿命という域で『物語の設定』という呪いからは逃れられない。


 作者も一時は考えた事がある。

 ラノベ作家、シナリオライター、それに憧れるならば受ける作品を書くべきだと。


 そうして流行の俺TUEEEを書いてみて、僅か数話で某サイト換算ポイント200ほど記録して……即座に続きが書けなくなった。


  冷静に考えてみれば当然だ、僕は所詮物書き、憧れから筆を取り、憧れを原動力に書いているのだから。趣旨からズレたものを書いてもただ詰まらないだけだし、『作家になりたい』ならば既に、ニッチと分かっている作風に手は出すまい。


 受けないなどとは百も承知、エタる理由も重々承知。それでも敢えて設定だらけのこのジャンルに挑むのだから救いようはない。


 つまるところ、今回の教訓もまたただ一つ。

 本気でプロになりたいならば、


「僕のように書くな。」


 とこの一言に尽きる。

 エタりたくない人は、設定の多い作品など作らず、キャラクターを作りこみ、出来るだけ大衆が感情移入できる作品を書きましょう。


 間違っても『正義』とは何かとか『俺はその逆、邪悪を滅ぼす死の光に────“悪の敵”に成りたいのだ!』とか『私は全てを愛している!』とか『俺が偽物であったとしてもこの思いは決して間違いなんかじゃない!』とか『魔王とは不退転。混世の王は討たれるまでが王道だ』みたいな大仰なセリフを平然と吐く大物キャラクターじゃなくて普通のキャラクターを書きましょう。

 名言なんて本来不必要です。大衆受けするなら、ただ可愛く魅力的なキャラクター、それで十分なのです。


 間違っても論じるテーマに『才能』やら『正義』やら『平等』やらを据えてはならんのです。そもそも小説は自由なのですから別にテーマは必須じゃありませんし。


 エタらず受けたいならば大人しく俺TUEEEしましょう。マンネリが過ぎると逆にヘイトを買いますが、自分なりのオリジナルを加えれば受けるのですから態々手の込んだものに手を出す必要はありません。


 自分もいつだが乙女ゲーに転生した男主人公という王道設定に見かけなかった『男の娘』が男主人公のヒロインと言う腐女子層と特殊性癖層を二重狙いした作品描いたら六、七話ぐらいで200ポイント軽くいきましたし、そんなんでいいんです。難しく考えることはないんです。小説は自由なんです。


 全てはコレに尽きる。というよりフワフワした設定で作ったほうがエタらず楽で大衆受けするからね! 僕みたいなスタイルで書いても狙えるのはニッチな層か僕みたいな末期患者の物書きだけだからネ!




 まあ、僕みたいに「作家は馴れれば良い。書きたいものを書くだけ」って方々には今更な忠言だけどね。エタろうが疲れようが、書きたいから書いているわけですし。人気が出ればちょっと嬉しくでなきゃ寂しい、物書きで書いているならそれぐらいで丁度良いのさ!

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エタ作家の忠言 東郷 学 @itizisousaku87

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