第38話 フローレンス侯爵家

あれから1年。

とても平和な毎日を過ごしていた。

平和すぎて……

いや前から平和だったけど更に何も無いというか……

それがとっても幸せなことなんだなと思う。


「ラベンダー様!忘れ物はございませんか?」


「うん!完璧よ!……多分。」


「……なら、もう1度確認しましょうか。」


めんどくさい……学園の寮を選択した私は……荷造りという難関な壁にぶち当たっている。

だって……我ながら荷物多すぎじゃない?

貴族って大変だなぁ……

まぁ、学園から家までそこまで遠くはないんだけれど。


それよりも!それよりもだよ!私は……ローズとノアと1年離れてくらさなくてはいけない……

これは私にとって死活問題だから!

帰ってこようと思ったらすぐ帰ってこれるんだけどさ!

寮を選んだのは私だけど……


「ラベンダー、ちょっといいかい?」


レオンお父様……?

こんな時に一体何の用だろう?


「あ、はい!今行きます!」


荷物の確認はとりあえずマリアに任せてお父様と一緒に書斎に入った。


「鍵をかけてくれるかい?」


鍵をかけてまでそんなに大事な話……???

いやただの親バカなだけかも……


「フローレンス家について……話さないといけないことがある。」


確かにうちは歴史が長いけど……フローレンス家の成り立ちとかだろうか?

そんな話を入学式前にする必要がないし……


「王族が何に寵愛された一族か知っているかい?」


「精霊……です。」


「フローレンス家はね、天使に寵愛された一族なんだよ。」


「天使……ですか?」


天使……ガブリエルに関係あるのかな?

天使に寵愛って……かなりすごい一族だけど……

ならもっとくらいの高い……公爵家とかな気もする。


「そうだ。フローレンス家はこの王国が建国時から授かる王命がある。」


建国時……1500年前からうちが授かっている王命……?

そんなものあるのだろうか……

それが今でも有効であるもの……


「それは……もし国が荒れた時、王を撃て。という王命だ。」


「……え?」


どうして……私はこんなに重要な役割を担わないといけないのだろうか……

世界滅亡の阻止、サポートキャラ、王家を討つN e w!

本当に冗談じゃない……

私には荷が重すぎる……

……なんか頭痛くなってきた……


「まぁ、その事についてあまり重く考えることはない。この王国ができて1500年、そんなことは起きなかった。それに……ライム殿下が王位につけば国は安定することは、ラベンダーが1番わかっているだろう?」


まぁ確かにそれはそうなんだけどね!

でも……もしヒロインが逆ハールートを選び、ライム達が戦争を起こしたら……

考えたくもないし、そんな馬鹿なことをする人じゃないって分かっている。

けど……戦争を止められなかった場合、フローレンス家がやらなればいけない。


「少し話はそれるが、フローレンス家には一族に1人秀でた者が生まれると言われてるんだ。天使の伝承と違って記述がある訳では無いけどね。でも……私はこの話を信じていない。」


秀でた者……それは確実にレオンお父様だと言える。

でも信じていないって……


「お父様が言いたいのは……秀でた者がいれば劣った者もいるということですか?」


「……やはり君は聡明だ。ラベンダーは私のことを秀でた者かと思ったかもしれない。けれど、それは母上と父上の思い込みだ。母上と父上は信仰心が強い。」


お祖母様とお爺様の思い込み……?

でも、あいつらはローズに許されないことをした。

その事実は変わらないじゃない。


「いわばこれは負の連鎖だ。この家は代々、劣った者に家を継がせている。王命を秀でた者が成し遂げられるように。」


「お爺様は……劣った者と言われていたということですか?」


「ああ、兄上も父上も親に愛されたことなどない。私もフィーネ……亡き妻に会うまでは歪んだ愛しか知らなかっただろう。」


フィーネ……ノアのお母さん。

一体どんな方だったのだろう。


歪んだ愛か……

その言葉に胸がキュッと苦しくなる。


『ねぇちゃん!』


歪んだ愛がなければ……彼は……死ななくてすんだのに。


「そんな愛を貰わずに育った、信仰深い人が……悪魔の伝承に酷似した子が産まれたらどうなると思う?」


ああ、そうか。

あの人に罪の意識がなかったのは。

悪い事だとわかっていなかったんだ。

でも……ローズにしたことは許されないこと。

この事実は変わらないのだ。


「……当たり前だと思っていたのでしょうね。」


「まぁ、父上も暴力は振るわなかったし……流石にやりすぎではあったがな。歪んでいたとしても愛を貰った、私に兄上の苦しみは分からない。けれど……この負の連鎖を止めることは出来るんだ。私は君達、全員が秀でた者だと思っているよ。」


「お父様……」


「辞めなさい、私は君の父親じゃない。叔父だ。兄上だって君のことを歪に愛していたんだから。」



あまり……愛されたという実感はない。

けど…

ああ、私はまた……見たくない、認めたくないものを蓋していたんだ。

父と母の愛はちゃんと……私へ伝わってきていたのに。

もちろん、父と母にはローズのことで憎む気持ちの方が大きい。

だけど……あんな風に突き放してよかったのか。

もっと彼らに向き合うべきではなかったのか。

親と子として。

お腹を痛めて産んでくれた母に。

不器用なりに働いて日銭を稼いでいた父に。


「私も、君のように兄上を救うことができたはずなのにね。後悔しても過去は変わらないんだよ。私は傲慢な男だ。兄上が得られなかった愛も……貰っているのにこんなに普通に幸せに生きているだなんて。」


信仰……神はこんなことを望むのだろうか。幸せを壊されないといけないもの?

伝承さえなければ……私達は普通の家族になれたかもしれないのに。

……理不尽だなぁ。


「明日は早いからもう寝なさい。」


「はい、レオン様。」


何だか頭もまわらず、微妙な気持ちを抱えたまま……

私は眠りについた。

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私はヒロインのサポートキャラ!?いいえ、悪役令嬢のサポートキャラです。 奏雨/みるく かふぇおれ @mirukukafyeore

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