第18話 ファストフードの真髄

This Message From NIRASAKI N-TOKYO JAPAN

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 こんばんは。今日はこれからコンビニで仕事だけど、ドクの家に寄ったら、珍しいことに夕飯を出してくれた。ハンバーガーだ。

 日本は令和に入ってから、経済危機というか、経済崩壊というか、そういう事態に突撃することになった。円は全く信用されず、実際、今の日本人は円を使わずに、国際仮想通貨で生活している。電子マネーだと思って貰えばいい。これを誰が保証しているかは、また今度、お伝えする。

 というわけで、ほんの短い間だけど、国際的に展開していた日本企業が大打撃を受けたり、日本を捨ててどこかに拠点を移したりした一方、日本に進出していた海外企業が、撤退を決めたりした。自動車メーカーの日産はなくなったよ。海外のメーカーと一緒になった。

 ファストフード業界もそういう混乱に飲み込まれたものの、どうにか命脈を保っている。ハンバーガーのショップは、いい加減、充実している。しているけど、整理もあって、平成よりは減っている。逆に日本人を象徴するファストフードとして、牛丼屋が隆盛を誇っている。陸マグロと同じ変化が、純粋な牛肉にないわけがない。「全霜」と呼ばれる牛が開発された。これはびっくり、霜降り肉と呼ばれる上質な部位が多い、という変な牛だ。見た目は既存の牛と変化ないのは、僕は実際に見たのでわかる。畜産業の飼料の問題も、令和の課題の一つだね。実は、国内に大飼料工場がいくつもある。農作物の工場生産は、もはや国策だ。

 それで、ファストフードだね。牛丼は、平成の価格で言えば、並盛りが、そうだな、三百円ほどだ。つまり、それほど変化がないか、あるいは安くなっている。安い理由は、やっぱり人件費。今の牛丼屋は、ほぼほぼセルフサービスなんだよね。客が座る席に小さな端末があり、そこで注文し、料金を払う。席の目の前に口があって、しばらくするとそこから熱々の牛丼が出てくる。今は割り箸は消えたことも、明記しておく。で、客はさっさと牛丼をかき込んで、空いた器をついさっき、丼が出てきた口に入れる。箸も放り込む。これで食事は終わりだ。誰も水もお茶も出してくれないのを、ドクが嘆いていたけど、僕はそれほど気にならないね。ちなみに家に牛丼を持って帰ろうとすると、少し余計にお金を取られる。それでも、その場で払った額の八割は、丼を返すことで、キャッシュバックされる。

 ドクはハンバーガーが好きで、頻繁に食べているよ。僕がたまにゴミを片付けていると、昔ながらのハンバーガーの包み紙が出てくる。その包み紙を見ると、どうやら昔ながらの人間が手で作っているハンバーガーショップのものだと分かるけど、これは令和の変な捩れでもある。つまり、平成の頃のハンバーガーの製造工程が、あまりに完成されすぎていた、ってことだね。注文から一分くらいで、熱々のハンバーガーが出てくる。熱々のポテトも、冷たいシェイクも出てくる。全く無駄のない、余計なものを全て切り捨てていた、平成のシステムは、結局、維持されている。この後、どこをカットできるだろうか、と考えると、注文する客がカウンターに並ぶことを解消するくらいしかない。ただ、僕の主観だけど、ちょっとの無駄があった方が、どこか特別感がある。全てがスムーズに進みすぎると、逆に刺激がなくなる。行列に並んで強い日差しや寒い風に耐えたり、前の客がのろのろ注文しているのに苛立ったり、そういう要素は、令和の買い物のスタイルからは極めて細部まで、取り除かれている。

 そんなわけで、ドクはどうやらそのちょっとした不満を確認するために、ハンバーガーショップに行っているような気さえする。ドクくらいの科学者なら、ハンバーガーを簡単に作る機械くらい、あっさりと作れそうなものだけど、もちろん、自分で機械を作って、自分でハンバーガーを作って食べるのは、ドクが求めているだろう不合理さが介在しないので、だからそんなことはしないんだろうね。

 あぁ、そうか、思い出した。一年くらい前かな、ドクがやっぱりハンバーガーを差し入れてくれた時、ドクは、珍しく店員のことを色々と言っていた。注文の利き方がなってない、手際が悪い、とか、その手の簡単な文句だ。でも今思ってみると、あの時のドクは楽しそうだった。

 機械が店員の仕事をあらかた奪った時、人間同士がその場限りの意思疎通で、商品や代金をやり取りする文化が、根こそぎにされたとも言える。機械と人間の間では、何の温もりもないんだよね。

 ただ、僕には温もりというものは、よくわからないけど。

 記憶を辿ってみると、人間の女性店員が、商品を渡す時にそっと手を添えて、その手が僕の手にちょっと触れた時、温もりを感じたかもしれない。

 気持ち悪いな、僕。





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P.S. Fast? First? Japanese???


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