戦利品①
その扉を開いた時、僕たちの目に飛び込んできたのは三つの大きな木箱であった。
パッと見てみれば何の変哲もないもの。
しかし、よく目を凝らしてみるとどうだろう。
薄ぼんやりとしたオーラのようなものを纏っているのがわかる。
僕たちは思わず生唾を飲んだ。
「あ、開けよう」
はじめに開口したのは小泉。
それに続いて、僕と冬華は相槌をうった。
「……ここは、柊木が頼む」
僕を労ってのことだろうか、小泉はその役割を僕へと譲った。
小泉と冬華が僕と宝箱への道を開け、僕はそれに逆らうでもなく手を伸ばす。
「そういえば、トラップとかは仕掛けられてないよな?」
「大丈夫だ」
僕の疑問に小泉が答えた。
彼のでの中には一つの端末。恐らくは【ダンジョンマップ】。
その中から情報を入手したのだろう。
これまでの経験からして、その情報に間違いはない筈だ。
僕は安心して、再び木箱の蓋に手を添える。
蓋をつかんだ手に力を入れて開けば、ギィッと軋む音が。
そして、箱は開かれる。
まずは一つ目。
中にあったのは大量のポーションと一つのカバン。
チラッと見ただけでもポーションの数は軽く二十を超える。
しかも、前に源と一緒に手に入れたポーションとは少し色の濃度が違うような気がする。
こちらのポーションは明らかに色が濃い。
もしかしたら、ポーションのようでポーションでない――強化薬のような別種のものなのかもしれない。
その確認に、と【鑑定板】を取り出してカメラを向けた。
――
名前:エクスポーション
効果:ハイポーションの上位。部位欠損ですら直しうる最高位のポーション。死んでいない限りは大抵の傷を治す。また、病気や状態異常にも効果あり。服用後、十分間は効果継続。
――
「す、すごっ……」
思わず声が漏れた。
ハイポーションなんてものですら見たことがないのに、僕たちは一段越して最高ランクのポーションを手に入れてしまったらしい。
しかも大量の。
これだけあれば負傷したときにもなんとかなりそうな気がする。
そして、続いてはこのバック。
斜めがけの革製の物。
見た目は極々シンプルで、丈夫そう。
これも何らかの不思議効果でもあるのかな、僕は再び【鑑定板】のカメラを向けた。
――
名前:マジックバック
効果:収納力が見た目と比例しない不思議なバック。中身には十メートル四方分の空間が広がる。いくら物を入れても使用者には重さすら感じない高品質な一品。
――
「これまたすごい」
僕の呟きの応じて、冬華と小泉も【鑑定板】を取り出して各々確認を始める。
二人とも、僕と同じような反応をした後、ポーションとマジックバックをしげしげと眺め始める。
僕は試しに、と獣王との戦いで壊れてしまった槍をマジックバックの中へと収納してみた。
すると、明らかに入るわけのない長さの槍がスルスルとバックの中に収まっていく。
事前に分かっていても感嘆の息が出た。
しばらく三人で興奮したのち、二つ目の宝箱へと手が伸びる。
こちらは一つ目よりも大きめ。
それ故に量も多かった。
中身は武器防具の数々。
どれもこれもが一目見ただけでわかる一級品。
剣。槍。杖。盾。金属鎧に革鎧。それにローブまで。
今度はすぐさま鑑定をかけていく。
――
名前:宝剣・フランタール
効果:各所に希少な宝石が散りばめられた黄金の剣。剣身には炎の紋章が描かれている。その紋章に触れれば、たちまち美しき炎に包まれるだろう。
――
――
名前:魔槍・アトラツィオ
効果:魔力注ぎ込めば注ぎ込むほどに重量が増加。また、主人の血を一定量吸い込むことで隠された能力が解放される。かつて、この槍の主人は不幸な運命に呪われて自ら命を絶ったのだとか。
――
――
名前:ユニコーンの短杖
効果:ユニコーンの角を削り出して作られた特殊な効果が付与された短杖。手に持つだけで魔力量が上昇。発動魔術の効果上昇。さらに精密な魔術操作が可能となる。時折杖が虹色に光り輝く。持っていれば幸運なことが起こるかも。
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名前:霊亀の甲羅盾
効果:伝説の巨大亀、霊亀の甲羅を贅沢に使った盾。ただただ硬く、軽い。
――
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名前:ミスリル鎧
効果:全身をミスリルで拵えた一品。軽く硬い。また、魔術系統の攻撃にも高い耐性を誇る。生半可な攻撃では傷一つ付かない。
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名前:獣王・レーニコルのレザーアーマー。
効果:獣王・レーニコルの皮を鞣して作った鎧。皮は厚く、硬い。火に対する大きな耐性を持つ。格下の魔物に恐怖を抱かせる特殊効果がある。また、獣系の魔物は稀に着用者へと服従の姿勢を示す。
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名前:黒魔女のローブ
効果:かつて、全身黒尽くめの変人として扱われていた魔女の着ていたローブ。羽のように軽いにもかかわらず、斬撃や衝撃に対して抵抗力が高い。
――
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