ルビアへ挨拶に

 

 次の日、部屋でゴロゴロしていると、リアちゃんがやって来て、ゴロゴロし始めた。

 一緒にゴロゴロすると……ついついチューしちゃうよね。

 はぁ……おっぱいいいなぁー、もみもみ……ん? 谷間にカードが挟まっている。


「ねえねえアスきゅん」

「リアちゃん、どうしたんですか?」


「私……あのね、うんとね、アスきゅんの……デキちゃったみたい」

「ナニがデキたんですかね……何か企んでいるんですか?」


「アスきゅんの……通行証。ルビアにいきゅ?」

「いきゅー!」


 谷間から天異界の通行証を取り出して、見てみると……私の名前がアスきゅんになっている。

 このカードがあれば、正式にルビアに招待されたという事か。前回リアちゃんの目を治す時は変な迷宮に行っただけだったし。

 よしっ、行こう!

 ……あれ? 行かないの?


「アスきゅんを襲ってからが良い」

「襲われちゃうんですね」


「そうなの。アスきゅんは襲われるの。がおー」

「きゃー」


 ……

 ……にゃー!

 ……にゃーー!

 ……にゃーーー!

 ……ガチめに襲われた。


「さて、ここがルビアの神殿よ」

「……恐ろしいくらいデカいですね」


 リアちゃんの谷間に挟まれて転移した先……真っ白い空間の中、引くほど長い白い階段が、ずーっと上まで続いている。

 ……えっ、これ登るの?


「登りながら神殿の案内すりゅか、各所で転移しながら案内すりゅか……」

「転移しながらでお願いします」


「良いわよ。良い? 決して私の抱っこから降りてはいけないわ」

「ど、どうしてですか?」


「アスきゅんをみんなに取られる訳にはいかないの。私が死守するんだから」

「いや、流石にキリエさんに会う時は解放して……はい、わかりました」


 泣かないでよ。

 嘘泣きだとしてもその涙はズルいからさ。

 ……あの……抱っこ紐で抱っこなんて、クソ恥ずかしいんだけれど……

 あっ、転移した。くっ、これなら自力で登れば良かったよ。


「ここは研修生が学ぶ場よ。ルビアの歴史の勉強や、文明の理解、魔法とか……小さな学校みたいな所と思って良いわ」

「研修生って結構居るんですね」


 本当に学校みたいに小さな校舎があって、訓練場みたいのもある……すごっ。

 研修生というか神見習いさんは百人は居るんじゃないか?

 幼女の神殿とは大違いだな。


「天異界神学校の延長ね。神学校を卒業してこうやって研修するか、優秀な神はキリエや補佐に直接研修を受けられたり、進路は色々だけれど……アラステアちゃんも天異界神学校は通信教育で卒業したのよ」

「へぇー、幼女が学校とか問題児になりそうですね。ところで天異界神学校ってなんですか?」


「まぁ……数々の伝説はあるけど、その内ね。天異界神学校は、世界の管理を効率的に行う為に色々と学ぶ学校で、神以外にも補佐の天使や魔王や人間もたまに居るのよ」

「へぇー、リアちゃんも卒業生ですか?」


「一応ね。ルビアのメインの卒業生は私とキリエと、サティと、イツハと他に三柱の七名」

「じゃあルビアは七柱で管理しているんですか?」


「管理はキリエとルビたんの二柱ね。後は補佐的な何か」

「ふむぅ、ややこしくなりますね」


 ルビアは代表が二柱で後は補佐と研修生って事ね。

 なるほど、他の部屋は色々謎な部屋があり、最上階がキリエの管理室らしいので、転移で行ってみる事になった。


「キリエー、アスきゅんが遊びに来たよー」

「おっ、いらっしゃい。ゆっくりしていってねー。今お茶出すからー、誰か居たらお茶出してあげてー」


 ……書類のタワー群が大きな机に積み上がっていて、タワー群の向こうからキリエの声が聞こえてきた。

 誰がどう見ても忙しい状態で、落ち着いた感じで話されると、これが日常なのかと思った。

 でもなんで紙なんだろう……データ処理で良いんじゃないか?


「リアちゃん、キリエさんの後ろに回り込みましょう。顔が見たいです」

「うん、お茶は私が出すから……降りちゃ駄目よ」


 リアちゃんに回り込んで貰うと、銀色の髪が見えた。

 やっほーご先祖さま。可愛い子孫だよー。

 顔が見えない……今紅茶渡さないでよ。熱いからさ。


「先日はありがとうございました」

「はははっ、助けになれなくてごめんね。本気出さないと後が面倒でさ」


「いえいえ、私達の力不足ですよ。あの、サティさんに勝てる方って居るんですか?」

「うーん、アスターのラグナさんなら勝てそうだけど、ね」


 リアちゃんが嫉妬して私をぎゅっとしている……ちょっと、暑いし紅茶溢れるから熱いよ。

 ぎゅっとするとさ、抱っこ紐が食い込むんだよ……股に。


「抱っこ紐から自分で出られないので安心して下さいよ。ルビア産の紅茶って有名ですよね、母がよく飲んでいますよ」

「あっ、ほんと? 嬉しい。アレスティアちゃんってルゼルの娘なんだよね? おっかない?」


「私に対しては優しすぎて可愛いので怖くはないですよ。他の方から見たら怖い存在ですが……」

「私も初めて会った時は絶望したからなぁ……ところで、なんで赤ちゃんみたいに抱っこされてるの?」


 ひょこっと顔を出したキリエが、私の食い込んでいる尻を眺めて、リアちゃんを呆れた目で見た。


「ルビアでアスきゅんは私のアスきゅんなの。一瞬でも目を離したら危険なの」

「……可愛いもんね。ここのみんなは可愛い子大好きだから……まぁ、危険か」


「だから私はアスきゅんを守る為にこうしてるの。みんなはどこ? 罠とか無いよね?」

「みんなは旅行に行ったよ。ここに残ってるのは……多分私だけ」


「なら、安心か。いや、油断は出来ない……アスきゅん、何かあったら私を置いて逃げてね」

「リアちゃんを置いていくなんて私には出来ませんよ。あの、キリエさんに抱っこされたいです」


 キリエが立ち上がって、リアちゃん代わってと手を出すと、リアちゃんが泣きながら私をキリエに渡した。

 抱っこ紐で渡されると、なんか変な感じ……出来れば解放して欲しいけれど、後が怖いし……尻が食い込んだままキリエに抱っこされた。

 目の前にキリエの顔……目がクリっとしていて美人可愛い。

 じー……チューしたい……じー……チューしたい……


「ぅぅ……アスきゅんがぁ……浮気したぁ……」

「アレスティアちゃん軽いねー。なんか凄く良い匂い……癒されるぅ」

「あぁ……落ち着きます。はぁ……ところで息子さんってアラスに今も居るんですか?」


「あすきゅーん……あすきゅーん」

「うーん、居ると思うよ。連絡無いけど……」

「じゃあ、会ったら帰省するように言っておきましょうか?」


「あすきゅーん……でもアスきゅんが会ったら、大変かも」

「あー……アレスティアちゃん可愛いから……会わない方が良いかも」

「えっ、どんな人なんですか?」


「「うーん……」」

 二人して微妙な反応……なんか気になるね。

 それよりも、さっきからキリエが私を可愛い可愛い言うから舞い上がっている。


「キリエさん、ほっぺにチューして良いですか?」

「ん? 良いよ?」

「あすきゅーん、浮気だ浮気だー」


 ほっぺにチューは浮気じゃないよ。

 挨拶だよっ。という事でほっぺにチュー……ぷにぷにほっぺ。

 ぎゅーしよう。キリエってちっぱいだからぎゅーしやすい。


「ありがとうございます……私、キリエさんの記憶を見た事があって……ずっと、こうしたかったんです……」

「前に言ってたよね。一回死んで先祖返りしたんだっけ。昔の私はどうだった?」


「幼い頃、ルルさんと出会う前から、観ていました」

「えっ、そんな前から? なんか、恥ずかしいな。お母さん綺麗だったでしょ?」


「はい、とても綺麗で……ルゼルおかぁさんに出会う前だったから、羨ましかったです」

「あの時は必死だったからなぁ……ねぇねぇ、アレスティアちゃんの事も教えて? ルゼルと仲良くなったきっかけって気になるし」


「はいっ、あっ……私の本当のお母さんは破壊神さんなんですけれど」

「……ん? もう一回言って?」


「私の本当のお母さんは破壊神さんなんですよ。と言ってもあまり話した事はありませんが」


 実母は破壊神ルナリードさんだよ。

 なに? 知らなかったっけ?

 生命の宝珠で生まれたのよ私。美少女百人とルナリードから生まれたのよ。だから百人分の性癖が……げふん、性質があるのよぉー。


「そっ、か。だからアレスティアちゃんに覇道の性質があったんだ」

「ん? どういう事ですか?」


「破壊神ルナリードは、魂を二つ持っているの。破壊の限りを尽くす覇道と、もう一つは…私達の仲間だった月読の魂。今…破壊神はどんな姿か解る?」


「今は、子供の姿です。仲間、だったんですね」

「うん、彼女が居なかったら…私もイリアも…みんな死んでいた。子供の姿なら、時間が無いかも…」


 時間が無い?

 あの可愛い姿は、危険な状態なのか……

 今のルナリードが、月読という魂の性格…

 昔…破壊神覇道がルビアに現れた時…その身を犠牲にして、世界を救った英雄、か。

 月読は死んで、魂だけが覇道の身体に居る状態だから、立場が弱いんだろうな。


「今の破壊神さんは、このままじゃ駄目なんですか?」

「子供の姿は、破壊神そのものの身体なの。だから特殊な方法で身体を封印してあげないと、覇道が表に出てきてしまう」


「そう、なんですか……」

「彼女はずっと一人で、覇道を抑え込んでくれていた。私は、彼女を助けてあげたい……」


 ……覇道が表に出てきたら、以前のルナリードでは無くなってしまうのか。

 なんか、嫌だな。


「……私に出来る事って、ありますか?」

「ある、と思う。いや、アレスティアちゃんじゃないと、出来ないかも」


「星の力、ですね」

「うん。詳しい事はラグナさんが解ると思うから連絡しておくね。私じゃ、何も出来ないから。イリア、頼んだよ」

「りょーかい」


「後で、破壊神さんに今の状態を聞いてみます」

「よろしくね。あっ、彼女…恥ずかしがり屋さんだから、助けてなんて言わないと思うの」


「なんとなく解ります。一応娘ですから」

「ありがとう」


 ルナリードに会いに行こう。

 今は、新しい家に引っ越したみたいだから。

 引っ越し……祝いでも渡そうかな。


「あの…月読さんが好きだった物ってなんですか?」

「んー……なんだろう。イリア、知ってる?」

「趣味は可愛い服と料理じゃなかった?」


「料理かぁ……」

「アスきゅん、一緒に作ったら?」

「あっ、それ良いかも。絶対喜ぶ!」


 えっ、急に一緒に料理しようとか結構難易度高いよ。

 ……なに?

 今連絡しろって?

 えー……それはおせっかいというか……

 えー……恥ずかしー。

 えー……これ連絡しないと帰れないやつじゃん。

 えー……監視付きで、タブレットを操作……


 内容は、後でご飯を一緒に作りませんか? という感じをキリエとリアちゃんがノリノリで考えてくれた。

 やだー…送信したくなーい!


「えいっ、送信」

「きゃー! リアちゃんやめてー!」


 ……くそぅ。恥ずかしい。


 ――ぴろりーん。

 あっ、返信来た。

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