核星の竜3
毒の壁が消えると、目の前にはドラグメテオの竜……ムドゥインさん、追撃がエグいよ。
そんなら全部吸収してやるまで!
一体一体がデカいから、時間かかるんだよなぁ……
『ここまで、戦えるとは思わなかったな。竜禁術・ドラグシールド』
どのくらいか数えていないけれど、恐らく五十は吸収したと思う。黒異天体の中に赤、緑、黄、黒の球が沢山回っていて…なんか気持ち悪いな。
竜達は私に効果が無いと判断したのか停止して、一つに合わさり始めた。合体か…
今の内にコーデリアの様子を見るか……
「あれ? なんで戦っていないの?」
私とムドゥインの戦いを、二人で並んで座りながら観戦していた……えっ、良いな。私も観戦したい……
コーデリアに念を送ろう……代われ代われ代われ代われ代われ代われ代われ代われ代われ。
……首を横に振られた。
……後で覚えていろよ。
この勝負に勝ったら、ゆっくり観戦してやるから。
『ドラグメテオの性質は二つ、竜の力で大地を揺るがす殲滅攻撃と、己を犠牲に護りたい者を護る盾』
赤、緑、黄、黒が混ざり合い、ムドゥインと同じ色の大きな大きな盾……破って、みろって事かな。
盾というより、城壁みたい。この盾、硬いとか強固とか感じるよりも、信念のような強さを感じる。
だからなんだろう……自然と、笑顔になってしまうよ。
「敢えて、この魔法を選んだのは……ムドゥインさんの、生き様ですか?」
この盾から、少しだけ悲しいような寂しいような感情が流れてきた。星になった影響なのか、人間モードでも気を読む術に長けているんだけれど……この感情は、悔しさ……無念、か。
『……カハハッ、まさか当てられるとはな! ますます気に入った!』
「ムドゥインさんは……いえ、なんでもありません。さぁ! こんな盾壊してやりますよっ!」
『ならば、我の力を全てこの盾に使おう。この盾を壊せばアレスティアの勝ち。壊せなければ、我の勝ちだ』
「ふふっ、やっぱりおかぁさんのお友達は……優しいですね」
ムドゥインの前に形成された重厚な黒い盾。盾には無造作に銀色の角が突き出て、最終決戦の扉みたいにオーラが凄い。
これで決着が着くのなら、万全で挑もう。コーデリアから貰ったエリクサーを飲み干し、ドラグメテオを吸収した黒異天体を、一つに合体!
球体が二つ連なる天体に合体させ、零魔法で竜のエネルギーの無駄を無くして純粋なエネルギーにしながら魔力を込めていく。
未完成だった黒異天体は、完成に近づいている。
星になって、世界を創る能力を得て……人間の状態で応用が出来たというか、本来の作り方と使い方が解ったというか……
黒異天体の延長、到達点は……星の核だ。
つまり簡単に言うと……私は知らずに、擬似的に不完全な星の核を作っていたんだ。
これが、どんなに凄い事かというと……ママンの攻撃力を超えられる。
溜めても溜めても、攻撃力に天井は無い。
「ありがとうございました。黒異天体解放・インフィニティエナジー」
まぁ、欠点はあるよ。
不完全だから近距離攻撃だし、溜めに時間掛かるし、魔力をほとんど使うから、こんな時にしか使えない。
ほんと、ムドゥインには感謝しかないね。
『……アレスティア、死の星を、世界を復活出来ると聞いた』
「はい、星にもよりますが出来ますよ」
『もう少し、早く出会いたかった……な』
「今からでも、遅くはないですよ」
砕けた盾の向こう側で、ムドゥインは崩れそうな身体で楽しそうに笑っていた。
ルゼルのように、世界を護れなかった者の中には、星の核に縛られてしまった者が居る。
少しだけ、視えてしまったな。
竜の世界を支配していた竜王は、ある時、悪神と呼ばれる者に世界を壊され…… 悪神の僕として、他の世界を滅ぼす駒にされた。
そしてある時、悪神に星の核を植え付けられ、核星の竜になった。
『カハハッ……そうか。もう、何処にあるかも、解らぬのに、未練がましいだろう』
「いえ、探しましょう。何年掛かかろうとも探しましょう。私も手伝いますよ!」
『……アレスティアの目は、心が温まる。友に、なってくれぬか?』
「はいっ! 是非!」
『……ありがとう』
……ムドゥインは、私にお礼を言って消えていった。
最初は怖かったけれど、潔くて、強くて、凄く優しい竜だった。
私に勝ちを譲ってくれた……あーあ、なんでこう良い男は人外ばかりなのだろう。
「悪神、か」
ルゼルも……ムドゥインと同じく、悪神に自分の世界を壊され、星の核を植え付けられた……のかな。
世界を守れなかった後悔を、今でも引き摺って……ルゼルの生まれた世界も、探さなきゃな。
ムドゥインが消え、荒れ果てた大地で少し考えに没頭していたけれど、まだ試練は終わった訳じゃない。
──ドゴォォン!
フラマとコーデリアも、始まったみたいだな。
ちょっと、休憩がてら観戦でもしますかね。
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