第8話 街に繰り出す

 翌朝、朝食を食べてさっそく買い出しに出かける。この世界に来てから買い物をしていないので少しワクワクしている。たしか、いつか読んだラノベには複数のお店を回っておおよその値段を知るって書いてあったような......。よし、まずは生活用品を攻めてみるか。


「ううむ、歯ブラシ一つでも値段差が結構あるんだな......」

 歯ブラシに銅貨二枚使うとしてもあのレベルの歯ブラシだと1月持たなさそうだよな。現代の歯ブラシってすごかったんだな......。後は衣服と水筒、あとリュックサックやナイフとかあれば結構便利か?


 品質と値段を見比べながら欲しい物を買っていく。衣服以外で銀貨2枚、衣服が意外に高くて少しだけフリーズしてしまった。


「すみません、自分に合うような奴だとオーダーメイドしかないのでしょうか?」

「そうだねえ、ここにある古着は一人一人型の大きさが違うからね。ほら、うちって冒険者ギルドが近いじゃない? だから結構ガタイのいい人が服を売りに来るから大きいサイズが集まりやすいのよね」


 俺を採寸しながら淡々と告げる。くっ、仕方ないか。ここはオーダーメイドの服で我慢するか......。向こうの世界でも既製品しか買ったことがなかったので少しドキドキしながらすべての採寸を終える。店員さんが必要なことを羊皮紙にサラサラと書いていく。衣服だけで銀貨1枚した。その代りに下着を2着ずつおまけしてくれた。


 完成は6日後だよと言われたので、とりあえず自分のサイズに近い衣服1セットに着替えてお店に出る。衣服で銀貨1枚と大銅貨1枚。これは買い物の後にギルドで依頼受けなきゃダメかなあ......。






「あら、今日は来ないんじゃなかったの?」


 昨日依頼に連れまわしたギルド職員の人が話しかけてくる。そういえば昨日は謝る機会がなかったし謝っておくか。


「ああ、昨日はすみませんでした。まさかあんなことになるなんて思わず」


 気にしてないわよと依頼書を貼りながら応える。本日の俺が受けられる依頼内容はどれだろ......。


・ゴブリンの討伐 1匹銅貨2枚 討伐証明の魔石を持ってくること


・スライムの討伐 1匹銅貨1枚 討伐証明の魔石を持ってくること


・薬草採取 回復ポーション用の薬草の採取です。10本一束銅貨2枚 鮮度や採取

      方法によって上下します。


・品物を届ける 指定した商品を特定の場所へ届ける。詳しい話は依頼主の元へ。大銅貨4枚。


・壁の補修作業 外壁の崩れた部分の補修作業。1日大銅貨5枚 ※出来高によって増額有り。


 ふむ、土魔法があるから壁の補修がいいか? それ以外だと門の外に出なきゃいけなさそうだし、壁補修がベストか。


「お姉さん、この依頼って今からできます?」

「お姉さんって......。私はリネーアって名前があります」


 それは失礼しましたと詫びを入れてこの依頼の説明を聞く。東口方面の外壁が崩れかけているので、一度綺麗に壊して作り直すようです。その人員確保ですねと言いながら依頼書を貼りつけていく。


「リネーアさん、それっていつから始まるんですか?」

「ええっと、明日の早朝から募集してますね」


 よし、さっそくこの依頼を受けよう。てかこの依頼受けないと此間立てた目標が達成できなくなる!


 さっそくリネーアさんに受注処理してもらう。明日からお世話になるんだから顔出しに行きなさいと有り難いお言葉をいただいたので早速挨拶に向かう。





「すみませーん! 明日から補修のお世話になる物ですが誰かいませんかー?」


 東門に着き、補修の人らしき集団がいたのでそこら辺に聞こえるように声をかける。


「ん? お前ぇギルドのやつか?」

「はい、龍慈です。よろしくお願いします!」


 集団の中からかなりゴツ目のおっさんがこちらに寄って来る。おお、デカい。近づいたからわかるデカさだわ。2メートル近くあるぞこれ! ズカズカ歩いてきていきなり体中をバシバシし始めた。


「あの、そこ、そこ痛いんですが」

「......まあ、こんだけあれば大丈夫か」


 歓迎するぜと言いながら集団の中に連れていかれる。傍から見たらただのいじめ現場みたいだな。


「おうみんな聞いてくれや。明日から一緒に働くリュージだ。リュージ俺はゲールだ」

「龍慈です。よろしくお願いします」


 ゲールはこの仕事の監督役らしかった。自己紹介が終わったのでゲールがメンバーを紹介してくれた。

「全員変わった顔してっから割とすぐに名前は覚えられるぞ。右からドム、リッツ、ディズ、ロットだ」


 190センチくらいの大柄スキンヘッド、頬に切り傷があるのがドム。同じくらいの身長で紫の短髪、筋肉は付いているがこの中では細身な方なのがリッツ。180センチくらいの赤髪長髪を後ろで一つ結びをしている。この中では一番の細身なのがディズ。ゲールと同じくらいの身長でこの中で一番ガタイが良い。緑色の短髪なのがロットだ。


「よろしくな坊主」

「よろしくね」

「リュージか、頑張ろうな」

「よろしく。怪我だけはしない様にな」


 それぞれ肩をポンポンとやって現場に戻って行った。


「そうだリュージよ、この後暇なら仕事見学するか? 明日の仕事もスムーズにできると思うぞ」


 買うものも買ったし、この後は特にやることもないのでそのまま見学についていくことにした。



「まずは土魔法を使える奴と普通のやつに分かれて石材と接着剤作りだ。リュージは土魔法は使えるのか?」

「はい、使えます」


 なら石材作りだな。と言いながら石材製作担当の人を紹介してくれる。


「おお、さっそく来たのか。俺はゴルトスだ、ここの石材製作担当だ」


 よろしくなと手をグッと握って来る。流石ゲールと同じような体格をしているだけあるわ。万力と握手してる気分だ。


「龍慈です。今日は工程の見学に来ました。明日から参加させてもらいます」


 おう、じゃあちゃんと見とけよと言いながらゴルトスは作業に戻って行った。


 



「って感じで石材を作るんだ」


 大体は理解できた。まず土魔法で石材を混ぜ合わせ、指定されたサイズに形を作る。そのまま少し固まるまで待って、竈に運ぶ。おおよそこんな感じだ。この仕事の中では比較的に肉体疲労は少ないようだ。


 

「なるほど。でもすごいですねどれもサイズが均一で」


 金貰って仕事するんだ。それくらいできなきゃ困るってもんだぜと笑いながら他の作業場も紹介してくれた。



「今日は見学有難うございました。明日からよろしくお願いします」


 おう、期待してるぜ。と言いながらゲールは現場に戻って行った。




「さて、明日から仕事なわけだが......金が足らんぞ」


 俺の手には銀貨1枚と大銅貨9枚。あそこの宿に泊まれるのは約一週間か。それにいつまでもお金を借りた状態って言うのは嫌なので早く何とかしないと......。


「そうだ、聖属性は回復魔法だ。これをなんかビジネス化できないか?」


 全身に電気が駆け回ったような感覚だった。これを商売に使えればしばらくのお金は大丈夫なんじゃないか? 今は太陽的に2時半ごろか? 今教会に行けばワンちゃん教えてもらえるんじゃないか聖属性。そうと決まれば即行動! 自宅へ帰る足取りを教会に向かって歩を進める事にした。




教会の場所なんていたことがないから周りに聞きながら。何とか協会に到着する。


「ここが教会か。これが普通サイズなのかな? 結構大きそうだけど......」


 普通の一軒家よりも二回りほどの大きさがある。俺は信仰心とかあるタイプじゃなかったけど、教会の中はお祈りをする場所だってことくらいは知ってるのでなるべく音を立てない様に静かに扉を開けて中に入る。



「あら、ここらでは見無いお顔ですね。何か御用ですか?」


 シスターさんだ。生で見るのは初めてでちょっとドキッとしてしまう。やはり修道服は世界共通出来るもんなんだな! しかも金髪巨乳だ。破壊属性過ぎて理性がどうにかなるところだった。ちょっとドキドキして声がドモらないように気を付けないと。


「はい、冒険者ギルドで聖属性の魔法については教会で聞いてくれとのことなので」


 あれ、光と闇属性だったか? まあ問題ないだろう。ええ、聖属性は教会で教えることになってますよと講義部屋? らしきところに案内される。



 ここは......。ベッドに机、隅っこには本棚があり何冊かの本が入っている。生活感があるがあまりにも質素だともいえる場所に案内された。


「あの、ここは......?」

「ここは私の寝室です。今は他の聖属性の魔法の習得希望者が講義室を使っているので、私室で申し訳ないのですがここで講義させていただきたいのですが......」


 全然かまいませんよと女性の私室に心臓が高鳴りながらもDTの力で平静を保ちながら応える。


「ありがとうございます。では聖属性魔法について講義を始めたいと思います」



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異世界に飛ばされたのに戦闘系スキルが無いので憧れの農業生活をしようと思う カラメルtakumin @KarameruTakumin

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