みんなに応援してもらえるなら、頑張れるよ
──ぴろりん。
たぶれっとに連絡が来た。
……あぁ、ラグナと戦う日程が決まったな。
緊張する。
「ん……? あれ? ここ、どこ? あっ、アスティちゃん」
「フラムちゃんおはよ」
「……んー?」
「説明するから、おいで」
「うんっ!」
目が覚めたフラムちゃんを抱き締めながら、寝起きの尻を触る。張りがあって素敵……それに比べて隣のたるんだ尻ときたら……
「アスティちゃん……フラムちゃんと比べないで……わかってる、わかってるから」
「チロルちゃん、どうせ今全身筋肉痛で動けないんでしょ? だからほぐしてやってんの」
「わかってるなら回復魔法してよ」
「チロルちゃんを甘やかしたら駄目になるって知っているから駄目」
たるんだ尻をペシペシして、その隣のふわふわの尻を枕にしてみる……夢心地。
「アスティちゃん……気が付いたらここに居たんだけれど、何か知っている?」
「うん、クーちゃんが起きたら説明するよ」
引き締まった小尻をつんつんしていると、クーちゃんがゆっくり目を覚ました。辺りを見渡し、自分の身体を確認するように触り始めた。
「レティ、私……どうしていたです?」
「おはよ、説明するね。みんなの中に、とても偉い女神様が来たの」
「女神様?」
「天異界同盟の話は知っているよね? その序列一位の女神様達が遊びに来たんだけれど、みんなの身体を借りたの。つまり女神様に選ばれたって訳ね」
「えっ、私なんかで良いの?」
「親和性が高い人って言っていたけれど、私の魔力を受けたから親和性が高くなったんだろうね」
「それってつまり、どういう事?」
「みんなは、女神の依代……神子とか神巫女の類に位が上がったんだよねー。序列一位の女神様の眷属と言った方がいいかな」
みんな首を傾げて、困惑と混乱をしているみたい。
最高位女神に選ばれた人だから、天使と同列というか……凄い人になったという事だね。
まぁ私からみたらお友達だから接し方は変わらないし、いつも通りに過ごして構わないけれど、たまに身体借りるよって所で……もちろんお礼代わりにみんなの力は上がっている。なんか凄い能力アップして引くくらいだね。
「なんかよくわからないけど、女神様に選ばれたって事だねっ」
「うん。それでね、今度その最高位女神様を束ねている女神様と戦うんだけれど……お願いがあるんだ」
「なんでも言って。アスティちゃんの為ならなんでもするわ」
「レティの為なら良いですよ」
「へへっ、ありがと。みんなには私の戦いを私の中で見届けて欲しいんだ」
「アスティちゃんの……」「中?」
「憑依合体っていう魔法で、私の中にある世界に行ってもらいたい。数日だから、良いかな?」
「うんっ、騎士団に休むって言って来るねっ」「私も休むって言ってくるわ」「私もです」「私は、まぁ今でも良いかな」
「流石チロルちゃん、予定が無いって素晴らしいねっ」
「いや一応あるけど、私が数日居なくても誰も気付かないんだよね」
言っていて切なくならない?
学校ではカースト下位のエアーチロルだもんね。
という事でみんなの準備が終わり次第憑依合体した。
後は……裏世界に行って、現地でコーデリアと合体したら完了かな?
準備万端にしておかないと、瞬殺だってあり得るし。
因みに戦う場所は、裏世界。どんなに破壊しても再生するらしいし、思い入れの多い世界だから、最終決戦に相応しい場所だよね。
「……時間まで何しようかな」
《アスティ、みんな中で応援の準備をしているから、一度来たら?》
「うーん……大丈夫。見守ってもらえるなら、心強いし……多分行ったら遅刻するし」
《まぁ、そうね。じゃあちょっと行くわ》
ヘルちゃんが出てきてくれた。
うーやっぱり寂しかったから嬉しい。
ギュッて抱き締めたら、頭を撫でてくれた。
「ヘルちゃーん」
「よしよし、いつの間にかこんなに凄い事をして……いつか遠くに行ってしまいそうね」
「行かないよ。ヘルちゃんは私の隣に居てもらうんだから」
「それなら、私のお願いも聞いてね」
「なぁに?」
「負けちゃ、駄目よ。勝って望みを叶えなさい」
「……ぅん」
「本当は、解っているのでしょ? 勝つ為にやるべき事」
……まぁ、そうだね。
私は今、魂が分離している状態だから心の揺らぎが大きい。
それに負の力も使わないと、勝てる望みは無い。
ヘルちゃんが私の首に掛かっている、修羅の世界が入ったネックレスに触れた。
「不安なんだ。私が私で居られなくなりそうで……」
「大丈夫。貴女の愛は、どんな世界も救えるの。誰にも出来ない事が出来るんだから、もっと自信を持ちなさい」
「……自信、か。やってみる」
「やってみるじゃ駄目よ。絶対勝ちなさい」
「はははっ、わかった。絶対、勝つよ」
私が絶対と言うと、満足そうに微笑んでいた。
そうだよな、勝たなきゃ駄目だ。内容がどうとか甘い事は言っていられない。
みんなが見守ってくれるのなら、怖くないし……あっ、ミズキも誘うか。
「あと、やり残した事は?」
「んー……無い、かな」
「あら、私とデートしてくれないの?」
「それはこれからしようと思っていたのっ」
……きっと、最後の戦いが本当の本番なのだろうな。
……緊張と、不安と、少しの期待を感じながら、日常を過ごした。
……数日後、ジョーカー戦最後の戦いがやって来た。
「ここ、だよね?」
記載されていた座標に来てみると、何も無い荒野の中に一軒家が建っていた。
絵本に出て来るような赤い三角屋根の、小さな家。
その家から、まるでこれから散歩にでも行くような軽い格好のラグナレヴィアが出てきた。
ここは、誰の家だろう。ラグナの? でも天異界総帥が裏世界に家なんて……
『やぁ待っていたよ。アレスティア』
「よろしくお願いします」
『コーデリアも、そろそろかな』
次元の揺らぎが発生し、コーデリアがやってきた。酷く緊張した表情で、細く深呼吸をしていた。
「ラグナレヴィア様、よろしくお願いします。お姉さま、昨日眠れませんでした……」
「私も緊張しているよ。あのさ、今回は……私に任せてくれないかな?」
「一緒に、戦うのでは無いのですか?」
「うん、憑依合体で私の力になって欲しい」
「なるほど……私はサポート特化ですから、その方が効率的ではありますが……」
コーデリアがラグナを見ると、私達を微笑ましく見ながら好きなようにしろと肩をすくめた。戦い方は自由って事でいいのかね。
「良いみたいだから、頑張るよ。憑依合体」
「御武運を」
コーデリアと憑依合体して……禁薬作成は出来そう。これならエリクサー作成で燃料切れは無くなる。
《っ! お姉さまっ! ゼルムーちゃんが可愛いですっ!》
《んもぅっ、コーデリアお姉様も可愛いですわっ★》
「……コーデリア、ごめんね」
《えっどうして謝るんですか?》
「いや、なんとなく……」
とりあえず脳内でコーデリアがみんなに挨拶を始めたので音声オフ。
三角屋根の家を背景に、私とラグナが二人きりで対峙した。
『さて、準備は良いかな? 私の準備はこれからだが……二人きりというのも寂しいかと思って、アスターの応援団を連れて来たんだか……良いかな?』
「えぇ、構いませんよ。私の応援団は私の中に居ますので」
『ありがとう。裏世界集団転送』
ラグナの手のひらから黒い魔法陣が出現し、後方の家の前にアスターの女神達が転送されてきた。フラマやヴェーチェ、アクア、テラが私に手を振り、ノワールさんと他の初見の人達も見える。アスターの神と眷属や補佐達か……みんな強そう。にしても女性率高いなぁ……
「さて、戦う前に質問です。コーデリアの罪は軽減しますか?」
『あぁ、執行猶予付きでアスター所属を条件になら自由になれる』
「はぁ……安心しました。頑張った甲斐がありましたよ」
『と言っても、この戦いである程度戦績を残せたなら……だがな』
「もちろんっ! 貴女に勝ってみせますよっ!」
『……くくっ、私に勝つ……か』
──ぞわっ、と全身に鳥肌が。
威圧だけで、ここまで差を感じるのか……身体が、震える。
「……流石、天異界総帥ですね。強さの次元が違います」
『どんな手を使っても良い。もちろん、星の力もな』
「じゃあ、お言葉に甘えましょうか……」
ちょっと、まずいなぁ。
強いどころじゃないかも。
でも、勝つんだ。
見ていてね、みんなっ!
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