ジョーカー試練、二戦目。次は勝ちたいぞっ
じー……可愛い子と目が合っている。
「……あの、そこの子は誰ですかね?」
「ん? あぁ…毒酒か。寝るか?」
「……ぅん」
「毒酒ちゃん久しぶりー」
毒酒ちゃん…って確か今代の邪神の一人だったっけ。
大人しそうな雰囲気の中に狂気があって、私の好みドストライクの可愛い子だな…邪神って言われなければナンパしているだろう。人見知りって話だけれど…
上手い事みんな散らばって寝ているから、どこに寝るか少し迷っている。
「……こっち、あいていますよ」
「……ぁりがと」
「……可愛い…私、アレスティアといいます」
「……私、
毒酒ちゃんが私に向かって横になった。目が合っている…じー。
ヘルちゃんは寝んね中、ルゼルとノワールさんはボソボソ話しているので、毒酒ちゃんと話すチャンスだな。
「邪神って何をするんですか?」
「……その世界で強そうな奴の前に出て、心を折る仕事」
「へぇー、裏ボス的なあれですか。じゃあ色々な世界を渡っているんですか?」
「…ぅん。アレスティアは、どんなお仕事?」
「私は、どんな仕事…かぁ…ゴロゴロして、旅行して、こうやってお喋りして時間を無駄にしています」
「……良いなぁ」
私の仕事って、なんなんだろうな。
パンパンで給料貰っている訳でもないし、幼女とゴロゴロして、地球で好き勝手やって、ヘルちゃんやルゼルと何かしている毎日。新しい世界へ行けば、色々な歴史が視られるけれど、ただいま申請中。
つまり私は遊んで暮らしているのだ…前からそうか。
「他の邪神さんは一緒じゃないんですか?」
「…ぅん、みんな実家に帰省中だから…暇なの」
「じゃあ私と一緒に帰ります?」
「……ぁりがと。でも、私は危険だから」
「危険?」
「アスティ、人間が毒酒に触れたら死ぬんだ。毒が強すぎてな」
じゃあパンパンにお持ち帰り出来ないか。
みんなは実家、か。毒酒ちゃんは毒が強すぎて、居場所が無い…のかな。
だから玉座に居たのかな。
毒を隠したり弱めたり出来ると思うけれど、それをしないのは何故だろう。
「慣れてるから、大丈夫」
「……抱き締めちゃっても良いですか?」
「駄目」
「私は人間じゃないので、毒には掛かりませんよ」
少しずつ近付いてみると、逃げないからそっと抱き締めてみた。
……確かに、毒が強い。ヘルちゃんでも一分持たないレベル…でも私には毒の利かない世界を薄く挟んでいるから大丈夫。挟まなくても死なないけれど、もしも私の人間の方が死ぬと大変なんだ。
「……無理しないで。気持ちは充分だから」
「無理なんてしていませんよ。私に毒は利きませんから」
「……あったかい。安心、する……」
「毒酒、ちゃん……あれ? 寝ちゃった……」
「あっ、アレスティアちゃん…もしかして毒酒ちゃん寝かせたの? 凄いね」
「確かに凄いな。毒酒は警戒心が強いから一人じゃないと寝ないのに…流石は私の娘だ」
「なんか嬉しいですね。がっちりホールドされて毒酒ちゃんアーマー状態ですよ」
「それ……試練大丈夫?」
「毒酒は寝たら中々起きない……一週間くらいは寝る」
「……困りましたね。一応……ルールではサポートに一名付けられるので、何とかなりますが……」
毒酒ちゃんアーマーだとまともに動けないな。
ルールでは私とコーデリアに加えて、サポートに一名付けられる……テンちゃんに頼もうとしていたけれど、今回は仕方ない、か。
「無理に起こしたら大変だから、仕方ないね」
「そうだな。無理に起こしたら大惨事だ」
「……そんなに凄いんですか?」
「寝惚けて辺り一面毒の海になるの」
「大変だぞ。掃除が」
「人の領域に連れていけないですね」
パンパンで寝かせたら全員死ぬな……ここで会えるからいいか。
「まぁね。でも毒酒ちゃんってみんなに愛されているんだよ。天異界にもファンがいるし」
「へぇー邪神なのに?」
「うん、有名な話があってね。邪神ってセツ、天空、毒酒、絶の四柱なんだけど……当時、理由は伏せるけど神の軍が二千と、人の軍が二十万、精霊軍一万の大戦争が起きた事があって……その戦いにセツちゃんが巻き込まれたの。そこでをセツちゃん助けようと、絶ちゃん天空ちゃん毒酒ちゃんがその戦争に乗り込んだの……」
「……凄い戦いですね。どうなったんですか」
「結果だけ言うと、全員生き残った。拘束されたり、大半は毒で動けなくなってね」
「あれで一気に邪神セッテンシュゼツが有名になったな。誰も殺さずに戦争を終わらせた英雄だ、ってな」
「凄いで済む話じゃないですよね……そんな事、可能なんですか…」
目の前に英雄がいるのか…視たい。起きたら視させて貰おう。
楽しみだな……寝ているからチューして良いかな……
おでこにチュー……
その後はだらだらお喋り。
だらだらしていたらヘルちゃんが目を覚まし、まただらだらお喋り……だらだらしていたらノワールさんが帰り、試練の時間が来たので解散した。
試練の座標が送られてきていたので、その座標へゴー!
着いた先は荒れ果てた大地……を背景にコーデリアが私を抱き締めていた。
よーしよーし、元気そうで何よりだよ。
挟まれている毒酒ちゃんが苦しそうだ。
「お姉さまっ。会いたかったです!」
「やぁコーデリア、ご飯食べているかい?」
「はいっ! あの…こちらの方は?」
「あぁ、毒酒ちゃん。寝ているから、その内起きると思うよ」
試練は死の星で行う。
世界を復活させる代わりに、好きに戦わせてもらうから。
コーデリアが転移してきたので、頭を撫でると甘えてきた。見た目はお色気お姉さまなので、ギャップが良いね。
「先ずは世界を復活させるから、待っていてね。世界よ戻れー」
……
……
……
戻った。
壊れたらまた時間を戻すから、私の労力がハンパないね。
一応誰かが死んだらこの星に時間を戻して貰って、復活する約束はした。
だから全力の殺し合いができる。
「……来ますね」
「あー、魔力高いなぁ……」
……次元の歪み。
来たか。
『いやー楽しみ過ぎて全然寝られなかったぜー。初めまして、フラマフラムだ』
「初めましてフラマフラム様、アレスティアです」「コーデリアです。よろしくお願いします」
『様はいらない、フラマで良い。俺達は対等に戦うのだからな』
「わかりました。あの…補佐の方は居ないんですか?」
女神フラマフラム。アスターでは火の女神、戦いや力の神とも云われる豪傑。
深紅の長い髪に、力強いつり目に綺麗な紅い瞳。紅い戦闘服がよく似合う。化粧っ気は無いけれど、凄く綺麗だ。フラマの好戦的な笑みに、私の心も熱くなる。
例えるなら、フラムちゃんを大人にして力強くして威圧感満載にして乱暴にした感じ…うん、似ているのは名前だけだ。
『安心しろ、もうすぐ来る…おっ、丁度来たぞ』
「「……」」
──ズシンッ! ズシンッ!
「……お姉さまぁ…」「……まじか」
……いや、いやいやいや、これは、補佐、なのか?
見上げる程の、真っ黒い体躯……身体の至る所には銀色の角が突き出し、太く力強い二本の脚で立つ姿に……全私が戦慄したよ。
強さの代名詞……ドラゴン。
駄目だこれ、フラマより強い。
『核星竜・ムドゥイン。俺の相棒だ。可愛いだろ?』
「核星……まさか……」
『あぁ、お察しの通りルゼルと同じ、星の核をエネルギーに活動する種族』
「おっふ……」
うわぁ……フラマすっごい嬉しそう。戦うの大好きなんだね……わかるよ、一昔前の私も同じ気持ちだったから。
『さぁ! 始めようか! 俺の相手はどっちだ!』
「コーデリア…明らかに戦闘狂のオラオラ女神と、ルゼルおかぁさんレベルのドラゴン……どっちが良い?」
「出せる答えは……涙です……」
「……甘いね。私の方が先に泣いている」
「お姉さまぁ……」
私とコーデリアは、きっと同じ事を考えているだろう。
ナニかは言わない、一応未来の為に戦うんだから。
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