核星の竜

 

 フラマは深紅の斧を担ぎ、好戦的な笑みを浮かべながら遊ぶように魔力を少しずつ上げている。これだけならなんとかなりそうだと思うかもしれないけれど、完全に場数が違う。


「コーデリア、フラマさんと戦いを長引かせて生き延びて。私がデカイのを倒すから。あっ、エリクサー頂戴」

「はぃぃ…禁薬作製・エリクサー。あの…毒酒さんはそのままで良いんですか?」


「…どんなに動いても外れないんだよ。だからこのまま頑張る」

「……」


 ジト目で見ないでよ。本当に外れないんだから。

 コーデリアの能力は確か……星天魔法、神聖魔法、深淵魔法、混沌魔法、禁薬作製、超回復、呪術、仙術、卵肌、ゆで卵召喚、オラクル…後半につれて謎が深まる能力。

 万能型だけれど、私みたいな攻撃力は無いんだよな。


「コーデリアは生き延びる術は私より上だからね……でもフラマさんに近付いたら熱いから、一応武器いる?」

「欲しいです! えっ、なんですかこの弓……引く程ネギ臭いんですけれど」


「神弓・ネーギィレイザー。万能属性だからフラマさんに効くらしい」

「……お姉さま、予備を見せて下さい」


「な、なんでさ。その弓は一個だけだよ」

「私は知っています。これより良い弓を持っている筈です」


 ……なんで知っているのさ。やだ、嫌だよ。神魔弓・アルテネスを渡したら私がネギ弓を使う羽目になるじゃないか。

 これ以上ダサい武器は嫌なの。

 嫌なの。

 そんなウルウルした目で見詰めても……だ、駄目なんだからねっ。

 ……

 ……

「……魔力を込めれば、込める程、強力な矢が……出る」

「お姉さまっ、ありがとうございますっ♪」


 良いんだ。お姉ちゃんだから、妹の為に……ネギ弓使うんだ。

 フラマは私たちの様子を眺めて、なんか嬉しそうに見ているな。


『姉妹、か。仲良いんだな』

「フラマさんは、いるんです?」


『いや、俺は居ない。仲の良い姉妹を見ると、ラグナ達を思い出してな』

「ラグナレヴィアさんの、お姉さん……です?」


 確か、閻魔がラグナさんは妹って言っていた気がするけれど……仲が良い感じ、では無い気がする。


『いや……ラグナには妹が二人居る』

「そっ、そうですか。妹さんでしたか……」


 仲良し姉妹なんだね。いつか会ってみたいな……ラグナさんとはそんなに仲良くないから、ジョーカー戦が終わってからになりそうだけれど。


『俺は準備万端だが……そろそろ良いか?』

「はい、私はムドゥインさんと戦いますね」


 意識しないようにしていたけれど、フラマの後ろに黒い壁があるんだよ……壁に見える竜だね。灼熱龍グドラームと戦った時を思い出させるけれど、グドラームよりは小さい……うん、でけえよ。

 とりあえず、視線を合わせるのに星乗りで飛ぶか。

 星乗りで上昇……コーデリアに手を振って、ムドゥインに対峙しよう。

 びゅーん…ん? 毒酒ちゃんの顔が動いて、強めにギュッてした。 もしかして起きている?

「毒酒ちゃん?」

「すやすや」


「……毒酒ちゃん?」

「すやすや」


「……毒酒ちゃんが人と生活出来る方法を考えたんですが……」

「……すやすや」


 やっぱり、寝ているか。

 多少のダメージでも起きないのかな?

 まぁ、その内起きると思うけれど……


『頑張れよアレスティア。よしっ! よろしくなコーデリア!』

「はい! あの……もしよかったら、お姉さまの戦いを観戦しませんか?」


『ん? なんでだ?』

「観てみたいと思いませんか? ラグナ様が一目置いているお姉さまの戦い……ルゼル・タイタニアの娘であり、星になった女の子の戦いを見逃すなんて、勿体無いと思います!」


『……』

「別に観なくても良いというのなら、今すぐ戦いましょう」


『……コーデリア』

「……はい (……駄目か)」


『天才だな』

「えっ?」


『俺もちょっと思っていたんだ! アレスティアの戦いを観ようぜ!』

「は、はい! み、観ましょう! (やった! お姉さま、頑張って下さい♪)」

 

 星乗りで少し上がった先、私の身長を優に越えるムドゥインの顔まで到着した。

 頭と鼻先に銀色に輝く角、黒光りする硬そうな肌に、白く輝く瞳……私が獲物というように、鋭い牙を見せて笑った。


「ムドゥインさん、アレスティアと申します。宜しくお願いします」

『小さな身体で、我らに挑むか……面白い』


 やはり喋るか。

 知能が低かったら勝率は上がると思ったけれど、どうするか。

 私の邪悪、混沌、破壊は大部分を覇道に持って行かれてしょぼいから、大きい相手と戦う時……困るんだよ。

 深淵を使う星体観測が、白主体になるのと……混沌を使う強制弱点付与の裏環境魔法・呪われた世界も使えない……そして一番破壊が使えないのが痛い、万能過ぎるから。

 それでも、メガエナジーと零魔法が使えるから…なんとかなる。瞬間火力だけなら、ママンに匹敵する自負はあるし。


「私の方が小さくて不利なので、先制は戴きますね! メガエナジー・フォース!」

『ルゼルの弟子、だったか。愉快』


 笑うと口から漏れる湯気が怖いねっ!

 私の身体能力と魔力をメガエナジーで底上げ。これで魔力半分使うけれど、この戦闘くらいなら持続する。それにメガエナジー・フォースの凄い所は、エネルギーを自動生産する所にある。加えてエリクサーがあるから…魔力の問題は大丈夫だと思う…多分。


「私は、娘ですよ! 最初から全力全開!」


 純粋なエネルギーを練り練り。

 綺麗な球体になるまで練って圧縮してまた練り練り……ルゼルみたいに瞬時に作製出来ないけれど、威力はいい感じだ。


『カハハッ! 奴に娘が居たか! これは良い知らせだ、受けて立とう!』

「寂しがり屋なんで祝って貰えたら喜びますよっ! メガエナジー! ストライク!」


 練り練りしたエネルギーをムドゥインに向かって放つ。

 私の手を離れた瞬間に急加速、螺旋を描きながら顔面に……ああくそ防御膜がある! 下に軌道を曲げて地面スレスレを這うように操作。顎目掛けて直撃させる!


『ぐっ……』

 顎をかち上げ、頭が天を向いた。防御膜も上に向いたっ。

 よっしゃ二撃目!


「メガエナジー! キャノン!」

 ガラ空きの喉目掛けて真っ直ぐに狙いを定め……細長く練ったエネルギーを発射!

 躱せない速度……真っ直ぐに喉元に向かって、直撃!

 貫け……ないぃ!


『がはっ……良い、攻撃だ』

 効いている……効いているけれど、防御力高過ぎじゃね?

 今の圧縮したメガエナジーはかなりの攻撃力だった筈……リアちゃんの時空結界を貫けるくらいだったのに、外皮が削れた程度。

 それも身体に生えている銀色の角が輝き、徐々に再生していく。


「硬過ぎ……でも、効いている。再生速度は速くない」

 攻撃した感触だと、ルゼルが攻撃特化だとしたら、ムドゥインは防御特化……ふむ。

 それなら、頑張ればイケるか? ムドゥインの攻撃力次第だけれど……

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る