私的総力戦……

 

『『『フレーッフレーッ、ラッグッナッー! イッケイッケラッグッナッー! ワァァァァ!』』』

『……あの、うん、ありがとう。恥ずかしいからやめ……いやごめん泣かないで。応援して良いから……』


 アスターの応援団は気合いが入っているな。みんな思い思いの格好で応援して……凄く恥ずかしそうにしている仮面を着けたバニーガールの銀髪お姉さんが気になります。もしかしてコスチュームはくじ引きかしら。

 こっちの応援団はパンケーキ食べながらゆったりしているというのに……たまに出てきてね。


 《アスティ、我がナビをしよう》

 ルゼルおかぁさんありがとー。早速ラグナ攻略の指揮をお願いします。


 《まかせろ。まず、ラグナに弱点はあんまりない》

 それは覚悟の上です。戦闘スタイルは?


 《戦闘スタイルは、色々卑怯だ》

 それもなんとなく解ります。具体的には?


 《……うーん……なんでも出来る》

 そうですか、ありがとうございました。


 《うぅ…あすてぃ見捨てないで……》

 じゃあその都度解説とナビをお願いします。

 具体的な奴をねっ!


 まぁ、ママンが居るってだけで安心するし、危機対応してもらえれば少しは戦闘を長持ちさせられるかな。

 ラグナが長い髪を後で束ね、ポニーテールになった。

 ……ポニーテールになった。

 ……ポニーテール。

 《アスきゅんっ、呑まれちゃ駄目っ》

 ……はっ!

 あぁ危ない危ない。ポニーテール姿のラグナに見惚れてしまっていた。くっ、私の心を揺さぶるなんて中々やるではないか。流石は天異界総帥……私の弱点をいとも簡単に突いてくるとは……


『さて、準備は完了した。私に勝つという事だが、あいにく負けず嫌いでな……勝ちは譲らん』

「えぇ……その方が倒し甲斐がありますよ。世界魔法・黒異天体観測」


 先ずは、私の全力がどこまで通じるか。

 黒く揺らめく星々が周囲に展開され、等間隔に並ぶ。

 みんなの属性も合わさって前よりも数が倍だ。内包する力も、今にも破裂しそうな程に強い。

 これなら、戦える。


『見事なものだな……一つ一つが禁術級、か』

「行きます……黒異天体観測・第一波」


 危険な星々を一斉にラグナに発射。

 最初に光の星が着弾し、ソルレーザーが降り注ぐ。光を浴びてスポットライトみたいになって効果が無さそう。次に火柱が上がり、雷が落ち、隕石が墜ち、吹雪が発生。その中でラグナは頭の上と腰の辺りに手を置いた構えで静止……防御の型、か。

 ちょっと……不動過ぎない?

 防御硬すぎない?

 一ミリくらい効いてよ……ポニーテールすら動かないぞ。


『ぎゃー! 逃げるで逃げるでー!』『アレスティアちゃん飛ばしすぎー!』『あの、もぅ着替えて良い?』

『アイりんくじ引きなんやから我慢しぃっ! ウチなんてランドセルJSやでぇ!』

『テラそれ気に入っているじゃない』


 アスターのみんな楽しそう……更に冥の太陽が墜ち、超重力の星が墜ちた。燃える闇が押し潰される環境下……それでもまだ不動……その間にソルレーザーを巨大な魔法陣の形に配置。最大出力グランドエクスカリバーの準備に入った。


『ふふっ、更に違う魔法も展開出来るのか……』

「その防御崩してみせますよっ! エーリン! テンちゃん!」

 《はいー、鬼神拳発動》《ほーい、光速機動》


 拳に赤いオーラが溢れ、背中に光の翼を展開。翼が輝き……なんかジェット機構付きになっているのは目を瞑ろう。


「よっしゃぁ正面突破っ! 鬼神光速拳!」

『良い、若さだな』

 ──パシッ。

 ……うん、もう一回。


「おりゃぁぁ! 鬼神光速烈拳!」

 ──パシッ、パシッ。

 ……ちょっと、離れよう。落ち着こう。

 《アレスティアー、大樹に頭突きしてるみたいですー》

 《なんか優しく受けとめられちゃったー》


 私の光速突きを、優しく、これから手でも繋ぐように包み込まれて、勢いが止まった。

 コーデリア、解析出来た?


 《っ……お姉さまの力が、別の力に変換されています。吸収とは、違うのですが……》

 《あっ、そうだ。ラグナって他人の魔法や攻撃を自分の攻撃力や防御力に変換出来るんだった》


 早く言えし。

 えっ、じゃあ黒異天体観測って逆効果じゃない?

 《いや、連続攻撃や全体攻撃には弱いぞ。変換も万能じゃないからな》

 見た限り変換した力はラグナに加算ではなく、消費する訳か。

 でもこれが弱点になるかと言ったらならないな。加算なら自分の力を制御出来なくなるけれど、消費なら好きな時に使い捨てられる。


「もしかして、相手が強ければ強い程、強くなれる?」

『おっ、正解。私の力に気が付いたか』


「それがメインの力なら、勝利の糸口はありそうです」

『くくっ、そう思うのなら試してみたまえ』


 まだ、隠している力があるか。

 悪戯に笑う天異界総帥様……余裕な表情を崩さないから、攻めにくい。

 でも私の取り柄はゴリゴリの力押しっ!


「それならこれは、変換出来ますかねっ! ヘルちゃんっ! アテアちゃんっ! リアちゃんっ! ルナお母さんっ! エクスカリバー撃ちます!」

 《御指名ありがと、セイントフォース!》

 《えっ? わっちも? えーとえーとホーリィフォースっ》

 《アスきゅんの為にー、エンジェリックフォース!》

 《任せろ、ディヴァインフォース》


 神聖属性最大強化っ!

 ソルレーザーの魔法陣が天高く光を放ち、上空に超巨大な剣の切先が出現した。

 おーらいおーらい……あっ、これ私も無事じゃ済まないな。


『……素晴らしい。神級よりも上……銀河魔法に匹敵する、か』

「全力全開っ! 超神聖剣・エクスカリバー!」


 切先から直ぐに刀身が現れ、視界一杯の巨大な純白の剣が堕ちてきた。

 直ぐ様転移で遠くへ退避。

 うわぁー、でっかーい。いやまだ遠くへ転移しないとっ。


 《お姉さま、エリクサーを飲んで下さい》

「あぁそうだった。禁薬作成・エリクサーイチゴ味」


 魔力切れの心配が無いのは嬉しいけれど、今の内に力を溜めた方が良いかしら。

 近付く毎に魔力の波動が空間を揺らしながら、大陸のような死を超えた先を見せてくれそうな力が、裏世界に突き刺さった。


『大変換……武器作成』

 粉塵が舞い上がり、爆風が何処へ行っても襲ってくる。

 裏世界大丈夫かな、なんて心配してしまう程だ。大丈夫なんだけれど。


「……ぁ、ゃば」

 なんか、凄い悪寒がする。

 ここから逃げないと……いや、向かえ打たないと……危険だ。

 ルゼルおかぁさんっ!

 《アスティ上だっ! メガエナジー!》


『久方振りの、痛みを感じて、私は興奮しているのか……柄にもなく、剣まで持って……』

 遥か上空から落下……いや、私に向かって真下に走ってくる!

 なんだ……あの真っ白い剣。

 ちょっと待って……私の魔力、感じる。嫌な予感しかなぃ……


 《あっ、そうだ。ラグナは変換した力で武器も作れるんだぞっ》

「だから早く言えしぃぃーー! ダブルメガエナジー・フォースブラストぉぉぉぉ!」


 吹き飛ばせば、隙くらいはっ!

『耐えてみろ。天獄剣・無銘』

「……ははっ」


 思わず、笑ってしまうよ。

 ちょっと、格が違い過ぎやしないかい?

 ダブルメガエナジーと一瞬の拮抗をした瞬間に、コーデリアが強制転移してくれなかったら、致命傷で済んだのかわからない。


 《アスティ、大丈夫だ。ダメージはある》

「はぁ、はぁ、あれ? あの武器、消えていませんよ……」


 《まぁ、武器だから、作ったら壊れるまでだな》

「そぅ、ですか。テンちゃん、お月見ゼロアーマーよろしく」

 《ほいほーい。準備ばっちりんこだよー》


 銀色に輝くロボアーマーが出現し、スポッと装着された。これで、何撃か耐えられたら良いけれど……


『テラの時の、魔神装か』

「弱気になるな。封印解除・れべるわーん!」


 背面のジェット機構が光の炎を噴き、ボォォォ! と私の不安を吹き飛ばすように爆裂。

 まだ、始まったばかりだ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る