第3話 未来系コンビニ
This Message From NIRASAKI N-TOKYO JAPAN
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Up-Loading Time - **:**:**
Attack Point Setting - **.**.2019
Time Control - Mode FREE
Power Gauge - GREEN
Link Condition - Perfect
Security Level - Perfect
Package Balance - GREEN
Backup Unit - ERROR
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Contact.
Check.
こんにちは。こちらは春先の気持ちのいい天気だ。花粉症がひどい。花粉症は、一部で「不治の病」と呼ばれているが、最近の薬の発達により、昔ほどではない、と中年層の人々はいうけど僕にはよくわからない。
僕という人間がどういう人間か、気になるだろうね。働きながら、ドクの助手のようなことをしている。無給なので、助手と思われていないかもしれない。なんにせよ、僕の生活は、一人で生活している集合住宅、仕事先、ドクの作業所か自宅、この三つで構成されている。移動手段は自転車だ。エコだろ? もはや今の時代、誰もエコなんて気にしないけど。そもそも平成マニアじゃない限り、エコという言葉が通じない。死語なんだ。
おっと、僕の仕事が気になるだろうけど、僕の仕事はコンビニ店員だ。
しかし、君たちが想像するコンビニ店員とは違う。最近のコンビニ店員は、「調整員」などと呼ばれている。わかる?
令和になってコンビニの無人化が進んだ。コンビニの中は無数のショーケースで区切られ、小型のロボットがそのケースの中にある商品を確保して、それを繰り返して客の買い物を代行する。まさに代行だ。客は帰り際に、店舗の出入り口で電子マネーで支払う。支払うと、ちゃんと袋に入れられた商品が差し出される。
ただ、これはもう稀なケースだ。
実際に店舗に来る必要は、すでにほぼ消えた。
コンビニの利用者は、エンドフォン(ハイエンドスマートフォンの略称)で、ネットを介して商品を注文しておく。支払いもネット上の電子マネーで行う。そして商品は自分で店舗に行くか、もしくは宅配を依頼する。
では、僕の仕事とは何なのか? という疑問が出てくる。商品の補充かな、と思われるかもしれないが、補充さえロボットが勝手にやってくれる。
僕の仕事は、つまり、調整、ということになる。
基本的な調整とは、店舗のロボットの調整だ。店員と言いつつ、接客は全くと言っていいほどせず、ロボットの故障や不具合に対処するために、店舗に詰めている。やることはないに等しい。最低賃金しかもらえないが、やっていることは店舗に併設の事務室で、たまに管理モニターをチェックしたり、コンピュータがリアルタイムで作成している経理の表を眺めたりする。たまに、時季的なもので売れ行きが伸びるものがあると、それを多めに注文したりするが、これさえもコンピュータの推測が優先される。なので、例えば僕がクリスマスにケーキを大量に仕入れようとすると、その数字如何で、コンピュータが疑義を表明してくる。議論してもいいが、大半の店員はそんなことをしないし、そもそもコンピュータの数字は精確なので、それに従えば、余剰在庫の発生も品切れも起きない。
そんな味気のないと言ってもいいコンビニが、一部の商店を除き、スーパーもドラッグストアも壊滅させた。そもそも、平成の段階でコンビニの店舗は圧倒的と言ってもいい数が存在し、令和の初期に起こった、「大団結」と呼ばれる、全コンビニが一つの企業に統一された事態が、決定的な事態を生んだのだった。全部のコンビニ店舗が、一つになる。想像もできないこの事態により、全国規模のスーパーの競争力でさえも、コンビニは凌駕した。スーパーや百貨店は、どういうわけか、コンビニの動きと相反する行動に出たのも、こうなっては悪手というよりない。スーパーは個性を売りにし、百貨店は伝統や文化を主張したが、そんなものではコンビニからの怒涛の圧力を回避することはできない。人口の集中もあって、消費活動はネットに大きく依存するようになり、ネットはコンビニと結びつき、個性も伝統も、露と消えた。
運送業はまだまだ強い職業だが、ドライバーも今は、僕たち、調整員に近い。全ての自動車が自動運転で走るし、荷物の積み下ろしもロボットがやる。彼らがやることはロボットの監視か、突然の天気の急変か何かでのフォローだ。冬に予報にない大雪に見舞われて、タイヤにチェーンを巻いたり。たまに店舗に商品が補充される時、彼らと話をするが、どうやら僕よりはいい給料をもらっている。それもそうだろう、延々とトラックの運転席で揺られ続けるのだ。僕がリクライニングされた肘掛け椅子に持たれてモニターを眺めているのとは、訳が違う。もっとも、僕がその仕事についたら、眠っていない時は、窓の外を眺めているだろう。さぞ、いろいろな場面を見れそうだ。いや、そうか、運送会社も、決まった道しか走らないかもな。それはそれで些細な変化に目がいって楽しいかもしれないが、すぐに飽きるような気もする。
コンビニで最近、話題になったのは、昭和を思い起こさせる、という表現で展開した、ホットスナックの実演販売である。この時は、珍しく店舗に人が大勢来た。唐揚げ、コロッケ、串の刺さったソーセージや、アメリカンドッグが、客の目の前で焼かれたり揚げられたりするのだ。誰がやったかは、はっきりしている。機械だ。どこの誰が考えたのか、酔狂なものだと思いながら、僕は店舗の一画にそのユニットを設置したが、客が来たので、目論見は当たったわけ。そのユニットはせっせと作業をして、客は面白そうにその様を見ている。ガラス張りで、工程が全て見えるのだから、僕からすれば発案者の手のひらで踊らされている、と思ってしまうが、それは天邪鬼なんだろうか。そのユニットは、今もまだ店舗にあるが、客足は減った。最盛期にちょっとした列が出来上がり、客から苦情が出たね、そういえば。苦情なんて、珍しいというか、僕が働き始めて初めてそんなことを言われたので、驚いた。ちなみに相手は七十代くらいの夫婦だった。前時代的、と言わざるをえない。なんにせよ、客の大半は飽きたらしいし、ユニットの稼働速度的にも、今くらいの客足の方が、ありがたい。
というわけで、日本の消費活動の拠点として、コンビニは令和を象徴している。
そう、ここでも日本製の機械の強みを感じた。この無人コンビニシステムは海外にも輸出されているが、海外での評判は、機械がとにかく頑丈、ということらしい。どこかのネット上の映像で、オーストラリアの砂漠の真ん中にコンビニがポツンとあり、原住民風な人々が寄っていく場面や、トラックがそこへ商品を補充しに行く場面を見たことがある。これはさすがに、偽物の映像だろう。そもそもオーストラリアにまだ原住民の部族が残っているかは、謎だ。
そんな無人コンビニは「ジャパニズム・ショップ」と呼ばれている。まったく、おもてなし、はどこへ行ったのか?
いや、僕に聞かれても困る。
This Message is END.
Reply - Impossible.
Machine Number - 098
Massage Number - 003
P.S. NO WORK,NO LIFE
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