本気を出すと、私の身体がもたないな…
『…素晴らしい。我等の一部が嫉妬するのも無理は無い』
「はっはっはー羨ましいだろー。能力破壊」
『我等には効かぬ。大禁術・クリムゾンフレア』
「うわっちぃ!」
熱っ!
マグマに突っ込んで爆発したみたいな熱量…ダメージゼロ貫通しやがった。
幸いナナから貰ったキシキシ言っている藁人形は無事だ。
あれ? 藁人形ちゃん…パタパタ動いているじゃないか。もしかして、負の力でパワーアップしたのかね?
いやそれよりも能力破壊が効かないのは痛い…痛すぎる。
破壊の力を持っているからか…厄介…ルナリードから吸収したんだな。
ちょっとどうするかなぁ…
『我等の、番だ。大禁術・タービランステンペスト』
「あぁもう、骨折れた。エナジーヒール」
なんだよこの規模。
初撃でいきなり骨折れた。
乱気流が凄くて、今空を飛んでいるよ…物理的に。
ったく、馬鹿みたいな魔力で発動しやがって…
瓦礫が私に当たる当たる。
当たった瓦礫は痛く無いんだけれど、砕けた瓦礫が目に入るから辛い。
目を擦ろうとすると、ロクから貰った髪の毛数珠から出た髪の毛が目に刺さった…
ねぇ数珠ちゃん…お願いだから動かないで。痛怖いんだよ。
『負の力は、正の力に弱い。大禁術・アブソリュートゼロ』
「ぐっ…身体が…」
絶対零度のエネルギーで、飛ばされている途中で強制停止。
空気まで凍って、動けない。
でも藁人形ちゃんは動いて……藁人形ちゃん…やっぱり、パワーアップしている。
『キシ…キシ…アレ…スティア…』
いやぁ…喋ったぁ…
『大禁術・ギガタイラントマグナム』
まじ、かよ。
空に蓋をしたような、巨大な岩。
これ…イッきゅんの得意魔法…
大陸落下魔法じゃねえか…
これが落ちたらまずい…
「気休め…だけれど、ダメージゼロ」
死の星に向かって、零魔法を放った。
これで、ある程度のダメージは相殺されるけれど…壊れない事を祈ろう。
あっ、潰される。
『ふむ、負担が大きいな。流石にエーテルロジックは出来ぬか。仕方がない…エレメンタルローテーション』
埋まったな。落下の大地震で盛大に埋まった事は解る…凄い音だったから耳がキーンとしているよ。
「……」
数珠ちゃんが強い力で私を引っ張ってくれている…でも埋まっているから手首が取れそう。
『ウ…ゴ…レ…スティ…ア』
やだぁ…喋ったぁ…
というか…私を助けたいなら私から力を吸収してパワーアップしないでおくれ。
ん?
……なんだ……この、エネルギー…っ!
埋もれている周辺が…溶け始めた。マグマに変化しているのか…
この熱量…まずいまずい逃げなきゃ!
「…転…移」
上空に向かって転移。
空中なら…
『クハッ、待っていたぞ』
空中で待っていたのは…マグマの…竜巻。
「――ぐぅぅ!」
竜巻に切り刻まれ、切り刻まれた場所に高熱が入り込み、痛みが倍増していく。
これ以上は…死ぬ…
『土、炎、風と廻り、最後は水…』
「はははっ…やべぇ……エナジー…バリア…」
マグマの竜巻に、大量の水が入り込み…
大爆発を起こした。
今、何処にいるのかも解らない程の衝撃で…
吹き飛ばされているのはなんとなく解る程度。
感覚も…薄い…
死ぬかも…
ブチ。
ブチ? って何の音だ?
『アレ…スティア…さよ…なら…』
藁人形ちゃーーーん!
一体…ポトリと落ちて…灰になった。
ごめんよ…ごめんよ…
……早速、致死ダメージか…情けない。
ナナから藁人形ちゃんを受け取っていなかったら完全に死んでいた。
命の恩人…いやそもそも私は拐われた立場だから被害者だぞ…
亀甲縛りで拐われて、雌豚にハァハァされ、イチに決闘を挑まれ、天明が復活して結局私が対処して……
なんか、腹立つな。
本気…出すか。
『驚いたな。再生禁術も無しに、まだ…生きているか』
「ふふ…ふふふふふふ……零魔法・スピードゼロ、裏魔法・累積ダメージ」
『がふっ……くっ、くくっ……懐かしい、痛みだ』
「深淵魔法・暗黒封印、混沌魔法・カオスシールド、破壊魔法・崩壊結界、裏禁術・亡者の黒檻」
行動を止め、累積ダメージで怯んだ隙に、封印魔法連発。とどめに無数の黒いミイラで出来た檻に閉じ込める。
うわ…怨嗟の叫びを響かせながら、黒いミイラは天明にしがみつき黒い団子状に蠢いていた。
「きしょ…終わらせてやるよ。破壊剣、フルエナジーパワー、禁呪術・不死滅術式」
破壊の力を三徳包丁に乗せた…あっ、また邪悪と混沌も付いてきた。セットなのかな…血盾さんよろしく。
前よりも、歪な禍禍しい剣。
私の力が上がっているのか、それとも負の力が上がっているのか。
ちょっと使い過ぎ…だよな。
――ヒャッハァァア! ウィチゴパァンツ! ヤッパリオナカイタイカララメェエエ!
相変わらず不完全な、力だな。
だからこそ、美しいのかもね。
さぁ、目一杯溜めてやろう。
『神でも……無い…のに…ここまで…使いこなすか……』
「絶望を乗り越えた女神の血を引き、呪いと共に最期を生きた魔王の力を受け継ぎ、そして破滅を根元に持つ私は…神にはなれない」
『……いや…愛されて…いる…というのか…』
「私は神を討つ存在……咎人だ。裏奥義・神殺し!」
黒いミイラの檻に向けて、負の力を解放した。
真っ黒い円柱が聳え立ち、内部では破壊した場所から混沌の呪いが入り込み、深淵の力で擂り潰していく。
『がぁぁあ! ぐぅっ、何故…死なぬ…』
「死んで…耐性が付くのなら、死なない呪いを…ぐっ、付与すれば…良い」
不死身の呪いは、以前サーストから視た事がある。だから、不死身の呪いを神殺しに混ぜた。
苦しみの中で、簡単には死ねない。
おとぎ話の、地獄の刑罰のように。
『……力が…足り…ぬ』
「……くっ、まだ、足りない、な」
ちょっと、神殺しは、負担が大きい。
なんとか保っているけれど、長期戦になるとバテる。
『仕方が…ない…この星…から…貰うか…』
ロンドの時みたいに宝石にして封印するか。
…ギュー…っと、ギュー……細くは、なった。
あとは上からギュー…っとギュー……ギュー……いかねぇ。
「流石に…抵抗するか…血盾さん…いける?」
――ナントカイケルヨォォオオ! チョットダケネェェエ!
「零魔法…リミッター…ゼロ」
――チョットダケダヨォォオオ! ラメラメラメェェエ!
これは…キツイ……
全身がバラバラに引き裂かれているみたいに…筋肉がブチブチちぎれている……でも、これくらいしないと。
神殺しの細い柱に、歪な剣を当て…力を、込め…
『……まだ…まだ……』
「裏…奥…義……神滅」
神殺しの力を…暴走させて、無理矢理操作。
螺旋を描くように、捻りながら破壊。
再生する身体に、弱体化の呪いを織り込んで…深い場所…魂を侵食。
「ごふっ…」
自分の技で内臓がズタズタだな…これで駄目なら…ちょっと…私が、駄目かも…
『…が…あ……め…だ…』
「負け…るかぁ! いけぇぇえええ!」
神滅を捻りながら凝縮。球体をイメージしながら少しずつ小さくしていく。
もう少し…もう少し…
『さ……う…だ…えが……い…』
左手を伸ばして…凝縮された黒い球体を…掴んだ。
「がはっ…はぁ、はぁ……」
やって、やったよ。
あぁ…疲れた…
……大丈夫…だよな?
とりあえず動けん。回復しないと……エナジーヒール。
……回復が遅い……まぁ、終わったしゆっくり回復するか。
……
……終わったのに誰も近寄って来ない。
……辺りを見渡すと、みんなが私の様子を伺っている。
まぁ、そうだよな…負の根源に近付くなんて難しいか。
でも回復してからにしないと負の反動で死ぬな。
……よし、回復完了。
解除っと。
……
解除っと。
……
あれ? 解除出来ない。
なんで?
『……クハッ』
「えっ?」
――パァン!
左手が、弾けた。
無い左手越しにコロコロと転がる黒い球体を、呆然と眺めていた。
『死の星から搾取しなければ本当に、危なかった。アレスティア、良い事を教えてやろう』
「……」
『我等が封印されている間、破壊神の力と引き換えに一つ能力を得ていた』
「……封印、耐性か」
『クハハッ、正解。お前は頭だけは良かったものな』
「…ふざけやがって」
黒い球体から、神滅のエネルギーが天へと噴き出し、無傷の天明が現れた。
少し神滅の力を吸収しているのか、前よりも強い。
それに、片翼では無くなっていた。
蜘蛛の脚のような…黒く禍禍しい翼。
『お蔭で、思い出した。礼を言おう』
「……何をだよ」
『こちらの話だ。では惜しいが、滅しよう。汎用型魔法陣、大量複製』
見渡す限りの、無数の魔法陣が出現した。
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