無題

新月

第1話

駅の口が人を吐き出す



街灯の下、足早に歩く人の群れに、僕はそっと紛れ込む

肩を押さえて首をはねれば、透き通った血がぱっと飛び散る



周りの人は気にしない

誰もこっちを見ていない

街は透明な人で溢れてる



家に帰って夕食を作る

透明な人を料理する

透明な人は透明な肉に、そして透明な料理になる



つけっ放しのテレビの向こうで、紙がしゃべって衣装が踊る



朝がくれば、駅に電車がすべりこむ

イヤホンから出た音楽が、狭い車内を満たしてる



ホームの端から人が落ちる

電車がそれを撥ねとばし、速度を緩めず走ってく

黄色い車体にべったり血がつき、瞬きする間に消えている



仕事を終えた帰り道、誰かに肩を叩かれる

振り返っても何もない



あくる朝、僕は食卓に並んでる

僕は透明な料理になる

つけっ放しのテレビの前で、僕は誰かの肉になる

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無題 新月 @shinngetu

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