もうっ、折角来てくれたからねっ、おもてなしだよっ

 

 パンパンに戻って来た。

 しーんと静まり返ったお店の中を見渡し、幼女が居るであろう二階に上がった。

「しくしく……」幼女のすすり泣く声が聞こえてきた。きっと自分だけ置いてきぼりにあって悲しいのだろう。

 そーっと扉を開けて、幼女の様子を覗いてみた。


「どうして、どうして、誰もおらぬのじゃ……またわっちを置いて旅行に行ったのかえ……ふぐぅっ……」


 ガチ泣きしているから、様子を見てみよう。

 きっとご飯の注文をしても中々来ないから下に行ったら誰も居なくて今いじけているという状態か。

 白いワンピースがずり上がってパンツ丸見え……また誰かのパンツ履いてんな。あのパンツは……またチロルちゃんのパンツか。


「……アテアちゃん」

「っ! ぁ、ぁ、アレスティアーーーー!」


 鼻水びたびたの幼女がバッと起き上がって抱きついて来た。嬉しかったみたいで、鼻水を私の服でゴシゴシしている。にしても寝癖酷えな。ロングヘアーがボサボサじゃねえか。

 櫛を出して、幼女の髪を解いてあげた。


「ずっと寝ていたんです?」

「世界が滅びてから、ふて寝しておったんじゃ。ルゼルのせいで余計な仕事増えての……悲しいねん」


「クリームパンが歴史に刻まれましたからね。そうそう、みんなは私の中に居るんですがアテアちゃんも来ます?」

「行く……家にカップ麺あるから収納しての」


 仕方ないな。幼女の家に行き、カップ麺や冷凍食品を収納。ついでに作業場に居たイッきゅんを発見。


「イッきゅんっ合体しよっ?」

「んー? 良いよー」


 二つ返事で了承してくれたので、憑依合体した。

 なんかどんどん強くなっている気がする。


 《あっママー、サティさんがママと連絡付かないからいじけてるよー》

 《駄目よ。ここを知ったら間違いなく来るわ》


 《あ、うんそうだね……ここって、控えめに言って楽園だもんね……》


 私も楽園を堪能したいのに、私の中だから行けない……ぐすん。魂転移で行けるけれど、その間誰かが私の身体の主導権を握るから怖いのよ。


 《アレスティアー! 大変じゃー!》

「どうしました?」


 《アラスが神不在の状態になって天異界から連絡来たのじゃ。なんとかしての》

「なんとかって……じゃあ戻ればいいじゃないですか」


 《それ以外っ!》

「えー、垂れ流している神気だけを次元転移させてアテアちゃんの家に出す以外にあります?》


 《よろしくのっ!》

「じゃあ一回出て下さい。難しいんですから」


 幼女が仕方ないという表情で出てきたので、抱っこして座標を組みながらパンパンに戻って……誰も居ないから外に出て誰か合体出来る人でも探そう。

 パンパンを出て、大通りを見渡す。相変わらず人が多い事……私は可愛いから注目されるね。

 フラムちゃん達居ないかなぁ……魔力探知を広げて確認……フラムちゃんは騎士団本部か、ミーレイちゃんは家に居る。クーちゃんも騎士団か……

 チロルちゃんは近くに居る? おっ、近付いて来た?


「アレスティア、新作パンケーキが待っておるから一旦帰るぞえっ」

「座標は大体組んだので良いですよ」


「引き留めんのかっ」

「寂しかっただけです。もうすぐお友達が来るので良いかなって」


「ふぐぅっ! 泣いてやるのじゃ!」

「はいはい行ってらっしゃい」


 幼女を送還した所で……キョロキョロと辺りを見渡しながら大通りを歩くチロルちゃんを発見。

 ん? いつも猫背で陰気なのに背筋がピンとしている……どうしたんだ?

 ……目が合った。なんか、ぶんぶん手を振って嬉しそうに駆け寄ってきた……いつもなら周りを警戒しながら近付くのに、今回は周りに目もくれない。何か良い事でもあったのか? いやチロルちゃんに限って良い事なんて事は無い。

 良い事があっても隠すタイプだ。ならどういう事だ?


「アレスティアー!」

「ん?」


 思わず木剣の切先をチロルちゃんに向けてしまった。

 彼女は私をアレスティアなんて呼ばない……誰だ?

 チロルちゃんが急停止……警戒する私に向かってニンマリとした笑顔を見せた。この笑顔、何処かで……


「なんやつれないなぁ、折角アレスティアに会いにきちょったんに」

「……テラ、さん?」


「なははっ、解ったかいなっ。直接来れんで親和性の高い人間の身体を借りてなっ! にしても運動不足の身体やんな、今ので息切れしてもうた」

「その子は食っちゃ寝生活で尻が弛んでいますからね」


「なんやこの子知っとるんか? なら話が早い、ちょっと話さへんか?」

「良いですよ。中に入りましょうか」


 ふむ、チロルちゃんの身体を借りて、アスターから遊びに来たとの事。

 チロルちゃん自体は眠っている状態みたいな感じ? らしい。

 わざわざ会いに来てくれるなんて嬉しいな……

 パンパンのカウンターに座ってもらい、折角なのでパンケーキをご馳走してあげよう。カロリーは全てチロルちゃんに行くから、運動しないと太るね。


「ここで働いておるん?」

「いえ、ここを自由にして良いと言われているので……イリアス・ヴルー・クロスハートさんのお店ですよ」


「あぁ聖女協会の会長やんな。おっ、ありがと」

「聖女協会なんてあるんですね。御代わりしても良いですからどうぞ召し上がれ」


 聖女協会か……これは是非会長さんに聖女様を紹介……はっ、ヘルちゃんの殺気。あっ、ヘルちゃんもそこに所属しているの?

 《していないわよ。初耳だもの。聖女は駄目よ、私だけにしないと許さないわ》

 ごめりんこ。


「んぁっ! うまいなぁっ! ウチ甘い物に目が無いんやっ! ありがとうっ!」

「どういたしまして。じゃあこれもどうぞ」


 テラにクリームパンを渡して、嬉しそうに食べているのを眺めているけれど、顔はチロルちゃんだから変な感じ。


「あぁそやっ、なんやこの子アレスティアの事好きやんなっ。ウチも同調してヤバいねん」

「食べ終わったら、します?」


「ええんか?」

「はい、その子……チロルちゃんには何回かハードプレイしていますから」


「えへへ……緊張してきたん」


 ……可愛い。

 ほっぺに生クリームを付けて、恥ずかしそうに上目遣いなんてされちゃあ……ね。

 テラが食べ終わり、食器を片付けてほっぺの生クリームをぺろっと舐めた。そして生クリームを舌先に付けたまま舌先をテラの唇に近付けると口が開き、舌を出してくれたので生クリームを絡めながらキスをした。

 甘いキスに、テラの瞳がとろんとしてきたので……私の部屋にゴーしよう。


「今度は、本当の身体でしましょうね」

「ぅん……アスターに、来てや……おもてなし、するから」


「はい……猫耳で、是非」

「……ええで」


 猫耳の約束を取り付け、私の部屋にお持ち帰り……

 ……

 ……身体はチロルちゃん依存だから性感帯とか、一緒になるのか?

 ……試してみよう。

 ……うん、一緒みたい。

 ……じゃあハードプレイ出来るねっ。

 ……あぁ金色猫女神としたいぜっ。


「……あっ、私のお友達が来たみたいです」

「はぁ、はぁ、はぁ、おとも、だち……?」


「フラムちゃんとミーレイちゃんとクーメリアちゃんです……この部屋に来たみたいですね」


 ──コンコン、とノックされたので、どうぞと言うと扉が開いて……


「アレスティアっ、来てやったぜっ!」

 ガハハと笑うフラムちゃん……なんか見覚えのある笑い方だな。


「みんな居るし、結局こうなの?」

 拗らせていそうな表情のクーちゃん……うん。


「折角だから私も来ちゃったー。初めましてで良いのかしら?」

 ミーレイちゃんの色気三倍増し……話すのは初めてですね。


「なんやみんな来よったんか。ふっふっふ、ウチが一番乗りやなっ!」

「誰かと思ったらテラかっ、ん? 服着てない……まさか……」

「えっ、もうそんな仲なの? 嫉妬凄いんだけど……」

「あらー、私も仲間にいーれて」


 フラムちゃんの身体を借りたフラマと、クーちゃんの身体を借りたヴェーチェと、ミーレイちゃんの身体を借りたアクア……アスターの女神が集合したよ。

 何してんのさ。


「ここ、狭いんで移動しましょうか」


 もうっ、仕方がないなぁっ!

 ラブホ行くぞラブホっ!

 あっ因みに私の部屋にあるボタンを押したらラブホに行けますよっ!

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