第6話
シャルルの治療を終えて俺達は宿屋へ戻った。シャルルの服を買うためだ。
服を買うのに宿屋に戻るのは全知全能スキルの中にネット通販があるからだ。ネット通販では地球の商品やこの世界の商品を原価で購入することができる。お得なスキルだ。
シャルルは、作り的に貫頭衣のような布を一枚着ているだけだ。さすがに服を買わないわけにはいかないだろう。それに、シャルルの服は俺の中ではすでに決まっている。
アニーに一人追加分の部屋代を払い二人部屋に変えてもらいシャルルと一緒に部屋に入る。
「シャルル。これから服を買うぞ」
「服屋にいかなくて良いのですか?」
「問題ない。俺のスキルにネット通販というスキルがある。今からウインドウを開いて見せるから。俺のスキルに関しては誰にも言わないでくれ」
「分かりました」
俺はネット通販のウインドウを開く。そして俺が想像しているシャルルの服を選ぶために検索欄に〖メイド服〗と入力して検索ボタンをおす。すると数種類のメイド服が表示された。その光景をみてシャルルは目を丸くして驚いている。
俺はその中からオーソドックスな紺色に白いレースでロングスカートのメイド服を選んだ。襟首には赤いネクタイがついていて可愛らしい服だ。
コイン投入口に金貨を二枚投入して、メイド服を5セットと肌着や下着を上下5セット購入する。お釣りも計算されて残高欄に表示されている。
メイド服と肌着や下着にはサイズ自動調節の魔法を付与してシャルルに渡す。
服の買い物を済ませた後に、皮製のリュックを購入した。そのリュックに空間魔法の【
「これがご主人様の力なのですね。誰にも言わないで欲しいとおっしゃっていたことを理解しました」
そう言っているシャルルを見ると俺の目も憚らず隣で着替え始めていた。
「ご主人様。この下着というもののつけ方が分からないのですが?」
シャルルは裸になりショーツは穿いているもののブラジャーの付け方で悩んでいた。この世界にブラジャーという物は存在しないらしい。
「シャ、シャルル。お前俺がいるのに裸になって平気なのか?」
「ご主人様はおかしなことを言いますね。私はご主人様の奴隷です。この身はもうご主人様のものです。裸を見られても平気です。それ以上のことも覚悟しています」
「そ、そうなのか……」
俺はシャルルの芸術的な体の曲線に目を奪われる。
「それよりご主人様。この下着の付け方を教えて下さい」
俺は前世で下着を脱がせたことがあっても着せた経験は無い。ただブラジャーを付けるのを何度も見たことがあるのでブラジャーをシャルルの手から奪って彼女の背中に回りシャルルにブラジャーを着せる。
「ご主人様。有難う御座います」
ブラジャーを着せるとシャルルはお礼を言いメイド服を着始める。メイド服はシャルルに似合っていた。
「似合うじゃないか」
「ありがとう御座います。よろしいんですか? 奴隷に着せる服の値段ではないと思いますが……。私ならもっと安価なものでも……」
「いいんだ。シャルルに着せるのはこの服だって決めていたからね。俺はメイドを持つのが夢だったんだ」
俺も服買っておこう。ずっとこの世界に来た時のこのよくわからん服のままだったし自分の服は旅装束って感じの派手過ぎない小綺麗な服を5着程度と、黒い外套を買っておく。
しかし、メイドを連れて旅をする俺は周りの人の目にはいったいどのように映るのだろうか。そのへん詳しく聞かれたら適当に没落貴族の子供的な設定にしとくか……ま、その時考えよ。
シャルルは俺が服を購入している間に【
「実はそのリュックはマジックバッグになっていて、中は時間が止まってるんだ」
「まさか……そんな物聞いたことありません」
「やっぱり時間が止まる機能まで付いたマジックバッグはないのか?」
「はい、少なくとも私は聞いたことがありません」
そっか。やっぱりないか。ただのマジックバッグとして使えるけど、時間が止まっていることはなるべく知られないようにしないとだな。でもマジックバッグ自体は高価だが結構存在しているから使う分には気にしなくていいのは楽になった。
「このリュックをマジックアイテムに変えたのはご主人様ですよね」
「ああ、自分で作った」
「そんなことまで……いったいあなたは……」
「見習い商人兼Fランク冒険者だよ」
「ありえません……」
信じられない物を見るような目で見られたが、そんなことより重要なことを思い出した。
「しまった……シャルルの冒険者登録しておくの忘れた。」
たぶん奴隷だから身分証明とかいらないけど、あるに越したことはない。
「話を逸らしましたね。ご主人様」
「いやいや、そんなつもりはなかった。まあ、これからも色々驚くことあるかもしれないし、慣れてくれ。そして他言無用で頼む」
「はぁ、わかりました」
なんとかシャルルは納得してくれたようだ。とりあえずは適当にごまかしながら慣れてもらうしかないな。俺にも把握できてないことばかりだし。
「よし。次は旅に必要そうな物を購入しよう」
「ご主人様、すぐに旅に出るのですか?」
「明日の朝には出ようかなあと」
「目的地はどちらでしょうか?」
「目的地は……ない!!」
えぇー。って感じの目で見られました。
「とりあえずダンジョンのあるところに行きたいなあとは思ってるんだけど」
「ダンジョンですか。それならば、ダンジョンを中心として栄えている街があるはずですので、そこを目指してはいかがでしょうか?」
「よし、そこにしよう。そこって遠い?」
「私の記憶が間違っておらず、昔聞いた情報通りでしたら、ここから馬車で5日ほど行ったところに王都があり、そこからさらに馬車で10日ほどだったと思います。」
なかなかの距離である。
「結構かかりそうだなあ。とりあえずは王都までの5日の旅の準備は必要ってことね」
しかし、王都を通過しなければならないのか。あまり近寄りたくはないが王都の様子を見てから色々判断すればいいか。
「ご主人様、5日は馬車での日数です。馬車をお持ちですか?ないのであれば定期馬車のようなものか、護衛を兼ねて行商人に同行するか、どちらかになるとは思いますが」
まあ、急いでいるわけでもないから歩いてもいいし、金はあるから馬車買ってもいいけど、どうしようか。
「あまり他人と行動は共にしたくないから歩くか馬車買うかのどちらかだな」
「でしたら、王都までは歩いて行き、王都で馬車を購入した方がいい馬車、いい馬を手に入れられるかもしれませんね」
「そうだな、急ぐ旅でもないし、歩こうか。何日かかるかわからないけど、10日分くらいの準備があれば余裕あるかな?」
「はい、それくらいあれば余裕があると思います」
「じゃあ、その予定で準備しよう。足りないものがあればまたネット通販で購入すればいいだろう」
ネット通販で必要そうな物や、食事の材料などを買い込む。俺は全知全能なので料理が出来る。シャルルも簡単な料理ならできるというので材料さえあれば旅の食事も心配ないだろう。
購入した食材や雑貨などを【
「シャルルの偽装がバレることってあるのか?というか、この世界のステータスの確認法ってどんな方法があるの?」
「ステータスは鑑定のスキル持ちが鑑定するか教会にて確認が行えます。実際は鑑定紙というものがあればどこでもできますが、乱用を防ぐために教会のみが取り扱えるようになっているようです」
魔族なのに本当によくご存知だこと。素晴らしい。
「鑑定紙を使用した確認にも偽装の効果は発揮されますので、レベルが高ければ本当のステータスを知られることはないと思います」
「じゃあ、シャルルの偽装レベルならよっぽど高レベルの鑑定スキル持ちでなければ大丈夫ということか」
とりあえずは安心かな。さすがにシャルルの偽装レベルを超える鑑定持ちはなかなかいないだろうし。
でも上げておくに越したことはないか。
よく考えたら存知全能でシャルルのスキルレベル上げられるんじゃないか?まぁ、今はやらなくてもいいか。旅の途中で色々話しながらやっていけばいいな。
「準備はだいたいこのくらいでいいかな。明日朝一で冒険者ギルドに立ち寄ってシャルルの登録をしてから出発しよう。ところで、今更聞くけどシャルルはなにか武器いる?」
「いえ、私は体術とこの杖があれば大丈夫です」
杖はシャルルの腰より少し低いくらいの、手をかざすとちょうど良い位置に来るような長さで、上1/4程度が少し太くなっており、手に持つところは少し丸みを帯びた球状で細かな飾り細工がしてある。
ステッキと呼んだ方がしっくりくるかもしれない。派手ではないがかなり手の込んだ物のようだ。杖先端と持ち手の部分は金属でできている。
「もしかしてそれって仕込み刀?」
「かたな?名前はわかりかねますが、一見杖のように見えますが実は中にレイピアが仕込んであります」
おう。武器でした。レイピアを抜いて見せてくれた。刀ではなくレイピアだったが、まさに仕込み刀のようなものだ。カッコいい。俺も欲しい。
「くぅーっ! カッコいいな。それかなり業物って感じだし、他の武器は持たなくてもいいな」
鑑定で見たら、細工も刀身もミスリルでできている。ミスリルです。ファンタジーです。やっぱミスリルの武器持ちたいよね!
「はい、これさえあれば基本的には大丈夫かと思います」
「それミスリルだろ? ミスリルってのは手に入りやすいか?」
「いえ、ミスリルは鉱脈も少なく、精錬や鍛治技術もかなり熟練の職人にしかできないので、かなり高価です。ですが手に入らないというわけではないのでそれほど珍しいものでもありませんね」
「なるほど。よし、目標のひとつをミスリルの刀を作ることにしよう。まずはミスリルのインゴットはネット通販で手に入るから大丈夫だろう。それに後々はダマスカス鋼やオリハルコンも使ってみたいなあ。あぁ夢が広がる」
「また、とてつもない夢を…オリハルコンの武器などこの世に数点しか見つかってもいないと言いますよ。ところで先ほどから言っているカタナとはなんですか?」
「刀ってのは片刃の反りのある剣なんだけど見たことないかな?」
「うーん、そのような武器を目にしたことはありませんねぇ」
そうか、やっぱりこっちの世界には刀は存在しないのかな。とりあえず今手持ちにある剣を2本くらい潰して鉄のインゴット作って、宿の裏の釜のところにあった炭を拝借してきたので炭素も作れると思うから鋼を作れる気がする。俺にはスキル全知全能がある。材料さえあれば魔法の力でゴリ押しでなんとかなるだろう。
「なにをするのですか?」
材料となるものを出しているとシャルルが聞いてきた。
「んー、できるかわからないからとりあえず見てて」
鍛治のスキルと錬金のスキルのレベル高いからいけると思うけど……。
なんとなくどうすればいいかがわかるのはきっとスキル全知全能のおかげだ。やり方がわかればあとは行動に移すのみ。ということで、やってみたら剣と炭が光って金属の塊のようなものができた。
「お、できた。これは……玉鋼ってやつかなあ?」
「なっ……!?」
よくわからないけどここまでやれてしまったら早速刀作りたくなってきた。鍛冶屋のおじさんとこまだ空いてるかなあ?鍛冶場かしてくれるといいけど…。
「ちょっと出掛けてくる。すぐ戻るから!」
唖然として固まっているシャルルを置き去りにしておじさんのところへ向かうことにした。
俺はとんでもないスキルを頂いたようです。 @nagahamayasushi
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。俺はとんでもないスキルを頂いたようです。の最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます