三戦目……

 

 ……おや?


「お姉さま……ど、どうしてスク水なのですか……はぁはぁはぁ……」

「……いや、なんかね気付いたらこれ着て死の星に立っていたんだ」


「私にも……サービスを戴けるなんて……流石はお姉さまです」

「着替えて良い? サイズが小さいからパツパツで食い込んで動けないんだ。これで戦ったら秒ですっぽんぽんだよ」


「じゃ、じゃあ脱がせますね……」

「よろしく」


 ……

 ……

 ……着替えました。

 おかしいな……記憶が曖昧だ。

 パンパンのみんなと無人島に行って、雌豚にスク水亀甲縛りで拉致されてママンに良い子良い子されてみんなとイチャイチャしていたら……うん、全部覚えていたわ。


「お姉さまぁ……」

 コーデリアに抱っこされながら、星の力を使って死の星を復活させていく。

 ……ふむ、この星は……海が多い? 足首が埋まるくらいの浅い海が続き、所々砂浜があるから戦闘環境としては最悪だ。


「あっ、補佐が居ない」

 一人で来ちゃった……あぁどうしよう。

 まぁ、なんとかなるか。


「今回は、アクアマリンさんとヴェーチェルネードさんですよね……」

「この環境じゃ完全に不利だね。こっそり星に頼んで大地を創ろうか……星さーんお願いっ」


 ゴゴゴゴ……と地面が隆起し、闘技台のような円形の大地が現れた。地面は少し濡れているけれど硬い……

 ありがとー。海に投げキッスをしておこう。


「凄いですね……あっ、フラマさんに勝ったので待遇が良くなったんですよ」

「良かったね。何が良くなったの?」


「天異界本部の中を歩けるようになりました。流石に変装はしますが」

「凄いねっ。本部ってラグナさんの部屋にしか行った事ないんだけれど……どこにあるの?」


「それも凄いですね。本部はアスターの近くというか月にありますよ」

「そうなんだ。アスターの月が本部なんだね。あっ来たかな」


 次元の歪みが発生し、緑色の髪をかき上げたお姉さんが現れた。あれ? 一人?

 ヴェーチェルネードさんか、ふむ……スーツで事務員さんみたいな格好だな。

 あの緑の指揮棒みたいなものは……武神装か。史織パパの元カノと聞いているけれど……さて。


『やっほー、アクアは二日酔いで遅れて来るわ。その内来るから始めない?』

「良いですよ。じゃあどちらと戦いますか?」


『別に二人でも良いわよ。最後まで見たいから殺さないでねー』

「随分弱気ですね。まるで負ける前提じゃないですか」


『私はアスターで一番弱いのよ。対人戦は得意じゃないし、フラマとムドゥインに勝ったなんて無理に決まっているじゃない』

「それでも、ヴェーチェルネードさんは強いと思いますよ」


『ヴェーチェで良いわ。じゃあ、始めましょうか……』

「はい、ヴェーチェさん宜しくお願いします。コーデリア、準備は良い?」

「はいっ!」


 ヴェーチェがふわりと浮いて、指揮棒を空に向かって掲げ……魔力が上昇していく。

 まさか、いきなり武神装?

 風が、渦を巻いてヴェーチェを包む。


『私はみんなみたいに体力無いから、最初から全力で行かせてもらうね。武神装・お天気女神さん』

「お天気……」

「女神さん……」


 なんか、武神装の名前がダサい。

 ヴェーチェの服装が……ゆるふわコーデに変わり……髪型は一つで結んで化粧が爽やかお姉さんという感じで……なんか誰かの趣味全開の服装みたいな感じ。

 というか雰囲気が史織ママみたいで、これ史織パパの趣味? いやでも武神装って固定装備だよな。でも史織パパの趣味に合わせたみたいな雰囲気があるのは気のせいか?

 性格は、変わったように見えない……けれど。


「遠距離からのサポートよろしくっ! メガエナジー・フォース!」

「はい! 砕け散れ! ガトリングメテオ!」


 私が力を溜めている間、コーデリアが岩石群を飛来させ……ヴェーチェを狙うけれど……ちょっと規模でかくない?

 私も巻き込まれるぞこれ……もっと優しいサポートを期待していたんだけれど……


『私の前で魔法を降らせるなんて、良い度胸ね。征天空・魔法権強奪』

「――なっ! お姉さま逃げて下さい!」

「どうした!」


「魔法を……奪われました!」

「奪われた? じゃあ……」


 岩石群が微妙に軌道を変えた気がする。

 えー……こっち来たぁ。

 ヴェーチェの後ろに転移っ!

 ってコーデリアもこっちに転移すんなよっ!

 ほらこっちきたぁ……


『自動追尾にしたから、壊さない限り逃げても駄目よ。天の理・晴れ時々……岩の雨の勢いが増し、時折……雷が墜ちるでしょう』

 ……空に暗雲が発生し始めた。さっきまで青空だったのに……

 天候を操れる……それも大規模で。

 環境魔法の比じゃない……これは、世界魔法。

 ──ドドドド!

 当たれば瀕死、岩石の勢いが増していく……なんとか躱しているけれど……躱したらだめだ。

 ──ゴォォォォ!

 うわっ雷!

 岩石に当たって磁力が……わぁー合体したー。

 いやいやまだ岩石墜ちて来るじゃねえか。


「私が黒異天体で全部ぶっ壊す。コーデリアはヴェーチェを狙って」

「はいっ!」


 黒異天体を一つ作成する。

 コーデリアが神魔弓・アルテネスを構え、魔力を込めて矢を生成。

 引き絞り、上空にいるヴェーチェに狙いを定めた。

 まだ放っても当たらない、私が撹乱しないと。


「常に狙っていて。黒異天体解放!」

 解放した黒異天体を上空に投げ、強力な重力場を作成。

 岩石が引き寄せられ重力場に消えていく。

 よし、なんとか……ガトリングメテオは終わった。


『流石、やるわねぇ。天の理・これから次第に、天気は荒れ模様……毒の雨が降り、病魔の嵐が……上陸するでしょう』


 ポツポツと、雨が……この雨、色が……毒、まじか。

 身体が熱くなってきた……でもまだ大丈夫。


「……今っ! 星天の矢!」

 コーデリアが矢を放った瞬間……ヴェーチェにアルテネスの矢が突き刺さった。


『これは、神弓か。痛いわね』


「……コーデリア、手応えは?」

「……全く、ありませんね」


「だよねぇ……げほっ、げほっ……まずいなぁ」


 黒い風が、吹いてきた。

 手が、震える。


「お姉さま、エリクサーを!」

「ありがと……ごほっ、あれ? 効いている?」


「……効いていませんね。私が大丈夫なのは……どうしてですかね……解析」

「なにか、解った?」


「未成年に掛かる病魔と毒です。お姉さまを先に潰す気ですね」

「弱いなんて、嘘じゃねえか……なら、全部、跳ね除ける!」


『その、剣は……』

 借り物の剣、応龍神剣を掲げると……剣に映る龍が私を見て、笑ったような気がした。

 あぁ……この剣凄えわ。

 武神装・閻魔に匹敵する。

 私に、使いこなしてみろと言っているみたいで……心が躍る。


「さぁ、パーティーの始まりだ。武神装・天之四霊長」

「……」


 ……今、口が勝手に動いて……凄くダサい台詞を言った気がする。

 いやっ、ちょっと待ってっ、嫌な予感がするっ!

 あぁ! 解除出来ない! コーデリアっ、後退らないでっ!

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る