黄昏暮れる帰り道

小川貴央

第1話 黄昏暮れる帰り道


「黄昏暮れる帰り道」



窓のカーテン越しに優しく漏れていた夕日も沈み、

黄昏に暮れゆく茜色の西空に一番星が光っている

のが見えた。


ちょっと肌寒くなってきて喫茶店内のエアコン

から暖房の音が聞こえてきた。


もうあっという間に二人の楽しい時間は過ぎ去って

行った。


このまま時間が止まればいいのに・・・そう思った。


「あっもうこんな時間になっちゃったね、そろそろ

 アタシ・・・」

「う、うん、そうだね、時間が経つのは早いね」


急に時間が経つのが一気に加速されていくように

思えた。


彼女は振り向きざまに微笑みながら、

「またいつかここに来ようね!」と言ってくれた。

僕は飛び上るほど嬉しかった!


店を出た、木枯らしがヒュ~ヒュ~と鳴り、風が

とても冷たかった。


「寒いね、大丈夫?」と声を掛けたら彼女は

「うん、平気だよ、バス停でいいよ」と言ったけど、

近くの駅まで送ってあげた。


わずか30分足らずだったクルマの中で二人は特に

何も会話はしなかった。


彼女はただ黙って窓越しに流れて行く街の灯りを

ぼ~っと眺めていた。


僕はそんな彼女に気遣い、そ~っと静かに、ただ

黙々とクルマを走らせた。


結局お互いに今の家庭や家族の事など一切何も

話さなかった。


と言うより今僕たちは15歳だったあの頃にタイム

スリップしたかの様に懐かしい中学生時代に戻って

いるのに、二人とも敢えてそれを現実に引き戻したく

は無かったのだ。




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