これは、戦力強化になるのかしら
ゆっくりと、動いているのかさえ解らない程にゆっくりと、周りの景色が動くパンパンの中で、パンケーキを食べている私……現在エーリンを捕まえたリアちゃんが憑依合体で私の中に居る。
《アスきゅんの中ー、嬉しいなー♪》
《てんちょー、帰って良いですかー?》
《この世界の調査が終わるまでだーめー♪》
《世界ったって小部屋ですよー。あれー? テンテン消えましたー》
《リンリーン、ここだよー!》
《あっ、海ですー!》
《世界を創る概念は……ぅゎ……何これ……すごっ……》
外見は桃色の髪に、鬼の角と妖精の羽はあまり変わらず、変わった所と言えば瞳が紫色になり魔法陣が刻まれたくらい。
時の魔眼を装着したので、時の桃尻鬼妖精アレスティアに変身したのだっ!
「ところでこの魔法…タイム・アクセラレーションってどんな制限があるんです?」
《時間魔法に慣れてるかによって使える魔法が違うかなー。私は慣れてるから色々出来るけど……アスきゅんは良いとこ下級かなー》
「へー、凄い魔法ですが消費が激しいので、決戦向きかと言えば難しいですね」
《魔法陣技術が高ければ、時間を加速した状態で立体魔法陣も組めるし、神級魔法も放てるよ》
「魔法陣って苦手なんですよねー。得意な人と合体したら出来ますかね?」
《きっとその人の最たる特性ならねー。今のアスきゅんは私の時間属性しか使えないでしょ?》
「そうですね。神聖魔法とかは使えません……あっ、聖女ヘルちゃんと合体すれば神聖魔法が使えるかもしれません」
よし、そうと決まればヘルちゃんをさわさわ……間違えた合体する為に尻を触りに行こう。
パンパンのホールを見渡し、私を見ているツインテールを発見。
近付いて、じーっとヘルちゃんを見詰める。今ヘルちゃんは急に現れた私にびっくりしているのだろうか……いやまだ認識していないのかもしれない。
先ずは顔を近付け、唇を重ねた……うーん、時間加速中だからなんか感覚が違う。
尻を触ってみよう。さわさわ……さわさわ……うん、いつもの尻だ。
合体したいけれど、同意が必要か……時間加速を解除しよう。
「……アスティ、今日も可愛いわね」
「ありがちゅ、ヘルちゃんもねっ」
「で? 何か頼み?」
「うん、合体しよ?」
「……ここで?」
「裏で」
「そういえばリア店長の目にそっくりね……なるほど、興味あるわ。行くわよ」
ヘルちゃんがノリノリだ。正直断られたらどうしようって思っていたんだ、よかった。
バックヤードへ行き、ヘルちゃんに魔力を通す。憑依合体の理論はリアちゃんが解析してくれて、憑依合体魔法を作ってくれたのだ。
「じゃあ行くよー。憑依合体」
シュンッとヘルちゃんが私の中に入っていった。
その隙に誰かが入った気がするな。ところで一体何人合体出来るんだ?
《ここがアスティの中ね……散歩してくるわ》
いってらっしゃーい。
《アスきゅんって百人の美少女から生まれたから、容量は百人くらいじゃない?》
「あぁなるほど……この憑依合体って条件なんです?」
《解析した感じなら、ちゅー以上すれば条件は満たせると思うよ》
「それは……みんな合体したがりますね」
《一回試してみよ? 今パンパン閉めるから》
「別に夜でも良いですよ」
リアちゃんが出て来て、看板を片付けて終わる準備。勝手に出られるのね。
まだ並んでいますが、閉店なのね。
パンケーキ一枚サービス券を配る辺り慣れていらっしゃる……
しばらくして、お客さんは居なくなった。
そしてリアちゃんが腰に手を置きながらパンパンのみんなに説明……みんな一度部屋へ戻り、荷物を持って戻ってきた。
何泊する気なのかしら。
「じゃあみんな集合ー、はいっ、憑依合体」
シュンッとみんな私に溶け込むように消えた。すげぇな憑依合体……
《お邪魔しまーす》《あっ、海ですよー》《お花畑もあるー》
《みんなのお部屋作ったからそこに荷物置いてねー》
《はーい!》
……えっ、楽しそう。
……えっ、今ぼっちなんですけれど。
……えっ、私はどうしろと?
《アスきゅんは自由に過ごしていいわよー》
《アスティさんのプライベート丸見えですねー》
恥ずかしいじゃん。
特にトイレとか恥ずかしいじゃん。
あとアレも恥ずかしいじゃん。
《アレスティアー、そろそろ帰って良いですかー?》
「えー、ジョーカー戦には来てよ」
《じゃあ裏世界に居るので迎えに来てくださいー》
「はいはい。あっクーリンさんに鬼神拳奥義教えてもらってきてー」
《はいー。じゃあ皆さんごゆっくりー》
《エーリンちゃんまたねー》
エーリンが去っても姿は変わらないというか、今の私の姿はゴタゴタするのが嫌なのでデフォルトに戻っている。
久し振りのノーマルアスティちゃんだ。
《ねぇアスティ、ジョーカー戦ここで観戦しても良い? 応援したいの》
「うん、嬉しいな……あっそうだ。みんなも観戦して欲しい。応援してくれたら頑張れると思うからっ」
《もちろんっ》《他のみんなも誘おうよー》《さっきチロルちゃん来てたよ》《全員呼んでも大丈夫そうねっ》
私の中も賑やかになったな。
これからフラムちゃん達や母達と、幼女も呼ぼう。知り合い全員合体すれば戦力強化間違いなしだ。
ズルじゃないよ、戦略だよっ。
これで、みんなの応援があればラグナに勝てそうな気がする。多分。
よし、とりあえず母達に会いに行くか。
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