私の中に眠るドSの心が暴れ狂っているけれど、自重しなければならないのよ

 

「みずきちゃん、先生の事…知っている癖に知らないだなんて……悲しいなぁ」

「ごほっ、だっ、だって……先生いつもと違うから」


「違うから、知らんぷり? ねぇ明日香ちゃん、知らんぷりは酷いと思わない?」

「はっ、はひぃ…酷いと、思います」

「ぁぅ…明日香まで……はっ、そうだっ史織は……」


 史織も一応居るけれど、私に見惚れてぼけーっとしている。

 アレスティアという名前を知っているのは、ミズキ、ヘンリエッテ、史織の三人だけだから私の変身前とのギャップにドキドキしている事だろう。

 史織はアラスで水着パーティーをした時に連行したから……ミズキがみんなと海で遊んで目を離した隙に、まぁ、うん、ね。


「史織ちゃん?」

「っ!」


 史織の肩がビクッと跳ね、私を見詰める瞳が潤んできた。私が目を合わせてくれないから寂しかったんだね。

 ちょいちょいと手招きすると、ゆっくりと立ち上がり、ゆらゆらと私の方へ歩いてきた。

 おいでー、おいでー、私の元へー、もう少しだよー。


「史織っ! 駄目っ! 目を覚まして! 目を見ちゃ駄目っ!」

「みずき、私は正気、だよ……先生、あの、素敵、です」

「ありがと、もっと近くにおいで」


 ゆらゆらと歩いて、私の目の前に到着。そして私に吸い寄せられるように近付こうとしたけれど、みんな見ているからだめよ。

 頭を撫でると、顔を真っ赤にさせて口元を隠すように俯いた。

 アレスティア先生の魅了効果は普段の私の二倍以上効果があるから、クールに徹している史織でもこんな感じでメロメロなのだ。

 ママン達も魅了するから、扱いに気を付けないといけない。男子達の将来が拗れる可能性があるから、まぁ、その時は記憶を矯正してしまえば……ミズキに怒られるのは受け入れよう。


「先生、家に、来て欲しいです……」

「今日は用事があるから、アラスに行かないといけないの」


「そう、ですか……」

「待てるのならパンパンで待っている?」


「はいっ」

「せんせーい! 私も私もー!」

「ヘンリエッテちゃんはみずきちゃんと明日香ちゃんと三人でお泊まり会でしょ? だからだーめ」


「ぶぅー! みずきーなんか言ってよー!」

 私は忙しいんだよ。ホカホカのクリームパンをリアちゃんに届けないといけない。

 それと戦争の様子が気になって気になって正直授業どころではないのだ。

 だから今回は軽い説明と自己紹介だけ……説明は適当に雌豚が作ったプリントで良いし、自己紹介は出来た気がするし……あっ、私の正体についてミズキから聞かないと。


「それで? みずきちゃん、答えてくれないと……みずきちゃんの正体を言っちゃおうかなー」

「えっ、それ言ったらもう手遅れでしょまじ恥ずかしいから言わないで」


「えー、だってぇ……知らんぷりするからぁー」

「わかったからっ。お星様でしょっ」


「普通に答えたからだめ可愛く言って」

「……お、ほ、し、さ、まっ」


 ……まぁ、羞恥心が天元突破しているご様子だからこのくらいにしてやるか。

 いつの間にかヘンリエッテが近くに来ている……ほっぺツンツン……

 お星様って言われてもよくわからないよね……

『アレスティアはね、お星様になったの』

 うん、お星様になったとか死んだみたいな言い回しだし。


「アレスティア先生、女神とお星様って何が違うの?」

「星は世界を創る存在で、神はその世界を安定させる為に管理している存在ね」


「じゃあお星様の方が偉いの?」

「一応ね。でも本来星と神はあまり関わらないから、同等みたいな感じ……かな」


「でもでもアレスティア先生は偉いんでしょ?」

「えぇ、めちゃんこ偉いわ」


 私の場合は人型の星で、他の星と会話出来て死の星を復活出来る存在なので、天異界の中ではめちゃんこ偉い。星の中では新参者だから地位はそんなに、かな。良い世界を作った星が他の星に尊敬されるわけだから、ね。


 ヘンリエッテが私に抱き付き、次いで史織が抱き付き、明日香ちゃんも抱き付いた。

 ミズキは、抱き付こうか悩んでいるみたい……こらみんな匂いを嗅ぐでない。


「みずきー、パンパンでお泊まり会しよーよー」

「えっ、うん……先生が、良いなら……」

「じゃあ授業はこのくらいにして、アラスに行く?」


 みんな頷いて、ミズキも抱き付いたので指をパチンと鳴らす。

 便利魔法……というか雌豚が現れて、このクラスの後処理をお願いした。

 という事でみんなで次元転移。

 アラスにやってきた……


「「「……」」」


 転移した先……見渡す限りの荒廃した大地があった。

 戦闘の粉塵で太陽は隠れ、薄暗い光の中で元凶であろう二名が正座で座っていた。

 とりあえず辺りを見渡してみる……荒地、瓦礫、人だった物体、その中に不自然なほどに綺麗な状態のパンケーキのお店パンパン。パンパンの前には全力で結界を張っていたと思われるリアちゃんとヘルちゃんと幼女やフーさん蒼禍がへたり込んでハァハァしていた。

 ……ふむ、再び元凶へと視線を移す。

 ビクッと肩が跳ね、正座の状態から綺麗に頭を下げる姿は、どの絵画にも描かれていないような光景……歯を食いしばって泣きそうな漆黒の天使と、絶望を宿した目から涙を堪える白い少女……


『『……すみませんでした』』


 同時に頭を下げ、見事にシンクロした謝罪の言葉。

 一旦それを無視して、世界を元に戻すべく世界の時間を操作した。

 その間元凶を眺めながら少し待機。


「……レティ、この状況、何が、あったの?」

「きっと、私のクリームパンを巡って熱くなった方がこの世界を滅ぼしたと思われます」


「あぁ……うん、そうだよね。レティのクリームパンなんて世界が滅びるのも仕方ないし」

「そうなんですよね……きっと天異界総帥は頭を抱えていますよ」


「それで、誰が食べるの?」

「リアちゃんと、パンパンを守ったヘルちゃん達ですね」

『あずでぃぃ……』『うぅ……私はなんて事を……』


「あっ、ルゼルさんとルナさん泣いてるよ」

「泣きたいのは私ですよ。アラスが滅んだ原因が私が乳パッドにしたクリームパンを巡って黒金と破壊神が争ったんですよ? 裏世界の序列二位と三位が殺し合うほどのクリームパンの説明をアテアちゃんが泣きながら天異界総帥にしなければいけないんですよ? 可哀想過ぎません?」


「不謹慎だけど面白いよね」

 幸い短時間の事なので、直ぐに時間は巻き戻り、人々の往来が激しい帝都の姿が蘇った。その中でまだ動かない母達……ほら、注目されているし邪魔だよ。

 とりあえず連れてきてしまった明日香ちゃんと史織に身内の不祥事を見られてしまったな……恥ずい。ヘンリエッテとミズキに任せ、先ずはリアちゃん達の所へ。


「……母達がご迷惑をお掛けしました」

「……まぁ、うん、私が自慢しまくったのが原因だから……なんか、ごめんね」


「いえ、悪いのは母なので……とりあえずあそこでうじうじされると迷惑なので呼びましょうか。おかーさーん、おいでー」


 母達がゆらりと立ち上がり、ジメジメしたオーラを放ちながらやってきた。

 ……うん、めんどくせえな。


『『……』』

「みんなにごめんなさいは言いました?」


『『ごめんなさい』』

「ルゼルおかぁさんはしばらくパンパンで奉仕活動をお願いします」


『くっ……』

「私は怒っているんですよ」


『うぐぅ……わかった……』


 ごめんなさいを言うだけなら誰でも出来るからね、しばらくパンパンの制服を着ていなさい。


「ルナお母さん、ルゼルおかぁさんと一緒になって世界を滅ぼしてどうするんですか……」

『ぅ……すまない……』


「こちらに来て下さい」

『……ぅん』


 ルナリードが私の前に来て……逃げられないように抱き締める。

 ふっふっふ、やろうと思っていた事をやろう。


「……神契約ゴッドエンゲージ

『なっ……』


「罰としてルナお母さんには、私の女神になってもらいます」

『アレスティア……良い、のか?』


「ルゼルお母さんを止められるのはルナお母さんだけですから、今度はちゃんと止めて下さいね……そんなにクリームパンが食べたかったんですか?」

『ぅ、だって……ルゼルが……わがまま言うから』


「……はぁ……やっぱりルゼルおかぁさんが元凶か……ん?」

『あずでぃ……ゆるぢで……』

 タブレットに連絡だ。

 あぁ、ジョーカー戦が始まるみたいだな。

 リアちゃんにクリームパンを渡すと、満面の笑みで何処かに転移して行った。

 残りのクリームパンをヘルちゃんに渡しておく。ヘルちゃんなら平等に分けてくれるからね。


「アスティ、行ってらっしゃい」

「うんっ、終わったらヘルちゃんのクリームパンが食べたいなぁー」


「……仕方がないわね」

「よっしゃ」


 まぁこれを機にしばらくみんなのご飯がクリームパンになるという……他のパンじゃ駄目らしいよ。私の乳首に付いたクリームを……げふんっ、さぁ今度こそテンちゃんを連れてジョーカー戦に挑もうか。


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