パワーアップ中なので、欲望には勝てません。

 

 さて、用意するものは手の平サイズの黒い宝石。ロンドを神殺しでゴリゴリしてギューッてした一品。

 これをどう吸収しようかな。

 瞳で吸収するのが一番簡単だけれど、その場合邪悪、混沌、破壊の力を解放しないと能力が使えなさそうだ。


「大きいので圧縮してみます」

『小さくするなら不純物は取り除いた方が良いぞ。ロンドの身体部分とか』


「なるほど。ポイッとな」


 要らない部分を破壊の瞳で取り除いてみる…おっ、半分以上減った。

 後は…そうだ、能力ごとに仕分けっと。

 えーっと…ロンドの力は零魔法、次元魔法、冥魔法、蒼炎魔法、嵐雷魔法、重力魔法…後は細かい魔法や特殊能力か。

 特殊能力は…自動回復、服作製、戦術、想像力、耐圧、耐水、不老、身体操作……等々沢山ある…


 因みに結界内で作業中なので、お爺さん神を倒した男の声は聞こえない。何か訴えているけれど、無視だ無視。あっちいけー。


『ほぅ…中々上手だな』

「はい、飴玉くらいにして飲み込めば直接私の身体に吸収されますから。あっ、この身体は本体じゃないですけれど、大丈夫ですかね?」


『魂に刻まれるから大丈夫だ。あっ、蒼炎魔法と嵐雷魔法は相性が悪いな』

「それは誰かにあげようかなと思います。他も合わなければ取り出せるので」


『一番必要なものから飲み込んだ方が良いぞ』

「はい、じゃあ次元魔法から…」


 小さな飴ちゃんの大きさに分けた黒い宝石を飲み込む……無味無臭だな。今のところ特に変化は無い。消化吸収されるまで時間が掛かるのかな。

 魔法系を一通り飲み込んだ後…変化があった。


『ん? 今の内に能力も飲み込んでおけよ』

「あっ、はい、なんか、身体が、熱い、ですね」


『少しの辛抱だ。馴染むまでが勝負だから』

「はい、んぐっ、これで、全部、飲み、ました」


 身体が熱い…力が…みなぎる。いや力というより異物感なんだけれど、この台詞を言いたかった。

 蠢く力が直接身体に染み渡っているから、頭の先から爪先までジンジンして…ルゼルは汗ばむ私を美味しそうに眺めている。


『力を受け入れるんだ。基本能力と一緒に熟練した能力も入っているから、時間が掛かっても良い』

「は、い…んっ、ちょっ、と…場所…を…ぁっ」


『…そうだな。移動するか』


 流石にハァハァしているから恥ずかしいぞ。

 深淵の瞳が発動した時よりも辛いというか感覚過敏になって、触れられただけで声が洩れてしまう。


「んぅっ、おかぁさん、おかぁさん」

『うわぁ…可愛い…もう少し、待ってくれ…』


 ルゼルが私を抱えたまま、宮殿の奥へと向かった。奥には壁しか無かったけれど、ルゼルが壁に手を向けると壁がスライドして隠し扉が開いた。


 男が何か引き止めようと喋っているけれど、ルゼルが威圧を放ったら気絶してしまった。さらばだ。


「身体が熱い…熱いよぉ…」

『よしよし、今身体に馴染んでいる最中だから…』


 今チャンスだから沢山甘えよう。

 甘えん坊アスティちゃんに、ルゼルの顔が段々と赤くなっているのが解る。


 隠し扉に入ると、様々な機材が並ぶ場所。ここがこの宮殿の中枢部か。

 お爺さん神の家は幼女の家とかなり違うんだな…きっと家って性格が出るんだろう。

 お爺さん神は大きな宮殿に大きな機材…幼女の家は中卸業者の倉庫に最低限の機材…かなりというか神の家って自由なんだな。


 うーん…やばい…


 めっちゃエッチしたい。


「おかぁさん、エッチ…したい」

『…もう少し、我慢だ』


 感覚過敏だから、触覚、聴覚、視覚、味覚、嗅覚が濃厚な媚薬を飲み干したように凄い事になっている。

 抱っこされている部分が敏感になって、ほんの少し動いただけで頭がフワッとして気持ち良い…

 私の誘惑に耐える吐息混じりの声が聴覚を刺激し、鼓膜から骨に伝わり全体に行き渡る。

 朧気に見える美しい造形の顔、首筋、鎖骨、胸元から覗く谷間を味わいたいと心の奥底から叫んでいた。

 ルゼルの少し甘い匂いが五感を加速させて…


 まぁ詰まる所、ムラムラが天元突破しているんだよ。


「おかぁさん、チューしてくらさい。チューしてくらさい」

『くっ…まだ…駄目だ…馴染むまで…我慢だ…』


「我慢、出来ません…抱いてくらさい…辛いれす…」

『うぅ…我も辛い…』


 抱いてよー!

 首筋をカプッと甘噛みすると、ルゼルの身体がビクッと跳ねた。

 それでも必死に我慢している…むぅー。

 抱いてよー…抱いてくれないと…

 私が襲うぞー。


「おかぁさん、こっち向いて」

『なんだ…んっ…』


 こっちを向いた隙に唇を重ね、舌を口の中に捩じ込む。

 歯を閉じて私の舌を阻止しているけれど、攻略法なぞ知っているんだ。

 左手で耳をコリコリ弄り、胸元に右手を入れて…

 よし…口元が弛んだ。


「おかぁさんっ、おかぁさんっ」

『ちょっ、待て…アスティ!』


「ぁっ…すみません…調子に乗りました…」


 強い口調で怒られてしまった…しょぼん。

 しょぼん…しょぼん。


『もう…見えてしまうだろうに…エナジーバリア・黒』

「はぁい!」


 流石ママン。これで黒いバリアで外からは見えない。

 ……あっ、物語終盤で怒られたくないから自主規制しなきゃ。

 ……自主規制しよう。

 ……自主規制中。

 ……自主規制しました。


「おかぁさん、大好き」

『…大好きだぞ』


「そろそろ隙間から覗いているノワールさんと合流しましょうか」

『そうだな。あいつは純情だから刺激が強いと思うぞ』


 大分落ち着いた。

 正直まだまだもの足りないけれど、理性で我慢出来る領域だからお楽しみはまた後で。


 欲望に負けてしまった事に二人でクスッと笑い合ってから、バリアを解除すると、澄ました顔をしているノワールさん。

 ……でも顔が茹でタコのように真っ赤…可愛い。

 途中から来たので、小さな隙間から見せ付けてあげたのだ。

 と言っても首から上しか観られないような隙間だから、ナニを直接見た訳ではない。妄想してしまったな…ふふふ。


「じゃ、じゃあ捜査を、開始しますっ」

『……感想は?』


「なっ、何を言わせるんですかっ。いやっ、何も見ていませんよっ! 先ずは中枢データベースにアクセスしますっ!」

「ノワールさん、実はこのバリア…中から外が丸見えなんですよ」


「なぁにぃっ!」


 外からは見えず、中からは見える。

 ルゼルママン曰く…まじっくみらぁ号という伝説の乗り物からヒントを得たバリアらしい。


『さて、早く帰りたいから調査するか』

「そうですね」

「ぅぅ…恥ずかしい…帰りたぃ…」


 両手で顔を抑えてうずくまるノワールさんを尻目に、中枢部の調査を開始した。

 様々な機材をルゼルが手を添えて、魔法か何かで調べている。

 私は中央で仁王立ちして応援する役目だ。

 だってよく解らないから。


 …うん、暇だな。

 ロンドの力でも試して暇潰ししよう。



 ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆



 少し時は戻り、とある場所にて。


「うーん…うまくいかない……ねぇグリーダちゃん」

「どうしたの願い星ちゃん♪」


「血ちょうだい」

「うんっ、良いよ。どこの血が良い? お口? お腹? お尻? そ、れ、と、も?」


「……ここにする」

「あれ? そこ頸動脈だよっ、私死んじゃうよっ」


「死んでもリスポンするでしょ」

「やだやだー…ん? その玉なぁに?」


「…秘密」

「ふーん、へぇー、ほぉー、聖命の宝珠…なるほどねー。あっ…もしかして…願い星ちゃん…私との子供が欲しいんだねっ! もうっ、相変わらずツンデレなんだからぁー♪ らぶらぶっ♪」


「はいはい、じゃあ血全部貰うね」

「いやぁぁぁー! 死ぬぅぅー!!」


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