もちろん夜這いはされるよりする方が好きさ

 

「ルゼルおかぁさん、ルナお母さん、いってきまーす!」

「アスティ、気を付けてな」

「アレスティア、いってらっしゃい」


「あっ、いってきますのチューをして下さいっ」

「……うん」

「うぅ…うん……」


 ルゼルとルナリードに見送られ、アラスのパンパンへと転移した。二人は私に頼らずに料理をするってよ、どうなるかね。

 夜か……とりあえずネコさんパジャマに着替えて、ヘルちゃんの部屋をコンコンっとノック。

 ……反応が無い。ゆっくりと扉を開けようとしたけれど、鍵が掛かっていた。鍵は簡単な造りだな。


 ……針金を使ってカチャカチャ。カチャリと鍵が開き、ゆっくりと扉を開ける……ちらっ。

 ……寝んね中か。スルリと入って内側から音が鳴らないように鍵を掛け、そろりそろりと寝んね中のヘルちゃんに近付く……

 髪は一つに纏めてナイトキャップをして、クマさんパジャマから覗く横腹……ウサギさん抱き枕をギューってしているからお尻から太もものラインが素敵な曲線を描いている。

 ふむ……ウサギさんに嫉妬しているので、ウサギさんをゆっくりとヘルちゃんから引き離す。

 そーっと、そーっと、よし、ウサギさんには悪いが私が抱き枕になるのだ。このウサギさんは私のネコさん抱き枕と交換しておこう。ヘルちゃんの匂いを嗅いで寝たいので、ね。


「……んぅ……ん……」

 ヘルちゃんの懐に潜り込み、寝息を聴きながらぬくぬくと温まる。はぁー……ヘルちゃんの匂い。

 あっ、知っているかい? 美少女の鼻息って良い匂いするんだよ、まじで。

 さて、これからこのままヘルちゃんとぬくぬくしているのも悪くは無いのだけれど、このまま寝ていていざ朝になったらヘルちゃんは不機嫌になってしまう。

 なぜ起こさなかったのか、と。


「……ヘールちゃん」

「…すぅ……すぅ……」


「……へーるちゃん」

「…すぅ……すぅ……んぅ」


 優しく声かけしても起きない、パジャマのお腹から手を入れ……上へと向かい、目標地点に到着。

 目標地点で指を動かしながら、気持ちよく寝ているヘルちゃんの口を私の口でこじ開け、舌を……


「……へーるひゃん」

「ん? ……んっ! んぅっ!」


「おーひゃお、えっひひよ?」

「んっ、もう、ばかぁ……」


 可愛いのうっ!

 ……

 ……

 ……はい、どこまでエロくても大丈夫か試してみたくなるけれど、ちゃんと自重しますよ。


「…………という訳で、ルゼルおかぁさんとルナお母さんの仲は前進したんだ」

「良かったわね、仲良くなって。でも二人のやり取りを見ていて飽きないというか、もう見れなくなるのは寂しいわね」


「娘としてはもっと仲良くして貰いたいのだよ。という事で私は一日ヘルちゃんのアレスティアなんだけれど、何したい?」

「あら良いの? じゃあ地球でデートしたい。もちろんアレス君で……あっ、ニホンって黒髪なのよね? 二人で黒髪が良いわ」


 黒髪デートね。

 じゃあヘルちゃんの髪をカラーチェンジ。

 黒髪ツインテール……幼く見えるな。


「あっ、良いね。良いね良いね。お淑やかな病弱お嬢様だよ。じゃあ私もっと」

「アスティは黒髪だと小さなルゼルさんよね。アレス君にしてみて……あっ、良いわね。良い良い……制服着てみて……うゎっ、やばっ、鼻血出そう……」


「ヘルちゃんも制服着てみて……うゎっ、超美少女、女子高生グランプリ優勝するよこれ」

「女子高生って何?」


「ミズキさんの年代の女子学生ってやつ? 帝国立高等学院みたいな?」

「高等学院みたいな? じゃあミズキさんは貴族か名家なの?」


 貴族とかはほとんど無い筈……ミズキの家は名家っていう感じじゃなかったし……松田家は名家か。よくわからないな。

 文明レベルはさほど変わらないけれど、通信技術は日本が上でエネルギー技術はアラスが上か同じくらい。魔法の概念が無いから、地球は色々不便が多そうかな。

 ヘルちゃんのスカートを捲ってみる……ごちそうさまです。


「ミズキさんは普通の家だと思う。なんていうか、教育水準は日本の方が上だから」

「ふーん、まぁ良いわ。アスティと制服デートしたい」


「よーし、じゃあ行こっかー。まずは雌豚の根城へ転移っ」


 イッきゅんの別荘に転移した。

 雌豚は……セーラー服を着て吊るされていたので、無視して別荘を出た。

 とりあえずミズキの学校を見たいというので歩き出す。


「……ここが地球のニホン? なんか、空気悪いわね」

「まぁ、都会になればなるほど空気や土壌は汚染されているよ。ヘルちゃんは聖女だから感じやすいのかもね」


「ふーん、魔物が居ないと言ってもこの世界は大丈夫なの?」

「いや…割りと危険かな。管理する主神が居ないから…天異界同盟には入っていないんだ」


「天異界同盟に入っていないと、次元の歪みが多そうね」

「そうそう、ミズキさんみたいに転移する人多いんだ。しかも地球からの転移者は同盟外という事で保護する事もあまり無いから、結構大変な目に合う。ミズキさんみたいに」


 アラスは特に幼女が忙しくて迷い人に構っていられない。たまたま見付けたら適当に力を与えて後は頑張って的なスタイルだし……


「ミズキさん、小じわが苦労していそうだったわよね。若返って小じわは消えたけれど……」

「精神はオバサンだから、別の意味で苦労しそうだよね。あっ、ここがミズキさんの学校だよ」


「へぇー、造りは頑丈そうね。扉と窓を塞げば籠城出来そう」

「造りはね。魔力が籠っていないから、魔法に弱いよ」


 校門の前に立ち、ヘルちゃんと顔をくっ付けて写真撮影。

 ぴーす。

 これをヘンリエッテとミズキに送信っと。


「あっ、直ぐに返信来たわね」

「今居るの? だって。見て、窓からヘンリエッテが手を振っているよ。無視する?」


「無視したら後でしつこいわよ。なんか沢山顔を出しているわね。知り合い?」

「いや、ヘンリエッテの友達を一目見ようという好奇心だと思う。ミズキも顔を出したね。通話にしてみよっか。ポチっとな」


『こっち来てー、見たいー、二人の制服姿ー』

「えー、入ったら不法侵入だよ。だめー」


『じゃあっ、じゃあっ、学校終わったら会お? 決まりっ! ミズキも会いたがっているしっ!』

「何時さ」


『三時だよっ』

「三時かぁ……パンパンでパンケーキを食べる時間だから、パンパンに来てよ」


 今は十時。学校は休み時間かな。


『やだやだー、こっちで会う事に意味があると思わない?』

「どうするヘルちゃん」

「別に良いんじゃない? 私がアスティとデート出来る時間は変わらないし」


『デート……デート……私も、したいなぁ』

「見て、男子が私に嫉妬している」

「ヘンリエッテはモテそうよね。男子にも女子にも」


『別にモテないよ? 告白なんてされないし』

「一般人が王女に告白できると思う?」

「無理よね。気圧されちゃうから。じゃあ行きましょ?」


『行かないでー、寂しー、あれすぅぅ……』

「後でねー」


 ミズキから格好良いって連絡が来た。

 追加で女子の方の可愛い自撮りでも送ってあげよう。いえーい。


「あっ、ミズキさんが上を向いたわ。鼻血ね」

「ミズキさんの好きな所は把握しているからね。きっと待ち受けにするよ」


「私にも頂戴……あっ、これは可愛いわね」

「でしょ?」


 さて、何処に行こうかな。

 先ずは周辺からにしよう。


「魔導馬車みたいなのあるわね。あれ乗りたい」

「運転するには免許が必要らしいよ。きっと雌豚なら運転出来そうだけれど」

「喚ばれましたかご主人様」


「自動車ってやつに乗りたい」

「イツハ様の車は運転出来ますが……免許はまだありません」

「免許かぁ……誰か自動車の免許持っている人居る?」


「松田さん夫妻と白雲さん夫妻、後は……イリアス様とイツハ様です。知らない人で良いのならタクシーやバス等ありますね」

「そっかぁ、免許って難しいの?」


「最短で一ヶ月も掛かりませんが、十八歳以上にならないと取れないらしいですよ」

「じゃあ雌豚が免許取っておいて」


「そう言われると思って取得中です。仮免は取りましたので、あと一週間程お待ち下さい……あっ、講習の時間ですので失礼致します」


 雌豚が消えていき、諦めて星乗りで空へと上がった。

 うーん、綺麗な街並みだな。

 誰も武器なんて持っていない。

 魔物なんて居ない世界、か。


「空の、あれは魔物?」

「いや、飛行機っていう乗り物らしいよ。自動車の空版だね」


「魔力が無いのに凄いわね。確かに、魔物が居ない世界っていうのは本当みたい……でも、強い人間は居る」

「きっと、松田さんっていうこの世界の過保護な父親だよ。ほら、あそこに居る」


 ヘルちゃんの魔力を確認しに来たか、わざわざご苦労な事で。


「強いからこそ、同じような人が居ると気になるものなのね。責任感の強い彼は、地球で生きるべきなのかしら?」

「選択したのはあの人だよ。ただ、強いからこそ生きにくい」


「そうね。守る責務を勝手に自分で作り上げてしまう……疲れないのかしらね」

「さぁね。どうする? 話し掛ける?」


「興味無いわ。私はアスティと一緒の時間を過ごしたいから、何処かに行きましょ?」

「じゃあ、星乗りで世界を回ってみようか。もしかしたら魔物が居るかもしれないし」


「良いわよ。アスティとならどこに居ても楽しいから」

「ありがと……そうだ、いつ結婚しよっか」


 早くヘルちゃんと結婚したいんだよね。

 直ぐは難しいのは解っているんだけれど。


「私は今でも構わないのだけれど、アスティは妹を助けたいんでしょ? それに結婚ってなったら大変よ。私とあなたの立場もあるから結婚式の準備や挨拶回りだけでもかなりの時間を使う。その後もしばらく大変よ」

「ヘルちゃんは皇女で聖女で星のお嫁さん……私は核星使ルゼルと破壊神の娘でお星様……立場が凄いね……」


「だから、一段落してからよ。何年でも待つから、好きなように突き進みなさい」

「へへっ、ありがちゅ。頑張るねっ」


 ヘルちゃんへの愛がどんどん深まる今日この頃……

 あっ……タブレットに連絡が来た。

 ジョーカー戦三回目は百時間後、か。

 あっ、後で松田さんに元カノと戦うよってからかいに行かないと。

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