まぁ、うん、好きにやれば良いと思うよ。私も好きにやるから
『なんや……あれ……』
《じゃじゃじゃーんじゃーん》
《ひびけー、わたしーのハァートー》
「私の魔神装機・アレスティンカイザーです」
光のカーテンから降臨した我らがアレスティンカイザー。
前回の全高二十メートル超から少し縮み、十メートルに程の黒光りするメタリックボディ…ゴツゴツとした重厚な脚部は細身になっていた…背面部にジェットエンジンを搭載し、更にメタリックな爪のような翼が放射状に八本あり蜘蛛みたい…両肩の大砲は内蔵型になり……頭部はフルフェイスの兜で女性型の鎧騎士のような細身のシルエット。装備している黒光りする立派な巨大マグロは前よりも生き生きとしていた。
『嘘やろ……ルナちんのルナカイザーよりカッコ良いやんか……』
《ドゥドゥドゥドゥーん》
《轟けー、わたしーのソウルふるえなじーっ》
うるせえにゃんもふの主題歌歌うな。
エーリン私の頭の中で伴奏しないでよ。
「ルナカイザー?」
『あぁこっちの話や……いやぁ、無茶苦茶格好ええなっ』
「前は顔が猫だったのでアレでしたが……」
格好良いな。
マグロ以外。
完璧だな、マグロ以外。
──ビチビチッ! ビチビチッ!
跳ねんな。
『ニャートラ、きばりやぁ』
『ニャーートラ!』
「体格差ありますね」
『まぁ見とき』
ニャートラが立ち上がり、尻尾を立ててニャーニャー威嚇し始め、黒い稲妻がニャートラに墜ち……
『ニャートラ!』
おっきくなったー。
ニャートラおっきくなったー。
わぁーもふもふしたぁーい。
「テラさんっ、もふもふしたいですっ!」
『なははっ、後でな』
《アレスティンカイザーっ! きゃのん準備っ!》
会話の途中で空気を読まないアレスティンカイザーの肩がカパッと開き、先端の丸いレーザー射出装置が現れた。そこから黒いエネルギーが集まり、甲高い音を響かせていた。
『ニャートラ!』
おっきくなったニャートラが口を開け、アレスティンカイザーに向けると……黒い、破壊のエネルギーが集まってきた……ぅぁ…まじか、ニャートラも破壊属性持ち……
《しねー! アレスティンきゃのんっ!》
『ニャー……トラァ!』
──ドォォォオオ!
アレスティンきゃのんとニャートラの破壊光線が衝突。
拮抗するように衝突点が球状に膨らみ、衝突の余波で乱気流が発生。テラも包むようにダメージゼロ結界を展開した。
《やるねっ! アレスティンカイザー追撃っ!》
アレスティンカイザーが手に持つマグロをぶん投げた!
グルングルンと回転するマグロが破壊光線の横を通ってニャートラに直撃……
『ニ"ャー!』
食べたー!
私のマグロー!
《ちゃーんす! 封印解除れべるわーん!》
アレスティンカイザーの翼から光の炎が勢い良く吹き出し…アレスティンきゃのんの威力が増大した。
拮抗していたエネルギーの球体がニャートラの側に行き……
『ニャニャっ!?』
大爆発を起こした。
暴発したエネルギーが螺旋を描き、天に昇っていく。
《はっはっはー! モード天王!》
光の炎が揺らめき、アレスティンカイザーを白く染め上げる。
白騎士…テンちゃんモードかっ! すげー!
追い討ちかっ、流石血も涙も無い光妖精の王様っ!
『はは……こりゃ凄いな……ぞくぞくしよる』
アレスティンカイザーの背面ジェットが稼働。
光速でニャートラを通り過ぎ……?
奥の戦場に突っ込んで……?
《アレスティンぱーんち!》
側面からノワールさんを……
「えっ……────」
ガチ殴りした。
……今、凄い音、したよ?
全身の骨がバキバキになる音と、色々潰れる音……
《鬼ですー》
鬼に鬼って言われるくらい鬼畜な所業。
「あの……お姉さま?」
コーデリアも引いている。拳から滴る血を見て引いている。
あのさ、それはいくらなんでも駄目だと思うよ。生身の人にロボでガチ殴りとかさ、いやルール違反じゃあないけれどさ……道徳ってあるじゃん?
《はっはっはー! 封印解除れべるつー!》
聞いちゃいねえ。
翼の白い炎が深紅の炎に変化……そして、アレスティンカイザーが血のような赤い鎧に染まった。
『ニャートラァ!』
顔に傷を負ったニャートラが上空からアレスティンカイザー目掛けて鋭い爪を振り下ろす。
《甘いねぇ! 甘々だねぇ! カフェオレにクリ◯プ入れるくらい甘々だねぇ! モード鬼神!》
深紅の炎が勢い良く燃え上がり、ニャートラの前足を腕で払いのけ……がら空きの喉元を掴んで地面に叩き付けた。
そして、アレスティンカイザーが拳を握り構える。
『……』
「……そろそろ、決着ですかね」
《天の拳…光勁……》
立ち上がったニャートラの顔面に光のエネルギーを纏った右拳を叩き付け怯ませた……
『にゃ……ぐっ……』
《奈落の拳…闇勁……》
怯ませ、動きが止まった所を闇のエネルギーを纏った左拳を叩き付ける。
『あの…技は……』
あれは…鬼神拳奥義、絶紅の構え……
光と闇のエネルギーが凝縮……
《なんちゃって鬼神拳奥義……天獄》
天と地、両方から襲う最大出力のエネルギー……
ニャートラのお腹から背中まで拳が貫通している気がするけれど、気のせいに思いたい。
《テンテン格好良かったですー》
《えへへ、張り切ったのー》
返答は可愛いがな、虐殺めいた戦いをありがとう。
『ええな、ええな、ニャートラはムドゥインと互角やっちゅうのに、それを軽く超えてきちょる』
「残るはテラさんですよ」
『そうやな。やるか。でもノワール可哀想やからちょっと待ってな』
「あぁ、即死でしたもんね」
ノワールさんが不憫でならない。見せ場なんてサヴァくらいだったし婚期遅れているし……今度優しくしてあげないと……
テラが虐殺現場に行って、何かを振り掛けるとノワールさんが復活した。復活の過程はあれだったので省こう。
「ぁ……すみません油断しました」
『あれはしゃあないな。よっしゃコーデリアもお疲れさん、本気出したいで観戦しとってええで』
「は、はいっ」
ノワールさんとコーデリアは離れ、テラが腕をぐるぐる回して嬉しそうにニャートラの場所に歩いていった。
『ニャートラ、いつまで寝てんねん。やるで』
『……ニャートラ』
『あ? 黄金牛買うたるでもう少しやってえな』
『ニャニャ、ニャートラっ!』
なんだ? ニャートラに乗って戦う、訳ではなさそう。
テラが小さくなったニャートラを、頭に乗せ……神気を増大させた。
まさか、本気って……
神気がテラとニャートラを包み……
『ほんなら、本気で行かせてもらうでっ! 武神装・ニャーテラ!』
黄色い光の奔流が天を貫き、輝きを増した。
黄金の光……
今までの武神装とは、ランクが違う……まるで、テラだけの為に作られた力のような……光が、晴れ……なんだとぉぉぉおっ!
「な……にぃ……」
『にゃはは、驚いたかにゃ? ニャートラはウチの武神装やったんにゃ』
光が晴れ……テラの姿が変わっていた。
武闘着は虎柄に変化し、スリットが深く……いやそれよりもっ、それよりも虎柄の耳がっ! 尻尾がっ!
あぁ女神さまっケモ耳女神さまっ、ありがとうございますありがとうございます。眼福です。
金色の髪の上に、ケモ耳様がピョコピョコと動いているではありませんかっ!
可愛い…可愛いぞぉちくしょぉぉおお!
「……テラさん……私が勝ったら……愛でさせて下さい……」
『好きにするにゃ』
にゃ……くぅぅっ、可愛い。虎柄だけれど猫じゃん! 虎柄の猫耳じゃんっ!
可愛い、可愛い可愛い可愛い可愛いが限界突破中だぞちくしょぉぉおお! このままじゃ戦いにならねぇ!
可愛い……可愛い……?
……
……
……そうか。
「テラさん……私も、準備します」
『んにゃ? 良いにゃ』
……転移。
────
「まさかニャートラさんが武神装だったなんて驚きですねー」
「ふふっ、可愛いけどあんまりやってくれないのよ」
「お姉さまの好みど真ん中ですねー……ん?」
「コーデリアちゃんどうしたの?」
「お姉さまの様子がおかしいです……まさか……また暴走?」
「暴走なんてするの?」
「はい……キリエさんの時は変態になり、フラマさんの時はイケメンになり、ヴェーチェさんの時はクソダサくなって世界を滅ぼしました……お姉さまは心に響く事があると暴走する癖があるんです」
「まさか……じゃあ今回も? 止めないと……」
「はいっ、止めましょう! 何が起きるか解りませんし……あっ、お姉さま消え……」
「コーデリア……血吸わせろ」
かぷり。
「お姉さまぁぁぁぁんっ!」
「コーデリアちゃーーーん!」
────
……転移。
準備は万端だ。
テラはめちゃくちゃ可愛い。
可愛い、可愛い、だから、私も……
「可愛く、なりたい! 全年齢版初公開! 禁薬作成・ケモ薬GX!」
説明しよう!
ケモ薬とは18禁バージョンでリアちゃんが趣味で作った禁断の劇薬!
飲めばたちまちケモ耳尻尾が生える恐ろしい薬なのだ!
しかも飲む人によって効果が異なる素敵仕様!
GXは普通のケモ薬とは違うこの桃尻鬼妖精状態でも効くように作った特別薬!
いざっ、ごくんっ。
──ポンッ!
『にゃ、にゃんや……アレスティニャもウチと同じ……』
「……ふ、ふふふ……これで、私も、可愛い……にゃ」
GXの効果が強かったのか桃色だった髪は銀色に戻り、ピョコンと銀色の猫耳が出来た。そして、お尻には銀色の尻尾。
角と羽はそのままだから……猫耳鬼妖精アレスティアという盛り盛り状態!
『……にゃははっ、楽しくにゃってきたにゃ!』
「私は、可愛いさで負けませんにゃ……では」
『「勝負にゃ!」』
金色の虎柄猫耳女神と、銀色の猫耳鬼妖精が対峙した。
可愛いさでは、負けぬよっ!
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