五十一句

笑む鹿がいると噂の奈良を旅


ドロシーよ案山子は味方怯えるな


鹿叱る我が子を舐めて泣かすので


書き初めが「お金ほしい」の児童呼ぶ


火事を指し子がまだ中と酷い嘘


目疑ふ鬼が何故豆を撒く


四月馬鹿老爺いつもの死んだ振り


幸せが春眠だけの彼起こす


夏蜜柑潰す男の歯が奇麗


降下する燕の角度売上図


蟻の国我に権利は要りませぬ


カマキリの怒りの写真猫が撮る


曼珠沙華閻魔を脅す度胸あり


流星のごとく片付く我が仕事


死ぬまでの運動会は棄権不可


秋の風指が這ひずる古戦場


飽き飽きす秋の明け方息し生く


満月を定規で計る9cm


二階から南瓜を落とす怒られる


その服で会ひに行くのか薩摩芋


彼の口開けばいつも木枯で


芋虫のコスプレの子を追ひ抜かす


山葡萄?私に貢ぐ物がそれ?


クリスマスツリーと言へど実は松


止めてくれ聖歌しつこく耳の中


哀し気に胃を押へつつ去る聖夜


人波に呑まれ望まぬ初詣


誰の顔獅子舞やねん舐めとんか


着飾れどお前の顔は福笑ひ


本年も賀状のゼロに悔し泣き


我我の双六上がりまで遠く


あまりにも歌留多を極め手を出さず


会場を間違へ吹雪く中帰る


子に泣きて死ぬなと頼むたかが風邪


北風が吊り橋揺らすただ怒り


負のオーラ君が過ぎれば皆枯木


ブランコにそろそろ飽きろ母は用


花衣脱がす楽しみ禿頭


五月来るいたずら鬼はもう来るな


猫の子がにやり知らない庭に人


血の映画五月の京へ生還す


たんぽぽのお化けが帰る美容院


手を出せば金貸す友を啄木忌


罰としてしばし柱で鯉のぼり


一輪のデージーこれで付き合つて


賑やかな夏を文語でへぼ詩人


吹かずとも抜け毛さらさら南風


初めてのキャンプうきうき雨女


灼熱日印度はもつととか詭弁


瓜売りの折合ひつかず二人組


へらへらと妻の目を見ず桜桃忌

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冬将軍 祥一 @xiangyi

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