第2話 夜汽車の音色哀しく



駅の前で彼女を降ろして見送った。


彼女は手を振って「またね」そう言ってくれたのが

せめてもの救いだった。

僕もまた手を振り「またね」同じ言葉を交わし合った。


駅の中へ遠ざかって行く彼女の後ろ姿を見つめていた。

よけいに寂しさが増して切ないからホームの中までは

入らずに駅の外で彼女を見送ったのだ。


ピ~~~~夜汽車の音色が寒空いっぱいに鳴り響いた。


彼女の乗った電車が走り去って見えなくなっても、

しばらくは暗くて寒い駅の片隅で佇んでいた。


辺りはすっかり夜の帳が降り始め駅の周りの田んぼの

向こうに散在する家々の明かりがチラホラと灯っていた。


時折に吹く冬将軍が来た様な冷たい風が肌を刺すように

痛かった。


切なくて 見上げれば、空高くに大きな四辺形の星座、

天馬ペガサスがきらめいていた。

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 黄昏暮れる帰り道 小川貴央 @nmikky

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