混在する町
@Aseaaranion
第1話 混在する町
ああ、この町の周囲500キロメートルは絶対不可侵条約が結ばれ、中央の町はこう呼ばれる。「混在(こんざい)する町(まち)」
俺は、この町で生まれて25になるが、まあ、ニート確定の無能青年。ああ、有能でないとここでの居住権はないのだが、おれにあるは、棒っきれだけだ。こいつとこの街の図書館で本を読む。すなわち読書が趣味。んで、今日は興味のある本をしこたま借りて
俺のマンションで、ゆったり隠者モードになってインテリ気取ろうかという時。形態がおかしな人間が三十人ばかし目の前に立ちはだかった。
「おい、今日はやめてくれよ。この本、予約待ちでやっと借りれたばっかりなんだ。おまえらのつまらねえチート能力で灰にしたくないんだが」
「んじゃあ、有り金全部置いてけよ」
「だからあ、未来のないニートさんに三十人がかりでたかるなあ!お前らの前にいるのは大魔王じゃないただの無能なニートさんだぞ?」
「うるせえ、お前の首にかかっている三千万円の賞金がありゃおれらも新たに力が手に入る。そうすりゃ、ここじゃ億万長者だぜ」
「あのさあ、そんなに力がほしいなら勉強するか、鍛えたら?もうっていうか人殺しは夢にでるぞ?たとえ俺を殺して力を得てまたいいカモを見つけてなんてこの街の言いなりですっげえかっこ悪いぜえ。」
「うるせえ、当局は俺たちみたいなクズ能力者をゴミのように操るんだ。なあ、おめえも当局のやってることはひでえっておもうだろう。だから、死んでくれよ」
「すまねえな。この本読みたいから死ねないね.」。つうかそんなことでイエスっていう奴いるか!」
「交渉決裂だな。おい、囲め」
三十人の男どもはまるでろくに鍛えてもいないひょろひょろくんばかりで頭もわるそうああ、でもこいつらは馬鹿なりに一生
懸命生きてる。
男の一人がジャックナイフを舌でなめる。その目にはある種優越感が……。俺は速攻で同情心を掻き消した。
「さあ、じゃあいくかなあ!」
そいつはジャックナイフを投げてきたナイフはまっすぐ飛ばず追尾するように動く。
「失言、前言撤回。それからまあなんとチープな念動力付与の投げナイフ」
「うるせえ、こちとらろくに働きもせずこそこそ、他人様から頂いた財布の中身で受けた投薬治療の末やっとの能力なんだよ!」
「はい、ここでクイズ 対象を自動追尾するナイフ、それが三十本、こっちの回避は不可能、こんな状況で無能なこの私、アリウス・クリアミラクルはどうしてか生きてきたか。一つだけ種明かし、武術。細かく言えば杖術。それと体術を少々。それから読書の教養
。うん!我ながら実に健全。ん?向うから日焼けした小麦色の肌にジーンズの短パンにタンクトップのナイスバディは!おお、そういやもう七月!海のないこの混在した街でこんないい女は!だが、その脇にある二刀のエキゾチックなククリ刀は……それからよく見ると、色の抜けた白い髪に真っ赤なおめめ。それからキュートなおしりから、にょきっと出ている悪魔みたいな細い鞭のような先にとがった水晶がついてる尾。それに俺と目があった瞬間、その背中から黒い蝙蝠のような翼が生えた」
「ああ!?なに人の個性的な風貌を勝手に語ってんだ、こらあ!あたしのククリ刀で首かっ切られてえのか?」
「ああ!お姉さん、良かったらこれからどこかのカフェで読書などしながら知的でエキゾチックなエロティシズムなどについてお話でも?」
「あ~、間に合ってるから、そこのゴミに関係もちたくないんで、それから俺にこれから話しかけんなよ?くそニート?おれは機嫌が悪いと人ののどをかっさばきたくなるんでねぇ」
「ああ、待ってください、お姉様。大丈夫です。このゴミはあと数秒でなんとかしますから」
「ノエルた、いい度胸してんのな。いいぜ楽しそうでお姉さん好みだよ。でもう彼女とかいやがるんで?チェリーボーイ?」
「こいつ、童貞だったみたいだぜ」男たちの高笑いが聞こえる。しかしその笑い声は上ずっているそれは男の一人が俺の登録情報を電子端末で確認したからだった。二つの意味でこいつらは今俺なんかを狙ったことを引きつく笑い方をするしかない。
「うう、なんで?世の男どもはなぜそういうことを笑うの?お前らには貞操という概念はないのか?ああ、それでもお姉さんは素敵です。その翼としっぽなんか敏感にくねくねしたりばさばさっと羽ばたいたりもう僕の胸にどストライクです!そして一目ぼれです、悪魔で小生意気でベリーキュートだぜ」
「へえ、分かってるじゃん。あたしも気に入ってんだ。これは見せかけだけじゃねえんだぜ。たとえば念だけでそこのクズども発狂させてやろうか、それでおまえの精力が枯れ果てるまで夜のランデブーと決め込もうぜ、車あるか?なあ、クリアミラクル?」三十人が一瞬でビビり始めた。こんな異形の娘とただのニートが話している。それもお互いの態度が全然違っている。
「杖術は神武不殺、だが私は恋する女の守護者!そしてこの人たちのナイフ!をすべて止めている。この手技でどうでしょう!?エキゾチックでエロティックなサイコラブロマンスを!あ、これ、名刺です。今、速攻で手製の筆で書きおろししました。それからいますぐにでも行きましょう。なあに近くの車ジャックしてしまやいいんです。恋に国境線は関係ないぜ!」」」
つうかこの間、30秒。んで、三十本のナイフはとっくに対象物を血だらけにしてるだろうが、そうなってない。というのはまあ
ナイフを十本の手の指と関節全て使って、挟んで動かないようにした。つまり三十本のナイフ全部キャッチしたわけだ。別にサイコキネシスなんて能力はない。そんで三十人はやけくそに冷かしてたのだが。
「はい、答えは飛び道具は見切られないくらいの速さで投げないと逆に自分が危ないんですよ?」
「おまえ…どうやってナイフの自動追尾は生きてるはずなのに!」
「ああ、おまえらがパイロキネシスか本を傷める術者でなくて助かった。というかな。はいナイフ返すよ、ちゃんと受け取れよ
!」
俺は独楽のように回転して柄の部分を先にして投げ返した。三十本のナイフは逆さまに柄の部分が三十人の男に食い込んで気絶させてる。まあ、ショットガンのゴム弾の直撃を食らったようなもんだ。
「ふうむ、こんなに上等のナイフそうそうないなあ。よっし、なあ。このナイフ全部おれにくんない??ってもう聞こえてないか、ふふ、お得なジャックナイフ、ネットで市場価格三分の一で販売とかいいねえ。あ、もちろん。サバイバル目的の健全な良い子にしか売らないよ?てへへ?ってあれ小悪魔なお姉さん!?」
そこにはもうあのミラクルなラブリーなあの人はいない。逃げ、られ……た。アリウスは9999のダメージを受けた。
「ねえ、あれがこの辺の地区で有名な「混在する町」でただ一人武術によって能力者と渡り合って殺さずを誓ってるとかいうやつなの」
さきほどの短パンジーンズの日焼けお姉さんが言う。もう一人は白い髪の少しやつれたような眼をした白衣の男その背中には天使の羽。
「ああ、なあ、あいつでいいのか?」
「仕方ないでしょ、もうこの街もいい加減、区画拡大が必要で人口がパンク寸前なんだから」
「だが、25の童貞男にあの娘を合わせるというのは」
「三千四十六億人……」
「?あの子を狙っているこの街の最強から最弱までの異能集団、組織、結社、会社の総人口よ?」
「特S級の神の遣わされた救世主の母になる可能性をもつあの子は最後の希望」
「俺が最近はまっているのは歴史小説にSF フノエルタジージャンルは多岐にわたりもはやこの俺もそろそろ作家としてとしてブレイクしてしまおうかと思って昨夜の突然のPCクラッシュにパニックになり挙句の果てにはバックアップディスクが尻餅ついて割ってしまう。もはやこの俺には昨日の奴らからいただいたナイフでPCの購入費用にしようと。っく俺の十年分の構想、アイディアに千ページの大作、30作品が一瞬でパア?ああ、それにデスクトップにダウンロードした資料も!これは天からお前はまじめに就職活動しろとかいうそういう神のお告げなのか?」まあ、そういうときは気を取り直して魔同図書館のなじみの図書委員のお姉さんに優しく禁書のコーナーのガイドをうけ、本の世界に没頭するだけさ。でもけっこうめげる。なんでよ?なにしたっていうの?おれ.
「馬鹿馬鹿しい。主がそんな小さなことまでお告げをすると思うの?」
「いやあ、だってさ?神様って努力してる人にやっぱ守護してくれるそういうもんじゃない?まあ信仰心の薄い俺でもさすがにこの状況はジーザスに祈りたくなるよ」
「馬鹿馬鹿しい、大体神様という抽象的な概念で信仰心なんて言葉をつかわないでくれる?世界の紛争はそういうところでもめているのだから本気で信仰に命をかけるものに失礼だわ」
「いやあ、このアリウス・クリアミラクルにとっては抽象的神学がついには自らの心にこそ神がいるのだとおっしゃられているわけですよ。でもこの街で信仰心なんて持ってるのは俺くらいすよ?みんな神の御心に反したことばっかやってる街なんだから」
「人はだれでも少なかれ信仰心を持つわ。あなたのいうみんなだって一度くらい神に祈ったことはあるでしょうに、あなたは神を信仰するのですね?本当に信じつづけられるのですか。目の前にどんな困難があっても」
「……」
「……」
「はい、もしかしてそこにいらっしゃるのは女の子?」
「そうです、性別はたしかにそのとおり」
「で?なんでそんな服を?」
女の子はまるでいにしえの巫女のような服をきている。見かけは幼いがまるでお姫様のような印象を与える。
「これは私の先祖の古代民族の古い神官が着る法衣なのだ」
「見かけはオンラインゲーの女神官って感じだけどおまえ、何歳?」
「今年で11です」
「あの、お母さんとか保護者は?知らない人の家に勝手に上り込んじゃだめなんだよ?」
「私の母と父は私のために敵対勢力と戦ってくれている」
「あのねえ、まあ、この街じゃよくあることなんだけどね。新手の美人局という線はその年から排除してなぜに25歳のニート男性の部屋に入ってきてるの?それもほとんど気配感じなかったけど」
「ほとんどということは私が窓から入ってきたことには気付いたと?」
「まあ。でも、あのふつうに呼び鈴鳴らしてね。警察か近くの児童保護施設に連絡するところなんですが?」
「それは困る。とても困る」
「いや、超A級の能力保持者のセキュリティのある超超公的な機関ですよ?」
「その程度のセキュリティなら多分駄目ね」
「んな、あほなことがあるかい。そんなことしたら中央区がほっとかないだろう?」
「逆に中央区が一番あぶない」
「どういうことだよ」
「わたしはこの住所を告げられたのだけど間違いなのか情報がいってないような」
「いや、情報どころか引きニートにはいささかというよりすんごい心臓ばっくばくなイベント進行中なんですけど」
「仕方ないわ、じゃあ話す。あなたは神に選ばれた勇者です」
「はあ、なんだ、その某RPGのイージー展開はあ?俺の勇者のイメージを崩さんでくれ。雷もうてない、勇者なんか。ていうかなんなんですか?マジ、もうあれですか?突然空から女の子が降ってくる系の古代文明のロマン冒険活劇?ん、いかづち?_そういえば、この本にあるとおり雷雲は電子を帯びた水蒸気の固まりだとすると……」
「ちょっと変なイメージを張り付けないでください」
「あのう、その顔は本気ですか?マジなんですか」
「……アリウス・クリアミラクルはペンネーム 本名は天晴 樹 天晴 と書いてあまはれと読む、あっぱれとは読まないらしい……少し残念」
「人を名前で遊ばないでえ!?そしてペンネームとかネタバレはやめてえ、ネット作家ランキング1382位の中途半端なメジャーでマイナーなぼくの経歴に傷があ!!」
職業はネットアフィリエイターというのは経歴上の話で自分の読書
好き、映画、アニメ、マンガ、など多岐にわたる俗にいうオタクではない(個人的には)インテリを気取りたいようだがその実、かなりディープな理想の女性像や世界観をもっており、萌えという単語は知らなかっただけで暗黙裡に理解するくらいの理解力はある。単に今のエログロな二次がダメなだけで清楚な純愛系を密かに渇望しているとある専門家はいう。そんな感じでブログでデビューを飾り曲がりなりそれがなんだか憎めない面白さがあるという定評でブログ収入を得る顛末に至る。現在ガチで一人暮らしに寂しさを感じ見かける女性に声をかけまくっている。ブログ作家。なおそのネット作家ランキングはガチらしくそれまでに十年の歳月を費やしてる。見たところマスターポードはそこの旧式だけどプロ仕様のデスクトップだが、なぜかそれからもうもうと黒い煙が出ているあたり、昨日のうだるような暑さにそしてこの地方特有の天候雷雲のストームによってマンションの耐電ブレーカーがオーバーヒートして全システムの65パーセントがダウン、つまり作家でいうデータクラッシュの爆死状態と推測。ちなみに東洋人 家には樫の短い棍棒が一つある」
「ぐはあ、なんだがきょうはみょうにダメージを受ける出来事が多い」
「あ、そういえば自己紹介がまだだった、私はマリア・ノエル・ネイフィリアス 通称ノエル。ちなみに赤毛ではなく髪は、黄昏時の夕焼け色」
「うおぉ、その髪はそう形容すればよかったのか!!」
「なに?この髪の綺麗さに、女の子の素敵なロングヘアーの描き出す流線形に、そんなに入れ込んじゃってた?まさか、私を小説の登場人物に早くも勝手に個人の意見を聞かずに流用しようとかおもってない?プロなんだよね?プロなのよね?あっぱれちゃん?」
「その呼び方やめてええ。あとプロとかホントにアリガトー!!」
「で?私はここにいていいの?」
「ああ、もう慣れた、いてもいいよ。で、君がすむにあたって了承してほしいことがある」
「なに、エサはキャットフードなんて動物虐待はやめてよ?」
「いや、動物か!それにエサがキャットフード?」
「……にゃん」ささっと猫の手でかわいく首をくねらせる。ふおお、プロだ、こいつ。
「ああ、神様、なんですかこの嬉しいリア充イベントは、ああ、そうなんですね、ここから旅の仲間がそろっていくのですね。そして私にこの伝説の文鎮を滅びの山に投げ捨てろと」
「文鎮なのkayo」
俺は、さっと一枚の紙をだす。
「さっきからもういっぽうのワープロのほうでなにかうってたと思ったら居住許諾申請書?」
「そう、ここ借家だから、大屋にちゃんと申請しなければここを十五分もたたずに追い出されます」
「マジなんですか?」
「マジです」
女の子はため息をついてその契約書のサインするために俺愛用の羽ペンにてをのばし……。
「……」
「……」
「……ねえ」
「……はい?」
私はスマイルし、それを崩さず答える。
「この十一章第二幕に自身のキャラクターをノベライズすることに同意っていうのは?」
女の子はその天使のような容姿で結構な迫力の三白眼で俺を見上げる。
「う、」
「ねえ。神の名においてここで、さばきを下してもyou are OK?」
「NO!」
「それも上の項目に同意した場合、自身の処女も無条件で捧げることにも同意ってのは?」
天使は小首を傾げて微笑する、俺の注意を腕からそらすため、そして腕の小指に強烈な激痛が、その非力ないててて!でこいつは俺の指をクキッとへし折った。
「ぎゃあああ!!」
「さあ、ちゃんとした話し合いをしましょう?あいにくこちらには時間がないの痛いのはわかるけどさっさと話をつけましょう?」
「はい、すんませんしたあ、ノエル様ああ」
アリウスは、折れた指をぱきっと戻して接ぎ木して包帯巻いた。
「はい、ここ二重線で消しとくから、印鑑押して、サインでもいいよ」
「はい」
「それとちゃんとした生活をするための仕送り金を月に一度あなたの口座にふりこまれるから。あいにく私は家事も料理も人並みにできるけど絶対的にまだ義務教育の年齢でいろんな生活の支援が必要です。あなたの生活能力でちゃんと私の生活の手伝いをしなさい。いいね?」
「いやです」
「ではこっちの書類にもサインを……、は?」
「えーと、養子縁組許諾援助金申請?あなたって結構豆ね。サインしたわ。ちょっとホッとしたかも……」
(ん?)
女の子がサインのし終わると。
「はい、これで契約成立です」
女の子は契約書を見て勝ち誇ったようににヘラっと笑った。
「……」
「1つ聞いてもいい?」
「どうぞ」
「君について、教えて?」
「わたしを保護すると多分、各宗教の最高指導者からアサシンとか宗派御用達の魔術結社とかに狙われるし、多分中央政府の正規軍とかサイキック登録連盟とかにも狙われるけど。そのことは理解してるよね」
「……おい」
「少し出来損ないのピカソのような東洋人のイケメン」
「なに、そのしょうがねえなあみたいな付け足し方?それだけ?」
「古武術の達人」
「ふんふん、それは嬉しいが、もうひと押し!」
「小説を書くという趣のある趣味、それに読書家」
「そこだね!いやあ、君分かってるじゃん」
「心の中では、このロリ美少女神官め、そんな危険な奴の寝込み襲えねー」
「いや、勝手に人の心を読むな」
「あ、マジか、本音。うわ」
「あ、いやいや。こほん。改めて聞こう、君の目的はなんだい?(キリッ)」
「ふん、それはな、おまえにリア充というリアルを与えにきてやったのよ」
「まじで!?」
「バカめ、んなわけないだろう。言っておくが私はここにいってこいといわれてきただけだ」
「そうか、でなにか異能の力か怪異でももっているのか」
「いやとくには」
「じゃあ、なにかの勧誘ですか?そして恋が始まるという」
「それ、本気でいってるのか?」
「いえ、すみません。勘弁してください」
「わたしはわたしがちゃんと成人するまで死ぬわけにはいかないんだ」
「そりゃあ、この街で十一の女の子が生きるのは難しいけど」
「わたしはな、神から救世主を授かり、その母になる。その預言がわたしにこの街の全勢力が命を狙ってるんだ」
「おいおい、勘弁してくれ。そんなの俺の武術でなんとかなるわけないだろ?」
「そうか、やはり人選を間違えたか、すまん。一瞬でもあなたを危険にさらしたことをお詫びする」
「おい、いくあてはあるのか?」
「ふん、これでも追っ手をまくことだけは特Aクラスだ。すまない。久しぶりに人と談話できた。ありがとう」
そういうと彼女は玄関から出ていった。
俺は静かに立ち上がった。ありがとうだと?仮にあの子の言うことが冗談だとしてなぜ窓から知らない人間の部屋へ入る?いや、俺なんか悪い子とした?
そしてなんなんだ?あの少女の目、完全に最後、子供らしくない絶望したような瞳は!
神も悲しんでんのか雨も降りだしたぞ?
「ちくしょうが、神道夢想流杖術 免許皆伝 天晴 樹の活人拳。ここで助けてやらないでどうする?」
俺は感覚を研ぎ澄ますと動物並に五感がするどくなる。あいつの体からはお香のにおいがした。それが彼女のあとを残している。
俺のデスクトップに出ている最後の言葉。
「はっ今日も神の加護はみなに等しくおこりますか」
俺はそのまま、ノエルという少女を追った。
すると彼女は近くのコンビニエンスストアにいた。店の中でアイスのかば焼き君かそれとも白焼き君かで迷っている。
俺は堂々とコンビニに入る。いらっしゃいませーと言う声が入る。
少女はまるでこちらを見ようとせずもくもくとアイスを選んでる。
「おい、人の家にかってに住み込みの手続きまでさせておまえはどうしてこんなところにいる」
「ああ、あなたはたぶん上のほうからの人選ミスだと思ったから出てきたのだけど」
「上?この街で存在する機関、組織は一億を超えるんだが」
「そう、私の組織はその中でもかなり小さい規模のすごく弱い組織なの」
「ふーん、でこの俺に居住地を借りたいということ」
「バカにしないで覚悟もない。童貞男の家に居候するほど私はちょろくないわ」
「あのさ、ここはまじでこの時刻やばいんだけどコンビニからいったんでればどんな奴にどんなことさせられるかわからない。
この街で生きてるんだからそのくらい知ってるだろ。ここでは戦争こそないが内部紛争や治安維持隊の弾圧や隠れゲリラの内乱やらでいつでもどこでも花火のお祭り状態だ。たーまやーといえばかーぎやーと帰ってくるんだよ」
「分かってるわよ、そして私を狙ってくる人間はもう私の姿を確認していつでも攻撃できる、でなぜ攻撃しないかそれはここがコンビニだから。そのくらいあなたでもわかってるよね」
「ああ、コンビニは唯一公共機関、社会的共有機関として街の中央区が運営しているだからそんなところに襲撃すればどんな組織や機関でも社会的に政治的に経済的に裏社会的に抹殺される、つまりコンビニだけが治安の悪さを気にすることのない公共機関だ」
「わたしはね、ある預言を背負ってる。その預言のせいでいろんな組織や機関から狙われてる。そう私は母になる、この街の救世主となるもののね?」
「おまえはケンシロウの母か!」
「まあ、簡単に言えばそういうこと」
「な!」(スルーした!?いやむしろ肯定!?)
「まだわからないの?私の受けた預言は私が神の子を受胎する、つまり受胎告知を受けた女性ということよ」
「え?おま、その体で……」
「あのねえ、どこまでおバカさんなの?私がうけたのはあくまで預言、受胎するのは私が成人した年よ」
「そういうことか、神の子なんてのが生まれればこの街の行政機関やさまざまな思想機関も黙ってないそれでおれのところに」
「でもわかったわ、あなたには無理よ?その一本の樫の棒でまあ、武術の達人か何かなんでしょうけどそれじゃこの街が本気を出せばチリ一つ残らないわ」
「ははは、この杖か?」
「え?」
俺が持っていた棒はいつのまにか俺と同じくらいの長さに見えた。まるでその長さを操れるように。
「へえ、なにか能力者ってわけなの?でもそんなのこの街じゃたくさんいるわ」
「まあ、いいから俺と一緒に帰ろう」
「な、なに言ってるのよ、今飛び出したらこの時刻現時点で午後八時十分まさか一番治安が悪化しているときに外へ出るつもり」
「おまえ、ここに来たのはアイス選ぶためじゃねえだろ、それはただの体裁で、ホントは夜明けの町の沈黙時刻までここで時間をつぶすのが目的。24時間営業なんて店はほかにはないしな」
「そうよ、でもそれが一番争いを避ける唯一の手なのよ」
「かわいい女の子がそんな不幸な考え方してんじゃねーよ。おまえ、ノエルまり人の前で素顔の自分見せないだろ?」
「え?」
「おまえはホントは自堕落で怠け者で眠ってるのが生きがいで昼は居心地のいい場所でテレビでものんべんだらりとみているようなすんげえ内弁慶なやつだ」
「!!」
「そしてもはやそろそろ眠気がピークに達しているはず」
「!!!な、なぜそれを?」
「おまえ、俺と借家の契約かわしたときわずかに素の自分がでてただろ、こいつは本当は言われたからとかじゃなくたんに怠けたいからどうでもいい俺なんかのところに転がり込んできた。お前が所属している組織もたぶん本当に超弱小な機関だがなんの不幸かおまえはその神の子の母っていうのに選ばれちまった。ファミリーは家族を重んじる。お前んとこのドンはおまえを逃がすために方法を選んでられなかった」
「なんであなたなんかにそんなことまでわかるのよ!」
「わかるさ、俺はな普段は弱小な武術家で小説家気取りの青年だが、その実、奇跡とやらに恵まれたこの街の第一位の能力者だからさ」
「え?第一位」
「ああ、それもあれだただものすげえ、幸運に恵まれてるのさ、すっげぎりぎりな、な。まあ、外に出てみようぜ」
少女の手を引いてコンビニを出てみると狙撃した弾丸が頬をかすめる。少女の顔はさっと青ざめる。しかし目の前の青年は眉一つうごかさない。銃弾の雨が四方八方から降ってくるが、どれも少女と青年には当たらない。そしてだれも死んでいない。
「う、うそよ、こんなことができるのは神の子くらいよ」
「そういうことさ、俺の母親も受胎告知によって俺を生んだ、以後俺はあらゆる組織、機関から狙われたがだれも俺にかすり傷一つつけられない。アリウス・クリアミラクルっていうのはそういう意味さ。なあ。マリア・ノエル・ネイフィリアス?」
「なんでもミラクルにクリアするってこと?」
「そうさ、さあ。敵にはお帰りになってもらおう」杖を掲げるとまるでモーゼが海を割るように組織のものは道をあける。どうしてかそうしないといけないと思い込んでしまってるように。
「ああ、昼の小悪魔なかわい娘ちゃんもいいがしょうがねえさ、なんせ目の前に助けを求める少女がいるんだから」
「あなたは本当に奇跡を起こせるのね」
「んなわけあるかよ」
「へ?」
「たまたまだよ、たまたま。さっきから俺の声を盗聴してたやつが真に受けてくれただけさ」
「はああああ!?
「バカだよなあ、そんな能力あったら苦労しねえっての。だからさっきのは威嚇射撃本格的に攻撃するためにあいつら魔術師よんだみたいだぜ」
「うそでしょ。一万発は私たちの体をかすめたわ」
「だが当てられない、当り前さ、俺は事前に一つ一つのスナイパーの位置を把握してたんだから」
「なに、じゃああなたあれを偶然じゃなく故意に発生させたっていうの?」
「そういうこと。奇跡を起こすのには緻密な準備が必要なのさ、あれで敵さんビビっちまって自分の最大の切り札使わなければいかなくなった」
「あなたってひとはじゃあ、棒が長くなったのも」
「ああ、長くなるわけないだろ?ほら、鉛筆が曲がってるようにみせる手品と一緒だ」
「つまり稀代の詐欺師ってわけね」
「俺はどこかの王道海洋英傑マンガの主人公じゃない。それに詐欺師は嫌いだ」
「あら、あなた、結構いい線イケルと思うわよ?」
「まあ、いい。どうすんだ?しょうがねえから命の保証と住居をやるよ。怠けようが日がな一日何をしようが好きにしろ。お前のおかげで俺は中央政府は支援金がでる。その金は一部を除いておまえが全額、好きに使え。たく今どき、こんな待遇、超VIPの令嬢クラスだぜ」
「ま、マジ。わは、行こ行こ!あ、今日中にゲーミングPCと快適なネット回線用意してあとゲーム屋によって最新ハードと今熱いソフトと個人的に好きなタイトル少なくとも30はコンプリートしたいわね」
「やっぱり、ネコかぶってやがった・・・・・・。今日中に認可が下りると思ってんのか?」
向こうから、郵便の護送車がくる。二人がコンビニ沿いの道にいることを確認すると、天晴の携帯が鳴りだす。
「あー、はいはい、どちらさま?」
「えーと、天晴 樹様でしょうか、今日届けられた養子縁組許諾援助金申請、認可されましたので、保証書お持ちして今コンビニのまえに待機しております。できればこそ苦労願いたいのですが……」
少女は青年のこんな驚きと呆れた気持ちでいっぱいのげっそりとした顔を始めてみた。(まあ、なんていうか、こいつといると飽きそうにないわね……。)
青年がおもむろにコンビニを戻ろうとしたとき、少女は見逃さなかった男たちの手には中央政府ご用達の軍用対人兵器SP-R3300が握られてある。相手に外傷を与えず、さまざま心的ショックを与える多重精神攻撃兵器だ。精神感応のような直接相手の心に干渉できる高度なテクノロジーではなくよりコストが安く大量生産可能な人間の五感とそれに関連するすべての内臓器官に猛烈なダメージを叩きこむ、一種のスタングレネード的なものだ。簡単なものでは、たとえば光の三原色を連続して強烈な光として網膜に叩き込むと人間は一時的に気絶するように、外的要因を最大限発生させ敵の心理に作用させる。くらえば、即廃人。再起不能の状態もしくは、絶命にいたる。一切の証拠が残らず、相手を廃人か絶命させる恐ろしい兵器だ。
「アリウス!危ない」
天晴は、んなこたあわかってるよ、という感じでノエルに手を振った。その一瞬、パッと光が起こる。
天晴は、パタと倒れた。
ノエルは、絶句した。う……そ、約束した……じゃない!
「アリウスー!」
しかし、相手の方がおかしい。痙攣をおこして口から泡を吹いて白目を剥いている。
「あー、馬鹿だな。俺は、相手の殺気に敏感なんだよ。あとはその殺気の挙動をよんでその懐中電灯みたいなもののフィラメントごと、破壊すりゃ。最近の兵器は坊電処理をロクにしてない安物だからな、そっちに高電圧の電流が流れるわけだ。ま、坊電処理をしてあってもこの雨だしな。感電は免れない、実はコンビニの自動ドアの玄関シート。これ完全な絶縁体でな。ま、中央政府のスパイなんて使い捨てもいいところだからな。やっすい装備しか持たせてくれないしな。けど、お前らも電源のある兵器じゃなくて、自前でピストルくらい購入しろよ。ライセンスがあれば、政府の情報機関の使い捨て装備よりはましなのが手に入るだろうにな」
天晴は、携帯で、救急車を呼んだ。
「あ、すいません。事故で感電してる人が三名。あの、こういうのって人命救助で謝礼金とかもらえる、あ、本人の保険金から一割。はいはい場所はですね」
なんて奴だ。でもどうやって?なんでこのスコープが割れてるの?人間の力じゃ無理よね……それもあの一瞬で三人も。
「ん?どうしたノエル?いやあ、お、こいつらほんとに保証書持ってる、政府もやることはちゃんとやるよな。おーい。ノエルさーん?んじゃ、近所のPC屋とゲーム屋いくぞ?ふふふ、高額商品ほどポイントと中古割引券が……」
「どうやったの?」
「ん?何が?」
「だから、一瞬でスコープを三つ同時にとか、何をしたのって聞いてるの!」
「睨むなよ、怖いんだよ。そういうおまえの目つき。そりゃ、この棒であの一瞬、三人のスコープが光る瞬間に突いただけだけど?」
「って、あの一瞬で三度?それも固いスコープを?」
「なにいってんだ。こいつらのスコープなんて安物だからな。ちょっと小突けば割れるし、あんな俺の突きは、一瞬で強化プラスチックの塊をハチの巣にできるんだぜ?まあ、楽勝だよ」
「あんた、何者?」
「ああ、奇跡を起こすってのは嘘だけど、第一位ってのは嘘じゃねえぞ?俺の杖道の技術は、この区画では最強っていわれてるからな」
「やれやれ、政府も確実に殺せるときに殺してほしいものだよ」
「お、やっと本命が来たか?あなた政府のなんのどなた?」
「わたしはクラウディアと申す。魔法剣士だよ。魔術的な斬撃を抽出して対象を寸断する。わが剣から逃れたものはいないよ?」
「ってそのロングソード、銃刀法違反ですよ?」
「昼間、ククリ刀を二本差しにしていたスタイルのいい美人さんにはそんなこといわなかったな」
「そりゃ、あんたあの方は、こんな物騒な世の中ですし?あれですよ、護身用ってやつ?」
「物は言いようだな、ふむ、見たところ、樫の杖というところだが、まさかわたしは西洋剣術の達人にして戦略魔術を極めし者だよ?君みたいなやつが第一位とか信じられんのだが」
「あはは、アリウス・クリアミラクルの名は、伊達じゃない。奇跡を起こす方程式はもう完成してるぜ?」
「ほう、ではわが術を見切ったということだな、なら受けてみるがいい。いっておくがほかの一歳の魔術はルーンによって無効化してある。君の力がどういうものかしらないが、奇跡というくらいだ。キリスト教的魔術の奥義だろうが、私のルーンのまえでは無に等しい。一般に、攻撃魔術は妨害魔術の三倍の力が必要だ。私のルーンにはなんの力も働いてない。この近辺では、一時的に魔術の使用ができない効力は持続しているよ、さあ、死ぬがいい!」
抜き放たれた剣閃は、雷光のように横薙ぎに閃いた。二人とコンビニ以外の全てが横に一筋の切れ目が入った。たぶんこの近辺の外出している人間は容赦なく死んだ。とだれもが思った。
相変わらず、町の騒音は聞こえてくる。
「あんた、街中で戦略くらすの魔術の使用とか被害損額と死者何名だすつもりだった?水爆よりたちが悪いぜ、悪いが、斬撃は無効化した。でもすげえな、この塀の感じだとあんたの視界に入ってるものを距離とか幅とか無視して寸断する力みたいだな。あぶねえ、俺でもノエル守りながらじゃきついな」
「な?どういうことだ?まさか、俺のルーンを逆に利用したのか、いや使用者以外の命令は無視するようにしかけたはず、なら、それがお前の能力か?」
「ああ、残念ながら俺には魔力はないよ?魔術精製のための器官が生まれつきないんでね。それにあんたクラスの魔術師には、国家ライセンス級の魔術技能か魔力量がなけりゃもともと無理だしな」
「ではどういうこと?」
「理由は簡単、戦略魔術探知無効化装置。いってみりゃ魔導具だ、これは通販でだいたい三万円くらいで買える。ていうか、自前のを発動しなくても町の検知器にかかるに決まってんだろ?あんた、別の区画それもスラムか紛争、抗争エリアから来たろ?戦略魔術なんて戦争屋かテロリストの考えそうなことだし、事実そうだしな」
「な、三万円で買える?戦略魔術だぞ?都市や一国家を亡ぼすためのものだぞ?」
「は、じゃあなんでこの町は健在なんだ?魔術師なんてこの「混在する町」には腐るほどいるぞ?」
「それはそいつらは話にならない無能だからだ。私は違う、一流ライセンスを持つ政府の登録魔術士だろ」
「でも、あんたの専門は紛争や戦争での最終的な殲滅戦だろ?この町はあらゆる魔術結社の対立の場所だ、日夜、凶悪な魔術が試みられ研究されそれによって生み出された怪物(モンスター)によって一種の食物連鎖さえ行われ社会現象になってんだよ。で編み出されたのが魔導具、戦略的魔術や魔法の類に対し、一企業が個人にそれなりの対抗することのできるサービスを開始した。その一環が魔導具。いまじゃネットで魔力精製の外部出力端子だの、なんだのってもうこの町の個人にとっては常識だぜ?今の時代、戦略魔術ではなく戦術でもなく対人魔術が主流だ。このまえ、対人魔術構築理論とその応用とレベル0の無能力者への魔力定着の理論の最新版が出てだぜ?ま、へんなプログラム体にいれると処理能力落ちるからやらねえんだけど?今じゃ一家に一台魔術大辞典だもんな?そこの三軒先の書店で1500円で売ってるぜ?買ったら?」
「まさか、では俺はこの町ではいっぱんにあらゆるカテゴリのレベル0にも劣るというのか?」
「レベル0、無能力者っていうのはよ。いってみりゃまったくの白紙の本ばかり置いてる図書館ってところだよ、白紙の本に印刷すりゃ、今じゃレベル0立派な能力者、この町の生活レベルはほかの区画や、他国の一個師団に相当するんだよ。いってみりゃあ、こっちでの日常的な常識がそっちでは我が国の誇る軍事力ってわけ。でもさ?あんた国家魔術師だろ?よっぽどぬるい戦地にいたんだな?あれだろ、指揮とか後方支援ばっかりでいざ実践になると足がすくんで動けないエリートさまだろ?人殺したことあんの?一人でも自分の手でさ?ま、俺には関係のない話だけどな、戦争する奴は昔から馬鹿って決まってんだ。俺なら和平交渉先にして、自国の国力つけるわ」
「う、ううけど貴様はひとつ見抜けてないな……」
「え?」
「俺の剣は、戦争軍人上がりの軍用剣術、町のぬるい道場で運動不足解消のためにやってるものとは、根底から違う、単純な武力で俺の方が圧倒的に……あれ?」
クラウディアはさっきから懐のロングソードを探していたが見つからない。
「おう、これ、結構な業物ですな、古美術品として売ればかなり行くな。あんた金持ちだな」
「お……い!」
「いやさ、話聞いてたか、こっちの常識がそっちの伝説、あんたの軍用剣術なんてこの町の町道場のどこにも勝てねえよ、てか最初の一閃で見切ってんだよ、第一撃わざと外したんだろうけど、紙一重で一度踏み込んでからかわしてたの知ってた?」
「あ……あ」
「大方、おれんとこに刺客としてきたんだろうけど無能なあんたにこの国が早々長いことそんなポスト残すわけねえだろ?あんた、トカゲのしっぽ切りで左遷されたんだよ、早く銀行から全額おろさねえと土地、資産、利権、全てだれかさんに譲渡されてるぞ?この国の行政は申請からコンマ何秒でだいたいの許可が下りちゃうんでな?」
「ま、まさか」
クラウディアさんは、自分の懐の専用端末を探ると、アカウントごと消滅していた。電話とメール機能だけ残して全ての履歴、権限や機能が使用不可になっている。
「そ、そんな。ここまで上り詰めるのにどれだけの苦労を……」
完全に気の抜けた廃人さんになってしまった外見だけなら結構いけてる金髪紳士はもうぬけがらだ。のこってんのはご自慢の戦略魔法とちんぷなルーン魔術とあとは経験とエリート的な専門知識とその高そうな服くらいだ。
「まあ、持ち物を売って当面の生活費にして知識はあるんだから、魔術関係の職を求人から探すんだな、いまならアルバイトくらいなら、すぐ、行けると思うよ?」
もはや、聞いてない、それはそうだ、いままでのキャリアや形だけとはいえ戦争体験までして得た地位をたったの一撃で失ったのだから。
「わたひのキャリアが……一瞬で……トケタ………」
ここまでくるとなんか可哀想になってくる。
「ね、ねえその剣、返してあげたら」
「う、うん。なんか強盗したみたいで後味悪いわ、あのう、これここに置いときますね?それじゃ、クラウディアさんイケメンだしスタイルいいのでビジュアル路線でモデルとか目指してみたらいいと思います。ごめんね?」
「全く反応がない屍のようよ?」
「だめだ、俺には蘇生呪文はつかえん。町の僧侶にでも頼むのじゃな」
「おお、勇者よ、死んでしまうとは情けない」
「ノエル、弱ってる奴に追い打ちかますと自殺しちゃうよ?」
「う、いこっか?」
「うん、あ、そういえばおまえ。今日クリスマスって知ってた。ノエル、フランス語で「クリスマス」を指す語って知ってた?きっとクリスマスバーゲンでPCとかゲーム機とか安く変えるぞ?」
「イエーイ、じゃ、もうソフト50本プラス」
「おまえ合計80本どうやって消化するつもりだ」
「わたし、難易度マックスにしても初見で一時間くらいでクリアするのよね」
「マジか?何聖女のご加護とか?動画サイトにアップしない?再生数行けば収入になるかも」
「実況かーいいかもー」
「いやいや、おまえならタイムアタックTASさんと競えるって?」
「えー、コンピュータ演算とかと勝負、む?ゲーマーの意地を見せるところね、よっし、今から世界ランカー“Noëlle”の誕生ね」
二人の帰る道に粉雪が舞い始めた。混在する町は今日も混沌とうねっている。
第一話 完
混在する町 @Aseaaranion
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。混在する町の最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます