瑕疵物件

部屋に案内された俺は持ってきた荷物をおろしベッドに腰をかけた。

やっと一息つけるのかと思いきや、やはり先輩がやってきた。


「なに疲れた顔してんの?」

「いえっ、別に…。」

「そう?」


先輩が元気そうで何よりだ。

ところで、何故先輩はこの家に来たのだろうか?


「ところで、大丈夫?」

「大丈夫ですよ。」

「なんか変な感じしない?」

「変な感じですか?…う~ん、確かに違和感というかなんというか変わった所にこの家はありますよね。」

「そうじゃなくて心の方?」

「心?」

「そう精神は身体に影響を与えるものよ、大事ない?」

「なんともありませんが…。」

「…はずれか。」

「はずれ?先輩、何を言っているんですか?」


先輩はかなり変わった人ではあるが考え方はわりと普通だ。

なお、根拠は特にない。


「そうね…その…実はこの家瑕疵物件なの?」

「瑕疵物件?」

「ええ、今や日本中に存在している負の遺産。それが、瑕疵物件よ。」

「はあ…。」

「ようするに、幽霊とかお化けとか出るって言われる類の家のなのよ。ここ…まあ、メジャーではないけどね。」

「先輩がよく行く所ですね。でも、この家って誰か他にもいるんじゃないですか?勢津子さんだって居るわけですし…。」

「そうね、まずは何故この家が瑕疵物件なのかを教えてあげる。三か月前この家の主だった小説家林(はやし)丈朗(たけろう)が不審死したの…。」

「不審死…ですか?」

「ええ、でも警察の方では自殺とされたの。」

「それなら、瑕疵物件にはなりますけど不審死ではないですよね。」

「たしかにそうね、でも生前彼は交流のあったファンに手紙を送っていたの。それが、今回私が代わりにこの家に来ることになった言わば依頼人ね。」

「それで、手紙にはなんて書いてあったんですか?」

「…それは、ファイルで送ってあるでしょ?」

「あの『絶対に開けるな』ってファイルですか?」

「いいから見なさい。」

「はい。」


俺は恐る恐るそのファイルを開くことにした。

このまま、怖い先輩に嫌な顔をされながら見られるのは嫌だからだ。

スマートフォンを操作してメッセージアプリの会話ログから添付されているファイルを開いた。

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