あ、ありがとう…

 

「元主様は好奇心旺盛でして…悪ならとことん悪を貫こうと思ったのか、リストのタイトル通り『悪者色々ごった煮闇鍋作戦』という恥ずかしいタイトルを使い恥ずかしい結果に終わった次第です」

「うん、それ言わなくて良いよ。読んだから」


 せっかくダセぇタイトルスルーしたのに。

 つまりはまぁ、ルナリードが封印していた天明が復活したと見て間違いないか。

 何か忘れているような気がするけれど、今は天明が動きを見せたら黒異天体をぶっ放つようにしないと。


「天明の方が生命力が強く、封印が限界になりました。そしてコ……ディア様が天明の再封印をする為に黒金とご主人さまに会いに行ったのですよ」

「なるほどねぇ。だからあんな無茶を…教えてくれりゃ、手伝ったのに」


「なにそれ…知らない。クソメイド、本当なの?」

「ええ、本当ですよ。貴女方処女達は、破壊神の力を繋ぐ為の手駒に過ぎなかったという訳です」


 破壊神の力を繋ぐ、か。

 神だから、役割を果たさないと力が減る。世界の破壊を行ったのはその為? うーん、なんか過激な発想だよなぁ…他にも方法はあるのに。

 ディアはみんなに天明とルナリードの事を伝えていない訳か。

 一番重要な事なのに。

 でも、ディアの眼には覚悟があった。決意があった。己を犠牲にしてまで守りたい事がある眼だ。

 きっと、この子達には背負わせたくなかったんだろう。

 まぁ…かと言って他世界を壊した事は駄目だな。

 Gと同じくらいの大犯罪者になる可能性が高い。


「そんなの、信じない」

「サン…ゲロメイドの言う事は本当、かも知れない。私、見たんだ…あの変なポーズの像にディア様が魔力を注いでいたの」


「……じゃあ…あのダサい像が…破壊の…」


 この子達が受け入れるのには時間が掛かるだろう。そこら辺はディアと話し合ってくれ。

 そろそろナチュラルに変な像とかダサい像とか言われると耐えきれない気分になるよ。まだ会った事も無いのにね。


「アレスティア、私達…何か手伝える…ます?」

「ナナちゃん、無理して敬語じゃなくて良いよ。じゃあ…テンちゃんを守ってくれる? 多分本気を出さなきゃいけないんだけれど…私の本気はテンちゃんと相性悪いから。テンちゃん、また後でね」


『アレスティア、気を付けてね』

「もちのろんだよ」


『チューしてあげる』

「わーい」


 ありがとう。銀仮面の口元からチューしてくれた。元気出たぜっ!


「あ、あの…これ」

「ん? これは?」


 ナナが何かを手渡してきた。

 藁を赤い紐で結んだ藁人形? それが三体…赤い紐で三連首吊りみたいな感じで繋がっている。少しキシキシ言ってオカルトチックな一品だな。

 テンちゃん…ナナのおっぱいポムポムして下唇を噛まないで…純粋に失礼だよ。


「身代わり人形。致死ダメージを一度だけ防いでくれる」

「へぇ、凄いね。ナナちゃんが作ったの?」


「…うん。首に掛けてあげる」

「えっ…うん、あ、りがとう」


 三連首吊り藁人形が私の首に掛けられた。キシキシ言う可愛いネックレス…だと思い込むようにしよう。


「私もっ、これ…使って」

「ロクちゃん…これは?」


 珠が輪っかに連なった…数珠って奴か。

 ねぇその紐、髪の毛じゃないよね?


「身代わりの数珠。悪い事を一定数無効化出来るの」

「凄い効果だね。これはロクちゃんが作ったの?」


「そう。あの、着けて…あげる」

「えっ…い、あ、ありがとう」


 そんな可愛い上目遣いで言われたら断れない。

 あぁ、少しゴワゴワする数珠が右手首に装着された。

 完全に見た目呪い装備だけれど、数珠ってたまに流行るらしいからお洒落の先取り…だと思い込むようにしよう。


「ご主人さま…」

「お前のはいらない」


「ひぐぅっ! ならばわたくしが着けますっ! お見せしましょう金色に輝く亀甲縛りをっ!」

「目障りだ。みんなを連れて去れ」


「ふみゅぅっ! かしこっ!」


 さて、雌豚がみんなを転移魔法で遠くにやった所で、天明が凝縮されたバリアを広げ始めた。

 そろそろ限界か。

 よし、強力な魔法でもお見舞いしよう。


「黒異天体解放。全方位重力」


 天明に黒異天体を向け、くるくる回る星を一つ解放。

 黒いエネルギーに包まれ、凝縮されたバリアごと全方位からの重力攻撃。

 私は魔法陣が苦手だけれど、魔法装置には長けているのかな。


 全方位重力で圧殺し、復活しても圧殺。

 復活する場所が死んだ場所なら、その場所を圧殺ゾーンにしてやればずっと殺せると思ったけれど……これ、切り無いな。


「雌豚、来い」

「お呼びですか?」


「これどうすりゃ良いんだ?」

「…さぁ? 元主様もお手上げでしたから」


「能力はリスポンと再生と、後は何?」

「沢山ありますが、強い能力は…邪悪、混沌、破壊、魔法大全、神格上げ、最適化…ですね」


「…邪悪、混沌、破壊以外を詳しく」

「魔法大全は、全属性の魔法がある程度使えます。神格上げは一定条件で神の格を上げられます。最適化は、相手が強ければ強い程に順応します」


 邪悪、混沌、破壊は私にはあまり効かないから除外。

 厄介なのは最適化か。

 どんどん強くなっているんだよなぁ…

 全方位重力でどれくらい持つか…


『我等が身に…宿りし力よ……新たなる…力の糧と…』

「あんまり、持たなそうか。黒異天体、解放」


 もう一つ、星を解放。

 空間にポッカリ空いた黒い穴…ブラックホール。

 圧殺した天明を、全方位重力ごとブラックホールに吸い込んだ。

 ……これで復活しなければ……良いけれど……


 ……お? 勝った?

 ……


 ……あぁくそ、次元の歪み。


『クハッ…ハァ、ハァ、今のは…危なかった…』

「くそっ、早く死になよ」


『もう、何百と死んでおるぞ』

「完全に消えて貰いたいんだよ。でも、今ので力を飛ばせた」


 黒異天体で強くなった天明の力は、今の一撃で結構減った。

 つまりは、強力過ぎる一撃を放てば力を削げる…かな。


『飛んだ訳では無い。力を使い、能力を得た』

「能力? …重力系の耐性、か。全方位重力」


 試しに全方位重力を天明にぶつけてみた。

 死にはするけれど、さっきより死ぬのが遅い。

 でも、耐性を得たという事は死に続ければ耐性が上がる。黒異天体が効かなくなったら、いざという時に困るし。

 仕方ない、やるか。


『新たなる方法で殺してみるか? 我等は、必ず乗り越えてみせるぞ』

「はっ、やってみろ。邪悪、混沌、破壊魔装・負の根源」


 黒いエネルギーが私を包み、魔装が形作られていく。

 黒いフードのローブに、左手には黒い腕輪。


 ……ちょっと待てよ。

 黒ローブに銀仮面、左手には負の腕輪、右手にはロクに貰った黒い髪の毛の数珠…首からはナナに貰った三連首吊り藁人形…手には三徳包丁…あれおかしいな、すげぇダセぇぞ。

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