第11話 回転寿司はまだあるよ! しかし本当のマグロは消えた……。

This Message From NIRASAKI N-TOKYO JAPAN

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 ヤホー。ドクと食事に行って、今、帰ってきたところ。どこへ行ったか、聞いたら驚くだろうな。なんと、回転寿司へ行った!

 平成の時代に無数にあった回転寿司だけど、令和でもいい加減、生き残っている。むしろ、小さな高級寿司店の存在が霞むほどだ。大昔に問題になったように、漁獲高の問題で、マグロは超貴重品になり、僕も本当のマグロはほとんど食べたことがない。今の日本のマグロといえば、「陸マグロ」のことだ。

 なんだ? 「陸マグロ」って? と思うだろう。これは令和における、遺伝子実験の産物で、はっきり言って、倫理的に問題があるが、その問題も目をつむって、僕は陸マグロを利用している。味は悪くないよ。

 平成だと思うけど、士郎正宗の漫画で、人間豚、みたいなものが登場していた。豚を遺伝子操作して、何かするんだけど、ちょっと忘れた。たぶん、それに近い。陸マグロの見た目は、牛なんだ。わかる? 茶色い牛。少し普通の牛より大きいけど、それも遺伝子操作の産物。つまりこの牛の肉が、マグロの肉そのものなんだね。牛にマグロの遺伝子を組み込み、これを作り上げたんだ。

 もちろん、一筋縄ではいかなかった。マグロは海の中を泳ぎ続けることで知られていて、それがあの肉を生み出していた。一方、牛はのろのろと歩いて、ひたすら草を食べているイメージ。両者は対極にある。

 それを遺伝子操作が突破して、完全にマグロそのものではないけれど、マグロに近い味、色、食感の肉が、牛の体を借りて、生み出されることになった。

 登場した時、というか、開発計画が表に出てきた時、ものすごい反発があったよ。生命への冒涜だ、ということになる。令和になると、iPS細胞の研究は十分に進んでいて、ものすごく高価だけど、例えば癌に侵された内臓を、そっくりそのまま、生身の臓器と入れ替えることもできる。この展開が動き出した時も、一部の団体が反発していたな。「唯一主義」なんて言われた、この臓器関連の主張は。マグロ牛はなんて言われたかは、覚えていない。「自然主義」だったかもしれない。どうだったかな。

 なんにせよ、回転寿司で流れてくるマグロは、海ではなく、地上で生産されたものだ。ドクの意見を聞くと、昔と大差ない、とのこと。

 回転寿司店自体は、コンビニと同じく、無人化が進んでいる。寿司を握る工程の全てがロボットで、洗い物さえもロボットがこなす。ただ、他のレストランと対抗するために、受付には店員が立っている。彼、あるいは彼女も、コンビニで働いている僕と同じく、調整員のような立場らしい。

 僕がさっき行った店は、変なサービスをしていて、シャリの大きさ、ネタの大きさを注文変えられた。どういう需要があるかわからないけど、ドクは楽しそうに、「シャリを二百グラムにしたらどうなるかな」と言って、実際にそれを注文したが、出てきたのはほとんどおにぎりだった。しかも皿にギリギリ、二つ載っている。ネタは例のマグロで、大きさを変えなかったので、やけに小さい。結局、二人で一個ずつ食べた。こう言う興味本位の注文で儲けが出てくるとも思えないけど、まぁ、話題にはなるし、悪ふざけが許されるのは、ありがたいかもしれない。

 平成の時代には、回らない回転寿司、があったと聞いている。純粋な注文制で、レーンには寿司が回っていないんだってね。注文するとレーンを走ってきて、止まった、とどこかで見た。それって回転寿司じゃない気がする、と、僕は平成の人の考え方を、ちょっと理解しかねた。令和の回転寿司は、ほとんどがレーンを回っている店舗だ。平成の頃の回転寿司の映像を見たけど、今よりもレーンが混雑しているのは、今の時代は、無人化されたがために、いつまでも拾ってもらえない皿を、減らすためかもな。

 回転寿司のレーンで寿司を流す方式が生き残っている理由は、きっと、昔を懐かしみたい、という気持ちもあると思われる。コンビニにあるホットスナックに近いね。平成の感じを、令和になって長い時間が過ぎたのに、未だに僕たちは捨てきれないでいる。そんなことを言ったら、昭和の頃のような和食屋や料亭を、どうして忘れてしまったのか、追求されそうだけど、昭和はあまりにも前過ぎる。平成の人が大正時代のモダンガール、モダンボーイの服装をしなかったのに近いかな。ちょっと過激な主張かもしれないけど。

 というわけで、今の僕はお腹がいっぱいで、眠い。明日の仕事が夜勤なのでちょうどいい、夕方まで、少し眠ろう。

 おやすみなさい。





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P.S. SUSHI! TENPURA! FUJIYAMA!


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