久しぶりのステータス
「連れて行って、くれるのか……?」
恐る恐る顔を上げた彼の問いに、僕は「まだ分からない」と返した。
「僕は今、白月さん――試験の時一緒にダンジョンに入った子とパーティを組んでいるんだけど、一応彼女からも許可はとらないとだからさ」
と、言ったところで、源と白月さんの第一印象が最悪だったのを思い出した。
案の定、源は微妙そうな顔を浮かべている。
「あー、大丈夫だよ。前は確かにちょっとアレだったけど、最近は大分雰囲気が柔らかくなってきてるし……源も仲良くなれるはず」
多分。
「分かった……じゃあ、決まったら連絡してくれ……その、いいにしてもダメにしても、出来れば早めに教えてくれると助かる」
ダメ、と言われた場合、源は一体どうするつもりなのだろうか。
もしかしたら、一人で無理してでも七階層まで行ってしまうのかもしれない。
普通に考えれば不可能もいいところ。
常人ならやろうともおもわないのだろうけど、でも、源ならそれをやったとしてもおかしくはない。
妹を救うため、そのためには自分の安全なんか考えもしないで、突っ込んで行ってしまいそう。
彼らしいといえば、らしいけれど、それが僕は心配でならない。
「僕の退院まで今日を含めてあと二日。その間に白月さんからの許可はどうにかして取っておくよ。だから……無茶なことだけはしないでくれよ?」
「おう……」
心ここにあらず、といった様子で小さく頷き、彼はまた、ベッドの上に横たえる少女へと視線を戻した。
それを機に、僕はこの部屋を後にした。
源に気遣ってか、医者たちも退出していく。
彼らの顔色は総じて暗いものだった。
誰もが、超希少かつ高額であるはずのポーションを手に入れることができるなどとは思っていないのだから、それも無理からぬことである。
明確な手術法が確立されていない今、もう彼女は死ぬしかない。
そう思っているわけだ。
僕は自分に設けられた病室に戻るや否や、白月さんに連絡を入れる。
もちろん、自分の怪我が治ったあと、ダンジョンへ赴く際、一時的にでいいから源をパーティにいれてもいいだろうか、という旨を書き綴ったものをだ。
これについては、どう返ってくるか僕も検討がつかない。
そして、結局この日は返信がないまま一日が終わった。
◆
翌日の早朝。
特別やることもなく、就寝が早かったというのもあって六時前に起床した僕だったが、枕元に置いていたスマホには一通の着信履歴が表示されていた。
送り主は白月さん。
要件は恐らく……というか十中八九昨日の件だろう。
僕は恐る恐る画面をタップして、メールボックスを開いた。
「うーん……」
やはりというべきか、反応は芳しくなかった。
別に反対というわけでもないようであるが、しかし、特段快く思っているというわけでもないようなのだ。
とりあえず、渋々ながらも了承の意を示してもらえただけ良かったとしよう。
僕はこのことを源に報告しておくことにした。
時間的にもまだ起きていないだろう……と思っていたのだが、送信からの返信は驚くくらいに早かった。
その後はメールを通して数日後のダンジョン攻略に向けたやり取りを交わし、僕はそのあと、色々と検査を受けさせられて最後には身体に異常なしとの判断を受けた。
結果、明日には退院していいとのこと。
ただ、後二日程度はダンジョンに行くことを禁止とされた。ということもあって、ダンジョン攻略再開は三日後に決定。
病室に戻っても寝ることかスマホをいじっているくらいしか時間を潰す手段がないので、軽く筋トレやらスキルの発動確認でもしておく。
まずは、と腕立てをはじめるのだが、これが一向に疲れなかった。
続けて腹筋にスクワットを数百と繰り返したが、軽く息が切れるだけで体力の消耗がほとんどといっていいほどになかった。
以前はレベルアップの恩恵もあったとはいえ、数百単位での筋トレをぶっ続けでとなったらそこそこの疲労感は感じていたのだが……。
僕はそこに疑念を感じて自らのスキルの一つ、【鑑定板】を掌の上に発現させる。
そして、自分自身を映し出し――
――ステータス
名前:柊木 奏
年齢:18
Lv.19
《スキル》
【鑑定板】
【魔魂簒奪】Lv.5
【】
【】
【】
【】
SP:16
――
「はぇ?」
口から飛び出たのは、間抜けな声だった。
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