早く女子会に行きたいからね


さて、一度帰るか。ママンに会いたいし。


「今頃思い出していそうですね」

「いや、まだ気付いていないでしょ。おかぁさんに会いに行くから、もし二人が来たらよろしくね」


「かしこ」

 この次元転移陣使ってみるか。

 ……踏めば良いのかな。

 ……動かない。


「これどうやって使うの?」

「ご主人さまはわたくしを椅子にしないと動きません」


「そうなんだ、椅子になれ」

「喜んで!」


 よし転移。

 あっ、雌豚も来ちゃったじゃん。まぁ良いか。

 転移した先は……パンパンの私の部屋だな。なぜにここさ。


「えーっと、おかぁさんは…居ないな。裏世界の家かな? 次元転移」


 アラスには居なかったから、裏世界のお城へゴー。

 ルゼルの部屋に到着すると、ルゼルが今日のおにぎりを撮影している所だった。

高級なお皿に乗った二つのおにぎり。神々しいおにぎりだな……きっと神気を込めて握っているから、エリクサー並みの効果を持ったおにぎりなんだろう。

それを色々な角度からゴツいカメラで撮影……髪を耳に掛ける仕草が素敵ね。


「おかえりアスティ」

「おかぁさんただいま。一緒に寝ましょ」


「良いぞ。ちょっと待ってな……そういえば試練は近日中か?」

「はい、次はフラマフラムさんと戦うんですよ。緊張します」


「あぁ、暑苦しい奴だからなぁ…」


 アスターの女神は、ラグナレヴィアさんを筆頭に、フラマフラムさん、ヴェーチェルネードさん、アクアマリンさん、テラティエラさんの五柱の女神がいる。昔はもう一柱居たみたいだけれど、今は五柱らしい。

 それぞれの女神に補佐が数名居て、ノワールさんはテラティエラさんの補佐だ。補佐と言っても強さは女神に匹敵するらしいから、簡単には勝てないだろうね……特にサヴァ。


「みんな武神装を使うんですよね? 私は閻魔さんが行方不明だから、どうしようかと思っています」

「主力武器は、包丁と折れないソードとカツオか……何か我の武器使うか?」


「良いんですか? 是非見せて下さい!」

 やったー! ルゼルが武器を見せてくれるってよ!

 折れないソードは直して貰ったけれど、黒異天体以外に決定打に欠けるしなぁ……

 魔装・負の根源は使えないし、私の戦力が低いんだよね。コーデリアはサポート特化だし。

 一応覇道と戦った時に失くしていた三徳包丁は持っている……ルナリードがくれたからね。


「これなんてどうだ?」

「……これ、ミサイルランチャーですよね。名前はなんですか?」


「ミーたん。弾は一分待てば装填されるぞ」

「……うーん、流石に他のにしましょう」


「じゃあ、これだ」

「ブレードランスですか。もう剣出す気無いですよね……重たぁ!」


 格好良いんだけれど、扱いにくいからなぁ。エナジーパワーが無いと非力だし。

 名前は斬竜槍・デュグボルグ。名前がまともだ…曰く付きの武器なんじゃないか?


「フラマに近付いたら焼けるから剣は危険だぞ。弓とか使ってみるか? これだ」

「弓……自体は良いですね。白と緑のグラデーションが綺麗……なんか凄くネギ臭いです」


「神弓・ネーギィレイザーだ。万能属性と呼ばれる特殊な属性だからフラマにも効果的だぞ」

「ネギ部分だけ取り除いて下さいよ……万能ねぎに掛けたんです? 他に弓は無いんですか?」


「……仕方が無い。これは失敗作だが」

 おっ、見た目は普通だ。何かの素材で出来たシンプルな弓。持ってみると凄く馴染む……これ凄い弓なんじゃないか? 矢は魔力を込めると出てくるから無制限っぽいし。


「凄い弓ですよね。どんな効果があるんですか?」

「神魔弓・アルテネスだ。魔力を込めれば込めるほど強力な矢が生成出来る…全く、つまらん効果しか付かない失敗作だよ」


「これにしましょう。これが良いです」

「……やだ」


「……じゃあ全部使いますから」

「……」


 渋々了承してくれた。

 私とコーデリアって火力が微妙だから、これで強化されれば良いけれど。


 ……あっ、ヘンリエッテから帰って来いの連絡が来た。

 可愛い画像を寄越せと連絡。

 ヘンリエッテのあざとい顔が送られてきたので、私のあざとい顔を送ってやった。背景にルゼルが映っていたからルゼルのツーショットを要求され、私はミズキと史織のツーショットを要求した。


「おかぁさん、最高に可愛い写真を撮りましょう」

「任せろ」


「ムルムー、撮って」

「御意」


 雌豚に座りながらパシャリ。うん、可愛い。

 お、丁度猫耳があったな。アスにゃんがママンに甘える構図……ルゼルもにやけて良い感じだな。

 送信、と。


 ヘンリエッテから一言、卑怯。勝ったな。


「おかぁさん、勝ちました」

「我らに勝てる訳ないだろうに。直ぐ帰るなら行って来て良いぞ」


「はーい、あっノワールさんに連絡してからにします。気になる事があったので…ぽちっとな」


『はーい、アレスティアちゃーん』

「聞きたい事があるんですが忙しいです?」


『大丈夫だよー。なぁにー』

「えーっとですね……おかぁさん、どうしたんです?」

「……別に」


 ノワールさんと話していたらルゼルが寂しそうだったので、スピーカーにして女子トーク…あっ、これ時間がいくらあっても足りんな。

 地球の時間との流れを変えれば良いか。




 まだ足りないから後で集合して話す約束をして、ルゼルの部屋から松田家の元の場所に次元転移。

「「「……」」」……なんか凄いびっくりされている。

 完全に硬直だ。

 そうか、猫耳だったからか。猫耳を仕舞い、地味メガネを装着。


「少し所用がありまして、お待たせ致しました」

「いやいや黒金何に座ってんのさ」


「何に? 雌豚ですよ」

「いやいやいやキョトンとしないでよ。びっくりするでしょ」


「そうですか? 雌豚、帰って良いぞ」

「かしこ」


 雌豚が消え、とりあえず床に正座してみんなが落ち着くのを待とう。

 ……ご飯中だったのね。

 良いよみんな食べていて。パパさんと話したら帰るから。


「これを、あげるよ」

「これは…女神の情報、ですか……詳しいですね」


「まぁ、一緒に戦ったからね」

「そうでしたか。ありがとうございます。お礼に何か知りたい事や、お願いがあれば聞きますよ」


「……いや、いいんだ。知っても仕方が無い」


 良いなら良いか。

 何か知りたい事がありそうだなー。あっ、元カノの話か。なら奥さんいるのに聞きにくいよね。

 ふっふっふ。


「そうですか。あっ、史織さんの事ですが……」

「許してやってくれないか…僕ができる事なら何だってするから」


「それは、史織さんがどうしたいか、ですね。謝るだけならこの話はここで終わります」

「……」


 さらっと話した感じ、史織は異世界に憧れている。帰還者の話を聞いて、自分も行きたいと思っているんだろうな。

 恐らく、異世界の良い事しか言わなかったんだろう。地球とは違う環境なら、憧れても仕方ないけれどね。

 史織は黙り込んでしまった。触れないようにヘンリエッテの話に合わせていたみたいだけれど、私はごまかせんぞ。


「答えは今じゃなくても良いですよ。ところでお子さんに異世界の話はしているという事ですが……パパさん、苦労した話は分厚い布で包んだマイルドな話にしていませんか?」

「……いや」


「例えば、酷い裏切りにあったとか……大切な人を失ったとか」

「まさか、そんな事ないさ」


「そうですか? 不壊の勇者の話は有名ですがね」

「なぜ、それを……」


 パパさんはノワールさんの知り合いだったみたい。アスターで勇者をやっていたみたいだね。他シリーズの話だから割愛するけれど、元カノはヴェーチェルネード様らしい……良いネタ仕入れて私はご機嫌だよ。


「ママさん、知りたくないですか? 私が仕入れたパパさんの情報……結構イケイケだったみたいですよ?」

「知りたい! 教えて下さい!」

「いや…勘弁してくれ…」


「ふふっ、良いでしょう。ですが今日は、おかぁさんの家に行くのでまた今度です」

「えー黒金帰るのー?」


「帰ります。女子会があるんです」

「誰と女子会なの?」


「おかぁさんとノワールさんとヘルちゃんと私です。ではまた」


 早く女子会がしたいので、アラスに寄ってヘルちゃんを拉致してから……うん、リアちゃんが物陰からジーっと私を見詰めている。


「行きます?」「いかにゃい」

「……どうしたんですか?」「私の出番が少にゃいの」

「来れば良いじゃないですか」「裏世界には行けにゃいの」

「今度はアラスで女子会しますね」「うん」


 リアちゃんが甘えて私を行かせまいとしていたけれど、約束は守るのでまた今度。

 ヘルちゃんと一緒にルゼルの部屋へ行き、ルゼルと一緒に女子会の場所…玉座の間に到着した。

 とりあえずノワールさんが猫耳希望だったので、アスにゃんで入場。


「どうしてここなんですか?」

「ここは床暖房と絨毯のコンボが最高なんだ」


「あっ、解ります。玉座の間の外でさえ気持ち良いですよね」

「お邪魔しまーす、あっみんな来てたんだねー」


 ノワールさんも来たから、メンバーは揃ったな。

 ……誰か玉座に座っているけれど、スルーで良いのかな?

 閻魔じゃない誰か。

 私と同じくらいか年下くらいの紫髪の女の子。

 みんな気にしていないからいいのか?


「……じゃあ、適当に喋って良いぞ」

 あっ、ルゼルがパタリと絨毯に倒れた。続いてノワールさんもダランと絨毯に横になり、ヘルちゃんも横になった。

 私も身体の力を抜いて仰向けに倒れる。

 気持ち良い……疲れが取れていく。というかこの絨毯に寝ると疲れが取れる魔導具だな……

 ……みんな各々に雑魚寝しながら、だらだらとした会話が始まった。脱力し過ぎでしょ。ヘルちゃん寝ているし…

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