私って女神ホイホイらしいよ
『行くでっ! 剛翔練気!』
向けた拳の赤いオーラ越しに、黄色いオーラを揺らめかせたテラがにぱぁっと笑い……消えた。
「――がふっ」
《うわぁ……速いですー》《光速剣並みだねー》
速い……瞬きの瞬間を狙われ、テラの拳が私の鳩尾に食い込んでいた。それでも私の射程距離……硬く握った拳を真下に振り下ろす。
テラが一歩後退しても拳は止めない。
地面に拳が到達し、周囲の大地を砕いていく。
足元が大きく沈み、大地の破片が飛び散った。
『うぉっと』
砕いた余波でテラの足元が歪み、ほんの少しだけバランスが崩れた。
「鬼神拳・裂空」
その場で拳を振り上げながらオーラを飛ばす。
テラはバランスを崩した影響で躱しきれないと悟ったのか腕を交差してガード……身体が浮いた。
脚に力を込めて一直線に駆ける。
『ははっ、良いなぁ良いなぁ──っ!』
「鬼神剛拳」
交差した腕の中心に踏み込みながらオーラ全開の一撃。テラが浮いた状態から後方に吹っ飛んだ。
テンちゃんよろしくー。
《まかせんしゃい、光速機能おーん》
背中の翼が輝き、テラを追い掛ける速度が光速に変化。
吹っ飛ぶ速度に追い付き、追い越して急停止し反転。腰を落として脚に力を込めた。
『くっ……速いなぁ』
テラが吹っ飛んだまま身体を反転、黄色いオーラを拳に集中させた。
「鬼神翔天脚」
『鋼武虎砲!』
私の天に向かって突き上げる蹴りを、至近距離の砲撃で相殺。一瞬お互いに硬直し、視線が交差した。
「鬼神……」『もらいっ! 鋼武百烈拳!』
まずいと思った時には全身を埋め尽くす拳の乱撃に襲われた。
一撃一撃が全力でハンマーを振り下ろされたみたいな鈍く強烈な衝撃……腹、肩、顔はやめて、腕、脚、胸、顔はやめて……顔は駄目だってば。
《速いですねー妖術・紅の雷》
赤い雷が私とテラに堕ちた。びりびりー、まじ痛えぞ。エーリンちょっと私は守ってよ。
『なんや無詠唱でこの威力……』
雷に打たれ、反発して弾けるようにお互いに吹っ飛ばされて射程距離外で向き合った。
いやぁこの身体凄いな。いつもの私ならダメージゼロを貫通してボコボコなのに、エーリンのタフさが備わっているから結構な打撃に耐えられる。
《私の乳は打撃無効ですからねー》
貴様の乳だけはな。
「……流石アスターの女神様ですね。強さが別格です」
『アレスティアもなぁ。なんやその速さ、チートやんか』
「ありがとうございます。もっと速くなりますよ……エナジーブースト」
『あはっ、そういやルゼリンの娘やったか。ほなウチも……超鋼武練気!』
まだ力が上がるのか。
速さは上がったとしても、反応できるかは別だ。
現にテラの蹴りが私の腹に直撃し、空に打ち上げられた。
遠くにコーデリアとノワールさんが戦っているのが見えた……うわぁ……ノワールさん強っ……うん、コーデリアの劣勢っぽい。
「何使おうかなぁ……エーリン、テンちゃん、魔法関係はよろしくー」
《任せてくださーい》
《なんか三対一みたいでずるくなーい?》
「ずるくないじゃん。最高峰の神相手に超超美少女とデカ乳鬼と美尻妖精で挑んでんだよ」
《デカ乳鬼って響きが嫌ですー。貧乳人間もどきと美乳鬼美少女とプリケツ妖精ですー》
《変態貧乳星女とデカメロン侍とスーパーラブリーキューティー美少女妖精》
「……エーリンは百烈カンチョー、テンちゃんは晩御飯ピーマン祭り」
世界一……いや天異界で一番可愛いアレスティア様お許しをーー!
あぁくそ……どうしても脳内で雑談してしまうから対応が後手に回る。
『にひひっ』
空中でテラの踵落としが私の腹に決まり、高速で地面に墜落。
大きなクレーターの中心で、空中から両手を向けて笑うテラを見上げる……大地からエネルギーをかき集めるように黄色いエネルギーが両手に集中していた。
「いやぁ、強いなぁ……」
『耐えてみぃや、超鋼武神・剛烈波!』
「言われなくとも…リフレクト・ミラーフォース」
視界一杯に広がる黄色いエネルギーを、仰向けのまま鏡の魔法を展開。
あれ? まだ武神装していないよね? えっ、ちょっとヴェーチェのエネルギー越えてんぞ……
――ドォォオオ!
「あっ、これ……跳ね返せない」
≪≪がんばー≫≫
早速鏡にヒビが発生。
「エナジーリペア! 更にメガエナジーマジック!」
ヒビを修復しながら鏡の強化……
『もういっちょ行くでぇっ! 超鋼武神・テラブレイク!』
ぎゃー! それだめそれだめっ!
黄色いエネルギーが輝きを増し……
バキバキ…と修復が追い付かない程の衝撃……破られたら、死ぬ。
「エーリンテンちゃん手伝って! 黒異天体連結!」
≪はいー妖術・瞬刻不壊≫
≪まだ付けたい機能あるからあれは待ってねー、光帝・六芒光結界≫
瞬刻不壊と六芒光結界でほんの少しだけ耐えている間に、黒異天体の力を解放。
「ぶっ飛ばせっ! インフィニティ・エナジー!」
『なははっ、おかん超えてんちゃう? 超鋼術・鋼壁』
……テラブレイクは、ぶっ飛ばせた。
でも……テラは無傷、か。
地面に降り立ち、エッヘンという顔で胸を張る姿が素敵だ。
でも他の女神は倒せる程の力だった筈……武神装無しでこの強さ……それ程までに力の差があるのか?
「はぁ、はぁ、テラさん……強過ぎますよ」
『へへっ、ありがと。戦うの好きやねんな』
「私も、少し前までは戦うのが大好きでした」
『覇道と分離したんやろ。話は聞いとる……なぁアレスティア』
テラが黄色のオーラをふっ…と消した。
何をする気だ? 視線を彷徨わせて、もじもじして……トイレ、では無いか。何か言いたい事があるみたいだけれど……
「どうしました?」
『いやぁ……なんかな、拳を交えて、アレスティアの事色々解ったというか……こんなに愛に溢れた拳は初めてやねん』
「そう、でしょうか。自分では解りませんが……」
《アレスティアの拳はラブですよー》《ラブラブー》
『だからな……あの……抱き締めてもええか?』
断る理由も無いのでうんと頷くと、テラが目の前に駆け寄りぎゅーっと抱き締められた。
ふわりと花の香りがする……なんの花だろう……アスターの花かな。
私と同じ背丈だから顔が直ぐ横……ピタッとほっぺが合わさって、身体付きも私くらいだからピッタリ。というかすーはーすーはーし過ぎよ。
「……テラさん」
『アレスティア……なんや、良い匂い過ぎやんか……離れたくないねん』
「移動、しません?」
『えっ、そな……いかんよ……順序って、あるやんかぁ……』
「いや、移動しないと……私達、死にますよ」
『……一緒に、死ぬんか? それも、嬉しいかもなぁ』
いや、いやいやいや……空見てっ!
なんか凄い隕石落ちてくるっ!
あっ、そうか。テラを持ち上げ、クルッと反転。隕石が見えるようすると小さくため息を吐いてぎゅーを強くした……いや、離れてよ。
「あそこの高台に転移してもいいですか?」
『ええで。一緒に観戦しぃひん?』
「良いですね、ノワールさんのまともな戦いも見てみたいですし……転移」
ばしゅんと高台に転移すると、ちょうど私達の居た場所に黒銀の隕石群が墜落し、なんか凄いエネルギーが渦巻いていた……あっ……えっ? 嘘……あのエネルギーって……
「……破壊属性」
『ったく、ノワールのやつ本気出しよってからに』
「ノワールさんって、破壊属性持ちなんですか」
『うーん、まぁあの剣持ってる時だけやな。あっ、なんやレンズ作れるんか。くっ付いて見よかっ』
私を遠くから見る為にママンが作った拡大レンズの魔法を使って、コーデリアとノワールさんの戦いを観戦……なんか二人してこっち見ている。会話を始めたな。音声オンっと。
「やっぱりテラ様はお姉さまに惹かれてしまいましたか……」
「……やっぱりって?」
「お姉さまは星なのは知っていますよね? だからなのか解りませんが、星や世界を大事に思う方である程お姉さまに惹かれてしまいます」
「あぁ……なんとなく解るかも……」
あぁ、確かにそうかも。
ルゼルとかルゼルとかルゼルとか私の事大好きだし。星になってからそれが加速して拗らせ女子全開だし……フラマもヴェーチェもアクアさんはわからないけれど私の事好きだし……幼女は元々か。ルナリードはどうなのだろう?
ふむ、まぁつまり……私は女神ホイホイという事か。
『なるほどなぁ……ウチもそんなんでアレスティアに惹かれてるっちゅう事かいな』
「なんかすみません、魅了が強力過ぎて最近困っているんですよ」
『にひひ、ええでええで。アスターが序列から抜けたらウチの事貰ってぇな』
「えっ、なんか凄い事言いませんでした?」
『天異界から抜ける訳ちゃうけどな。もうアスターがいなくても天異界は回るで、ウチらはのんびり過ごす予定やねん』
「へぇーそうなんですかぁ。じゃあまた今度ゆっくりお話ししましょうね」
腰を下ろすとテラが私の前に座ってもたれかかったので、後ろから抱き締めると嬉しそうに私の腕に触れた。
心地よい風が当たり、和やかな観戦が始まろうという時……
《じゃーじゃじゃじゃじゃーん、にゃーんもふーいけいけーにゃんーもふー》
上空から空気を読まないアレスティンカイザーが降臨した。
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