惚れっぽいと言われようが、可愛いには抗えんのよ

 

 ん?

 んんん?

 んんんんんんんんんんんん!?


「おかぁさんっ!」

「あ、あすてぃおかえり……」


「何隠したんですか!」

「えっ、いやっ、何も?」


「嘘です! 見ました! 見ましたよ! おかぁさんを小さくしたような美少女をっ!」

「……気のせいだろ?」


 ルゼルが慌てて美少女を隠したのをしっかりと見たよ!

 私に黙って美少女を連れてきたのか……否っ! 私の美少女センサーが反応しない美少女なんて居ない! 人形作成で美少女を作ったのか? どうなんだ? あん?


「……ルゼル、言わないとアレスティアが怒るぞ」

「そうですっ! 言わないと家出してやりますからっ!」

「ぐぅぅ……実はな……」


 ルナリードがため息を吐きながら、早くしなさいというように手を振り、ルゼルがキッと睨んだ。喧嘩は駄目よ。

 ルゼルが酸っぱい梅干しを食べたような顔で、大きめの箱を見せてきた。

【天異界分体キット】……?

 骨組みドールの表紙に、分体を簡単に作成出来ると書いてある……分体?


「分体って、ルゼルおかぁさんの分体ですか?」

「あぁ、これが無いと駄目らしいんだ」


「駄目って、何がですか?」

「……次章で使う」


 次章言うなし。

 とりあえず見せない。黒翼黒髪ロングの美少女を拝ませなさい。


「……おかぁさん、見せてくれないとガチ泣きします」

「……恥ずい」

「どうせ誰かが見るんだから見せてやりなよ」


「泣きますよ? 泣きますよ? ほら、涙が出てきました。ぅっ、ぅっ、うぇぇぇぇぇええん!」

「わっ、わかった。わかったから泣かないで……」


 ルゼルが美少女を出してくれた!

 もうっ、最初から出してくれたら良いのにっ。ママン大好きー!

 おー……歳は私よりも下……八歳くらいか?

 ツインテールにゴスロリスタイル……控えめに言ってめちゃくちゃ可愛い!

 ちっちゃいルゼルだぁー、可愛いー、なでなでしたいー、抱き締めたいー……おっ? 動いた?


『もぅっ、お母様ったら急に収納しないで下さいっ。お髪が乱れてしまいましたわ』

「……ぁぁ、すまんな」


 ……ん?


『この御方はどなた様ですか?』

「……さっき話した、アレスティアだ」

「……」


 なんだ、この、雷に討たれたような、胸を貫かれるような感覚は……

 ルナリードが両手で顔を隠してぷるぷるしている……笑っているのね。分体だからルゼルと同じような性格になるのにルゼルが作ったからバグったのね。


『まぁっ♪ この御方がわたくしの御姉様なのですねっ』

「紹介、する、ルゼルムーア、だ」


『ゼルムーと呼んで下さいましっ☆ アレスティア御姉様、宜しくお願いいたしますわっ♪』

「あっ、よっ、よろ、しく、お願いします」


『あら御姉様、どうされたのです?』


 ゼルムーちゃんが、私の目の前で自己紹介し……私は口ごもってしまった。

 だってよ……可愛いんだよ……普段ぶっきらぼうなルゼルが小さくなってこんなお嬢様になったんだぜ……それに私の妹なんてよぉ……コーデリアすまん……お姉ちゃんは浮気する……ゴスロリツインテルゼルなんだ……すまん……許しておくれ……


「ルゼルおかぁさん……分体キットをもう一つ買って、この子を私に下さい」

「駄目だ、我が寂しい」


「分体に嫉妬しないで下さい」

「アレスティア、このキットは一神一個なんだ」


「一神一個? じゃあ、ルナお母さんの分体もあるんですか?」

「私のはもう少しで来る。恐らく私は私のままだがな」


 ルナリードは少女だから、分体キットを使ってもそのまま……という事か?

 にしても分体キットってすげえな。質感が女子だぞ……つんつんつんつんつんつんつんつんつんつん。

 ホムンクルスみたいな感じか? 人体構造が気になる気になる気になるさー。

 つんつんつんつんつんつんつんつん。

 ほっぺ、肩、おっぱい、尻、黒翼、お腹、スカートの中も……


『やっ、御姉様っ、だめっ、れすっ』

「くぅぅ……おかぁさんっ! 可愛い過ぎて私の中の私が暴れ狂っています!」


 私の中に居るみんながわーきゃー叫んでいるのよ。ゼルムーちゃんコールが鳴り止まない。


「いや、連れて行かれると我が困るんだよ」

「じゃあ私の部屋でゼルムーちゃんを愛でようと思います」


「まだ調整中なんだ。ゼルムー、おいで」

『はいお母様っ!』


 くっ……ルゼルにおいでされているゼルムーちゃんに嫉妬して、ゼルムーちゃんを一人占めしているルゼルに嫉妬している!

 ルナリードを抱っこしてこの嫉妬心を沈めよう……あっ、ルゼルがルナリードに嫉妬し始めた。


「アレスティア、そういえばなんか色々混ざった魔力だな……合体か何かしているのか?」

「流石ですねー。今知り合いを集めて合体中なんです。戦力強化というやつです」


「ラグナレヴィアと戦うのだったな。何人合体したんだ?」

「まだ二、三十くらいなので、お母さん達もどうかなーって」


「……大丈夫なのか?」

「はい、容量は百人だと思うので。合体したらその人の最たる能力を使えるんですよ」


「なるほど。どうやって合体するんだ?」

「ちゅーした事ある人なら魔法でぽんっと出来ます」


 そういえば、ルナリードとちゅーってした事無いのよね。

 真後ろで聞いていたルゼルが私の服を引っ張って早く早くとおねだり中……ゼルムーちゃんともちゅーしないとねっ!


「あすてぃと合体したい」

「はい、憑依合体」


 ルゼルと合体してみた……ついでにゼルムーちゃんも合体しちまった。くそ……あっ、ヤバい。

 力が抑えきれん。

 ぽんっと黒い翼が生えた。

 リアちゃんが堕天使アスきゅんとゼルムーちゃんと発狂しながら叫んで、みんなもそれぞれ発狂中……ふむ、私の可愛いさ倍増したな。ゼルムーちゃんの特徴が可愛いという事か……


「アレスティア……私も、ちゅ、ちゅーしたら合体出来るのか?」

「出来ると思いますよ?」


 抱っこしている白い少女の唇をじーっと眺める。

 ルナリードってルゼルよりも親感あるから、性的な興奮って感じていないんだよね。だからちゅーとかしなかったけれど、したかったと言えばしたかったから、良い機会だと思って……


「……んっ」


 唇を重ねて……ん? ルナリードの場合……ちゅーだけじゃ合体出来ない気がしてきた。もしかしたら、強い人程ちゅー以上の事をしないと合体出来ない?


「ルナお母さん、大変です」

「ど、どうしたんだ?」


「エッチしないと合体出来ないみたいです」

「えぇっ!?」


「無理強いはしていないので、機会があればという事で……」

「えっ……い、いやしようっ! あれ? じゃあルゼルともしているという事か?」


 そこら辺の事情、言っていなかったっけ?

 にこりとしたら、少しショックを受けたような顔で……私を押し倒した。

 ……

 ……

 ……全年齢版って自主規制入れないと怒られるから物足りないよねー。

 ……かと言って、自主規制無しだったら物語が進まない問題があるのよ。

 ……

 ……うん、合体したよ?


 さて、次なる目的地は……あれ? 幼女どこ行った? あっ、幼女の部屋か。仕方ない、パンパンに戻るか。


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