四戦目。可愛いと戦うのか……

 

「……お、ねえ、さま……また、会う度に、素敵になって……」

「今回は鬼族のエーリンと妖精のテンちゃんと合体したの。可愛いでしょ」

 《どうもー》《ふわふわー、アレスティアふわふわしてよー》


「可愛いの向こう側を全力疾走していますよ……あぁ…ムルムーさん写真買います」

「サービスしとくぜ、へっへっへ」

「尻触んな」


 全身タイツのムルムーが現れ、私の尻を触りながらコーデリアに写真を渡した。お代は私の尻か?

 コーデリアに抱っこされたので、首筋に噛み付いて血をちゅーちゅーしてみる。


「んぁぁんっ! おねぇさまぁんっ!」

 《あっ、美味しいも共有ですねー》《ふわふわ噛んでよー》


 ちゅーちゅー。

 ペロペロ。

 ふむ…美味しい。

 力を吸収出来るし、一定時間能力の複製が出来る……これ、凄い。

 コーデリアの身体がびくんっと跳ね……ありゃ、イッた?


「禁薬作成・超媚薬……おぉ、作れた」

「はぁ、はぁ、おねぇ、さまぁん……それ、凄い、です」


「他も作れるのかな? 禁薬作成・超下剤」

「あの……私のリストに無い禁薬作らないで下さいよ……」


「だってエリクサーとか全属性の適性無いと作れないんだよ? 私の属性って特殊だし」

「重力とか冥属性って解りますが……おねえさまの隠し属性にある愛属性ってなんですか?」


「愛を力に変える属性だよ。リアちゃんの想いを力に変えるクロスハートに似ているね」

「おねえさまらしい属性ですよねぇ……あっ、そろそろ時間ですね」


 愛属性はママンを筆頭にみんなに愛された影響で生まれた属性……だと思う。星になった時に知ったから、前から持っていた属性だとは思う……よくみんな暴走するから多分無意識に使っていたんだね。愛されれば愛される程に強力な力を行使出来たり、変な魔法が多い。愛に関する魔法というか術というか……代償は魔力と星力と、愛。

 愛を消費したら補充しようとみんなが甘えてくる……昨日試しに幼女のお腹を一杯にしてみようと思って少しだけ使ったら、うん、ね。多分そのせいでクリームパン事件が起きたんだよね。

 だから今また使うと、現在クリームパンをお預けされて悲しみ中のママンが暴走する危険がある……でも誰の愛が消費されるか解らないから、ママンではない誰かが暴走する危険があるのだ。

 世界を復活させながら、コーデリアの愛を消費したらどうなるか気になっていた所で次元の歪みが発生した。

 お相手がやって来たみたいだな。もうちょいで終わるから待ってね。


『おーなんややっておるなぁー、世界の復活なんてノワールの友達凄いやないか』

「そうですね……あっ、アレスティアちゃんが凄い可愛くなっていますっ! テラ様っ! 私達の完敗です!」


『なんの勝負やて。先ずは自己紹介せないかんな、ニャートラ挨拶すんで』

『ニャートラ』

「ちょっと写真撮っていますね」


 コーデリアに抱っこされている状態なので、転移してきた二人に向き合ってもらった。

 茶髪のサイドテールに少し日焼けした私より年下に見える美少女と、女子会仲間のノワールさん。

 茶髪の美少女がノワールさんの上司……猫目にニヒッと笑った小生意気な雰囲気が私の好みど真ん中。猫虎と書かれた武闘着も可愛いし今すぐ抱き締めて愛でたい衝動に駆られる程の愛くるしい顔立ちと笑顔は流石序列一位の女神様というか……肩に乗っている猫みたいな虎みたいな生き物がめっちゃ可愛いー。


『テラティエラや。よろしくなっ! こいつはニャートラや』

『ニャートラ、ニャニャ』

「アレスティアです。よろしくお願いします」「コーデリアです、よろしくお願いしますっ。ネコちゃん可愛いー」


『テラって呼んでやー』

『ニャニャ、ニャトラ』

「はい、テラさん。ニャートラさんも戦うんですか?」


『せやな。人数合わへんからもう一人呼んでもええで。あっ、ルゼルはあかんからな』

「うーん……予定が空いていてまともに戦えそうなのは……ルナお母さんだけれど破壊神だから難しいか……」


 《お母さん呼びますー?》

 クーリンさん? 裏世界の人はやめとこか。

 ニャートラはきっと強いと思うから、他にまともに戦えるのは……居なさそう。その前に可愛いから戦えないよ。


 《あっ、アレスティンカイザー出す?》

 この状態で出せんの?


 《うん、私が操作するから余裕のヨーゼフさんだよっ。冥属性とか色々属性借りるねー》

 はいよー、とりあえず出してみてー。


 《おっけー放牧地。ふみゅー……》

「あっ、みんな用事があるので私の魔神装で良いですか? 完成まで少し時間がいりますが……」

『んー? 出来るならええで』


「おねえさまの魔神装ってなんですか?」

「知らなかったっけ。テンちゃんの最高傑作だよ」


 上空に光のカーテンが発生し、アレスティンカイザーが出来るまで待機……なわけないか。

 テラが拳をガツッと合わせ、にぱぁと戦う事が楽しみで楽しみで仕方がないような笑顔で私を見ていた。

 ノワールさんが小さいため息を吐き、銀色の剣を抜いた……あれ? サバは? 気配はある。


「コーデリア、ノワールさんをよろしく」

「はい……よろしくお願いします」


 コーデリアが緊張している……わかるよ、好戦的なテラと対称的な静まり返った水面のようなオーラを纏うノワールさんは……強い。サバとか婚期を逃した可哀想な人というイメージだけれど、正直私は戦いたくないな。ママンとは違って、非情の選択を出来る人だから。


『ニャーニャー……トラ』

 ニャートラが光のカーテンを眺め、テラの肩から降りてちょこちょこ走り、近くの岩場に座って毛繕いを始めた。可愛い……


「じゃあ、私たちも始めましょうか」

『はははっ、ええなぁええなぁ! ほな、やろかっ!』


 テラが準備体操をするように軽く跳ねるとサイドテールの髪がふわりと浮いて、両手から黄色いオーラが溢れた。

 私も、やるか。

 エーリン、一緒に戦うよ。

 《はいはーい》

 テラに拳を向けると、赤いオーラが溢れる。これが、鬼神の力か……エーリン、私はあの時を思い出して泣きそうだよ。

 《ふふっ、アレスティアの為ならこの命……惜しくはないです》

 はははっ、私は幸せ者だね。


『なんやごっつあったかい力やな。ウチまで泣きそうや』

「嬉しいです……テラさんの力も、温かいです」


『ははっ、ありがとな。ウチな、ずっと楽しみにしとってな……ドキドキが止まらんのや』

「私も、ドキドキしています。この力は、大好きな友達の力なんです」

 《あれすてぃあぁー私も大好きですよぉぉ!》


 頭キーンってするから叫ばんでよ。

 卑怯とかチート性能とか通じない相手だから、どんな手でも使わせてもらうよ。

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