第17話 旅行という概念の激変

This Message From NIRASAKI N-TOKYO JAPAN

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 やあ、平成の人たち。今日はドクが出かけている。妹さんに会いに行っている。

 令和の時代の旅行は、実に奇妙なものになっていることをお話ししよう。政府による地方の消滅政策により、おおよその人口が都市圏に移動した。僕やドクが生活しているのは、実は令和の日本の首都なんだけど、このことはまた今度にしよう。とにかく、地方が消えるということは、そもそもの旅行の目的地が消えることになる。

 消えたものは数知れない。宿泊施設がないのは自然な現象だよね。ライフラインは最低限だし、そもそも、食料品の店もなければ、クリーニングも外注出来ない。何よりも、従業員の確保が難しい。この点に関しては、一部の巨大な企業が、まだしぶとく運営している宿泊施設があって、そこの従業員は、まさに自分の職場の宿泊施設で生活している。しかし、そんな辺鄙なところで、たまにやってくる観光客を待ち構えて生活するのって、どういう気持ちだろう?

 旅行というものへの大ダメージは、移動手段にもある。自家用車は、どこかでバッテリーを充電する必要があるが、人がいないところに充電ステーションはない。大型のバスは、屋根やらに太陽光パネルを設置するけど、僕はどうも好きになれない。必要に応じて発電できるほどのパワーは、そのパネルにはないと思う。つまり、大昔の海外SFにあった、火星で一人きりでサバイバルする小説みたいな具合になるんじゃないか。どちらにせよ、移動手段は自動車以外は、市民には手が出ない。電車はもう走っていないようなものなので、あしからず。

 ものすごい富豪は、自家用飛行機を持っているけど、令和の飛行機は、平成の終わり頃に大問題になっていた、オスプレイと同じスタイルなんだ。平成の頃には全く需要がない要素、つまり、ほぼ垂直で離着陸するが為に、大規模な滑走路を必要としない、という点が、令和の日本ではものすごく都合がいい。地方では空港の維持管理は、どこかの企業がやっている程度で、一般的な移動手段としての飛行機は消えていて、理由は、滑走路の維持以前に、燃料がものすごく高価で、ジェットエンジンはもはや用済み、害にしかならない。で、今の飛行機は、プロペラで飛ぶし、垂直で離着陸する、という、まさに例の輸送機そのものだ。

 というわけで、旅行はものすごく優雅な遊びで、金持ちか、あるいは無謀な若者の冒険の受け持つジャンルになる。無謀な若者は、今でも大勢いる。平成の頃には、自転車で日本を縦断したり、そういうことも可能だっただろうけど、今はそういうわけにもいかない。だって、ど田舎を自転車で突っ走っても、誰とも出会わない。まぁ、そこらじゅうに崩れ落ちつつある廃墟が無数にあるから、いざという時はそれを勝手に利用して、雨風を凌げるかもしれない。凌げるとしても、ただ屋根と壁がある、という程度だろう。電気は流れていない、水道も止まっている、ガスなんて天地がひっくり返っても手に入らない。ネットに端末を繋ぐことはできるけど、さて、端末のバッテリーをどうするか、考える必要が生じる。そんな極めてシビアな、フルコース揃っている苦行のような旅行を、今でも何人もの若者が時間か体力の有り余ったがために、果敢に実行に移す。で、年に二人か三人、どこかにそのまま消えて、戻ってこない。この時ばかりは警察が、端末の位置情報をフル活用して、探し出す。大抵は息をしてない。

 そうか、登山というものは、未だに残っている。これは一つは外国人観光客を呼び寄せるためだ。一番は富士山で、日本人以上に外国人が来ている。平成の頃の富士山はゴミだらけだったらしいけど、今はそんな光景はなくなった。外国人はマナーがいいし、日本人登山客も、まさに選ばれた民なので、環境を進んで破壊しようとはしない。そんなわけで、日本人はマナーがいい、などという事実かどうか怪しい評価が、外国人登山者には、定着している。

 それで、登山だ。登山客のための基地が、いくつかの山の麓に設置されている。ここには電気も水道も通じていて、その上、数日に一回のようだけど、大型バスが都市部との間を往復していると聞いた。登山は旅行というジャンルの、最後の砦ということ。ちなみに基地には山岳救助隊が常駐していて、ここには救難ヘリコプターさえある。ただ、この登山基地の利用料は、ものすごい高額だ。これだけははっきりさせたいけど、日本人の趣味と呼ばれるものは、「自然」と呼ばれるものこそが至高、と令和では考えられた時期があった。山登りは無理でも、自分の家の庭を整備することが流行り、ただ、これは都市部への人口の集中により、地価が跳ね上がって、すぐに消えた。代わりに集合住宅のベランダで植物を育てるのが流行り、それが下火になっても、一部の人々の中で、盆栽を育てるのが一つのステータスと、認識されている。ドクの家の庭には三鉢ほど、小さな松の盆栽がある。ここ数年、成長しているように見えないのは、むしろ良い傾向だ。最近は促成栽培されている盆栽が出回って、成長が極めて遅い盆栽ほど、本物として、価値がある。

 というわけで、ドクがどうやって妹さんに会いに行ったかといえば、ヘリコプターだ。ドクの財力、侮りがたし。






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P.S. Future Is Super Natural!

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