戦利品②
「うわぁ……」
もはや僕の口から出てきたのは感嘆の言葉ではなく、呆れたような声だった。
もちろん、強い装備がもらえるのは嬉しい……のだが、今まで使っていた武器や武具とは明らかに一線を画するキチガイ性能。
本当に僕らが使っていいのかと当惑するほどだ。
ポーションやマジックバックからこちらへと目を移していた後ろ二人も僕と同じ反応を見せた。
「これ、凄いですね。全部売ったらとんでもない額になりそうです……」
「まあ、そりゃそうだろうな。これ全部、地球上で発見されている武器防具のなかでもダントツの性能だ。金持ちの中にはウン十億どころか何百億って金をつぎ込むやつだっているだろう。オークションに出せばそれ以上の値がつく可能性もある」
「ま、マジか……」
小泉の声に僕と冬華はゴクリと喉を鳴らした。
小泉はいいとこの坊ちゃんだし、金には困っていないからだろう、そこまで動揺した様子はない。
もちろん、金持ちとはいえ、ここまでの額をそう簡単に支払えるような大富豪だとは考えづらいが、まあ、僕たちよりかはお金に対して耐性があるのは間違い無い。
それに反して貧乏人の僕たちからすれば夢物語のようもの。
このダンジョンから無事出ることができたなら、将来は安泰間違いなしだ。
「っつても、この装備を売る……なんてのは悪手もいいところだけどな」
「え、な、なぜです?」
冬華は売る気満々でいたのか、不思議そうな顔。
「そりゃあそうだろ。この装備があれば、上層での攻略も容易になる。そうなれば、いずれはこの装備と同等レベルの物が手に入る可能性も上がる。売っちまえば、上がる利益はそれっきりだが、自分の力として活用すれば、それ以上の利益を得ることだってできるんだからな」
小泉の指摘に、冬華と僕はへぇ、と息を漏らした。
「とは言っても、このまま使うのか、それとも売るのかは個人の自由だ。好きにすればいい。そんなことよりも、最後の箱も開けてくれよ」
「あ、ああ……」
僕は小泉に言われるがまま、三つ目の宝箱へと手をかけた。
その中に入っていたのは三つのスキルカード。
「おぉっ!」
と、短く三つの歓声がなった。
これは分かりやすくいいアイテムだ。
【鑑定板】を使うまでもない。
「これは今すぐにでも使っていいんじゃないか?」
「まあ、手っ取り早い強化手段だしな……俺としても反対はない」
「私もです」
三人とも考えは同じ。
「じゃあ、一人一枚ってことで」
僕は宝箱から一枚、スキルカードを手に取った。
続いて、冬華と小泉もスキルカードを手にもつ。
――瞬間、辺りを光が包み込む。
目を守るため、咄嗟に目を瞑った僕の視界は一瞬闇に覆われる。
数秒してゆっくりと目蓋を開くと、同じように目を瞑っていた冬華と小泉も目をパチパチとさせていた。
「これで、スキルが手に入った……はず」
僕は己のステータスを確認。
――ステータス
名前:柊木 奏
年齢:18
Lv.482
《スキル》
【鑑定板】
【魔魂簒奪】Lv.15
【隠術】Lv.4
【限界昇華】Lv.1
【】
【】
SP:920
――
開いたときにはもう、スキルカードによって手に入れたスキルは反映されていた。
【限界昇華】。
創作物なんかでよく聞く、限界突破みたいな物だろうか?
自分の限界をどうにかこうにかするんだろうな、というのは分かる。
僕は詳細な情報を求めて【鑑定板】に【限界昇華】と記載された欄を指でタップ。
すると、すぐさま画面が切り替わる。
――
【限界昇華】
スキル所有の限界を一段階昇華させる。
スキル使用時、肉体と魔力のストッパーが解除され、また、限界以上の力を発揮できるようになる。
発動中は全身からオーラが漲る
使用可能時間はレベル×10秒。
――
「お……これは……」
凄い、のか? よく分からない。
スキルレベルに応じて長時間、普段以上の力を出すことが出来るスキル、ということだろう。
その伸び幅がどれほどのものかは分からないが、使うとしたら短期決戦用になるかな?
効果次第では優先的にレベル上げをした方がいいスキルだ。と思う。
僕はなかなかの成果に頬を緩め、未だ自身を鑑定している冬華と小泉に視線を投げた。
「二人はどうだった?」
僕の声に反応して帰ってきた二つの声はどちらとも、喜色に満ちたものだった。
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