第12話 電気事業の大競争
This Message From NIRASAKI N-TOKYO JAPAN
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久しぶりのメッセージなんだけど、そちらでは連続して届いているはず。
こちらは数十年ぶりの停電が起こって、機械が壊れていないか、チェックするのに大わらわだった。被害はなくて、助かった。ドクもピリピリして、日本電気公社に文句を並べ立てたけど、今は落ち着いた。暖房が一番、不安だったけど、まぁ、凍死しなかった。真冬だったら危ない。
平成の頃には自宅の屋根などに太陽光パネルを置いて、発電を試みる事例が多くあったはずだ。あの流れは、令和になってさらに加速し、とんでもないことになった。ほぼ全ての家の屋根に太陽光パネルが設置されたけど、これには前段階として、高効率の新型の太陽光パネルの開発があった。このパネルの発電率は、従来型の倍になり、最初こそ厚みがややあったものの、すぐに改良され、薄型、軽量へと進化した。
というわけで、日本の家庭の電気自給率は六割を超える。電気自給率について説明しなくちゃね。自分の家で消費する電力を完全に自給自足できる家庭の割合だ。つまり日本の全部の家庭のうちの六割が、日本電気公社から電気を買う必要がない、ってこと。
日本電気公社は、東京電力だの中部電力だの、そういうのを一つにまとめた会社で、これは人口の集中もあって、平成のような大きな組織になる必要の消えた時代性に合致する。日本電気公社が今、どんな仕事をしているのかは、あまり知られていない。電気が不足している家庭や企業に電気を売っているのだが、どれだけの儲けがあるのだろう。
前は、電力会社が家庭から電気を買い取り、それを転売しているような形だったけど、今は電力会社が買い取ることはない。だって、電気は余っていると言ってもいいほど、生み出されている。
そんな社会で各家庭が頭を悩ませているのは、パネルのメンテナンスや買い替えのことだ。高性能だけど、太陽光パネルの値段は、ここ十五年、少しも変化しない。変化せずにじわじわと性能が上がっていることを良しとしたいところだけど、その値段は、ほとんどぼったくりだね。太陽光パネルでせっせと発電して、電気料金から解放されても、今度はパネルの購入に、ちょっとしたローンを組まないといけない。電力会社が得ていた収入は、太陽光パネルの生産者が、ごっそり頂戴していることになる。
まあ、それはそれで、仕方がない。よくあることだよね。
電力が有り余る自体は、別の展開にも波及した。ガス会社、そしてガソリンスタンド、この二つが、その波をかなり被った。オール電化、というフレーズはいかにも平成で、令和では、全てが電化製品なのは当たり前だ。ガスコンロは消えた。ガスオーブンも消えた。ガソリンスタンドは、自動車が電気自動車に切り替わり、ガソリンの需要が激減した。ガソリンスタンドのほぼ全てが充電スタンドに変わり、ガソリンはもう需要がほぼない。冬になると灯油ストーブを使う、なんていうのは、極めて特殊な事例で、高性能な電気ストーブが登場し、もはや灯油も売れない。この電気ストーブは、巨大なドライヤーみたいなもので、発売時には「ルームドライヤー」とか呼ばれたなぁ。
平成の時代に議論されていた、温室効果ガスに関する問題は、まだ解決には至っていない。ガソリンの代わりに大量の電気が流通して、少しは環境への影響が減ったかというと、そうではないんだ。確かに自動車は排気ガスを出さなくなった。だけど今度は、太陽光パネルの生産のために、それ以外にも電化製品の製造のために、環境へ悪影響を与える要素が増えた、と僕は見ているし、大勢がそう考えているようだ。太陽光パネルの製造会社は大気汚染、土壌汚染などに配慮し、何の問題もない、と主張していたけど、つい数年前に、国際的に問題になり、国家間でも議論の対象とされた。
結局、何かを作るというのは、環境を破壊することなのだ。そもそもを考えてみれば、平成の頃にも、使わなくなった畑を、太陽光パネルで埋めたりしていた。使っていないからいいかもしれないけど、一度、太陽光パネルを設置してしまったら、また畑に戻す時に、余計な手間がかかる。自然と呼ばれるものは、人間が手をつけていない、あるいは手放したもので、環境にいい、というのは、人間が何もしないこと、と、同義なのかもね。
This Message is END.
Reply - Impossible.
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P.S. You Know F.K.D???
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