知られざる創世主と不可侵なる呪文
憂杞
知られざる創世主と不可侵なる呪文
我が
我が叡智により綴られしは、
我のみぞ想う、ゆえに我のみぞ知る世界の断片が、今ここで我が手により綴られている。ゆえにこの自由帳──
本来であれば、この行為は禁忌である。何故なら、今の我々は
それもただ書き留めるのではない。この
だが、私はそれを破る。破らざるを得ない。
今だ。今でなければならぬのだ。
今、私は
ゆえに、今、私は書き留めなければならない。
たとえ
だが、それを阻むのは
我が右手に握られし
今の私の元には、彼の代わりなどいない。
だが、私は諦めない。ゆえに私は綴る。不可視なる羅列を。本来であれば鮮明なる黒の
そして、それでいい。たとえ
この言の羅列が他者の目に触れること。
それは、あってはならないことだ。
もしこの記録が未完なままに他者の目に触れたなら、
それだけは、あってはならない。ゆえに、隠し通さねばなるまい。
瞬間。
「――!」
声無き声を上げながら、私は剣から手を離した。
不可侵たる
――
私は直ちに床へ手を伸ばす。
今この瞬間、私が秘めるべき使命は破られようとしている。ゆえに、ここで
だが、刹那。
私のものではない手が、それを掴み上げる。
そして、垣間見る。
一秒、二秒、三秒、四秒── 視界を掠られるのみならまだ良かったものを、私の隣に
私は絶望した。絶望のあまり、使命の許されざる破綻を許してしまった。
「…………あの」
かろうじて絞り出した声を聞き、かの
そこに垣間見えた表情を見て、私は更なる絶望を覚えた。普段は関わりを持たなかった彼の者の口角が、僅かに吊り上がっていたからである。
心無き嘲りを覚悟した。口惜しいが歴史が潰えるよりは遥かに良い。
だが、奴はそれをせず、両の
「ボールペン、切らしたなら俺の貸すよ。あと、授業はあんまりサボったら駄目だぜ」
見開かれた私の目に、一振りの剣が映り込んだ。
「……あ、りがと」
私は虚ろな言葉と共にそれを賜ると、不可視であった溝に鮮明なる黒を注いだのであった。
明くる日の放課後、私は
私はその傍らで
知られざる創世主と不可侵なる呪文 憂杞 @MgAiYK
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