第12話 ボス戦4

強すぎる。

このボス、素早いし、見て分かる通り、魔力の量が半端ない。

こんなの絶対無理だ。

俺はそう思って、ボスを倒すのを諦めた。


その時、


「海也!お前はこのボスには敵わないからって、諦めるような貧弱者なのか!」

貧弱者って。

貧弱者か…

俺は、剣をボスの剣と交えて戦っていたオーラスに暗い声で話した。

「オーラス」

オーラスは剣を交えながら「何?」と返事する。

「俺はオーラスの言うとおり、敵わないからって、諦める様な貧弱者ではない」

オーラスは、

「良かったー、海也ならそう言うと思っていたよ」

と言って、ふぅと安心する。

しかし、その安心を俺が吹き飛ばすかのように、

「でもオーラス、今回は例外だ」

と、言った。

オーラスは、予想外の展開に、いまだに剣を交えてながらも、「えっ?」という表情になっている。

「今回は相手に敵わなさすぎる。なんせ相手は70レベルのボスなんだ。それにこの20レベル弱の俺勝てると思うか?答えはNOだ。こんなレベル差、チーターじゃなきゃ倒せねえよ。さすがにこの俺でも、そこまで段違いの相手に強さを分かったうえでまた戦いにいくほどバカではない。さあオーラス、このボスは俺たちには」

無理だ、と言おうとした時、オーラスは小さな声で何か言った。が、俺の耳には届かなかった。

「オーラス、今何か言ったか?」

俺はそうオーラスに問うと、

「何でだよ」

えっ?

すると、オーラスは剣でボスを退けて、

「何でだよ!!!!」

と、大声で、俺に向かって叫んできた。

なんでそんなに怒っているんだよ。

「ん、何がだ?」

俺はそう、とぼけた声で返信すると、オーラスは引き続き怒りながら、かつ、ちょっと泣き声で、

「海也、お前はとうとう本当に頭がおかしくなってしまったようだな。お前はさっき、ボスに挑む前、お前とボスのレベル差が50以上だと分かったうえでボスに挑もうって言ってたじゃないかよ。でもボスといざ戦ってみるとこうだよ。ボスに挑もうとは言ったんだけど、やっぱり強すぎるからって諦めるのかよ。早すぎるよ海也。まだ、ボス戦は始まったばかりだよ」

と、言った。

そしてとどめに、オーラスは呆れた顔でこう言った。

「お前ってやっぱり、ボスに敵わないからって、こういうようにすぐ諦める


貧弱者なんだな」


こうオーラスに度速球で言われた俺は…


もちろん傷ついた。

それと同時に、だいぶ話が反れるが、今ボスが、全速力で攻撃してくる。

オーラスは「危ない」と言っていたようだが、今猛烈に傷ついている俺の耳には聞こえなかった。

あと10メートル、


5、

3、

ボスは俺にどんどん近づいてくる。

そして後1メートルとなった。


その時!

俺の手が急ににょろにょろと伸びて、ボスの右腕をナイフでスパーンッと気持ちよく切断した。

ナイフであんなごつい手を切断するには、結構切れ味がよくないと切断できないはずなのに。

なので俺のナイフでは、あんなごつい手を切るなんてありえないことなんだけど、切れた。

しかもスパーンッと。

なんだかすごいストレス解消になった。

その切られた手は、剣を持っていた手だった。

そして剣は右腕と一緒に床に落ちた。

それからの数秒間、この部屋はシーーンと静まり返った。


「「えっ、えーーーーーーーーーーーーーーー!!!!」」

二人同時に驚いて叫んだ。

するとオーラスが、

「なんでお前まで驚いているんだよ。これ、お前がやったんだぞ」

と、言って、事故現場を指さした。

しかし俺は手を左右に振りながら、

「ち、ち、ちちち、違うよ。これは俺がやったんじゃない」

と、言うのも本当だった。

あの時、俺には意識がなかった。

つまり、その時の記憶は覚えていないのだ。

この時俺は、突然ボスの右腕が切られたということになっているのだ。

とりあえず、俺はオーラスにこのことを話した。

かったのだが…

このボス、なかなか話させてくんねえぇぇぇぇぇ!!

話す余裕なんてなかった。

右腕なくしてるくせに。

  


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体で戦う勇者は元引きこもり 肺のやつ @maradais

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