可愛いが止まらないね
「ご機嫌ですね」
「そうなの。今まで大変だったのよ?」
「大変そうには見えませんでしたが…ところでリアちゃんの代償はなんです?」
「私の代償は無いわよ。今まで一生懸命に生きる子供達の想いや感謝を受けて、クロスハートに蓄積していたから」
「用意周到ですね」
「ふふっ、あっそうだアスきゅんは何も影響無い?」
「私は特に…あっ、何かお礼は貰ったような…」
なにかポッケから出てきた。
虹色の…欠片? 宝石みたいにキラキラしている。
「……私は何も見ていないから、早くそれを仕舞ってね」
「えっ、これなんです?」
「星の核の欠片なんて見ていないから、早くそれを仕舞ってね」
「えー…なんか凄そうな物ですね…ぅゎっ」
星の核…少し視てみたけれど、ちょっとこれは駄目だ。
理が違う物。大事に仕舞っておこう。あっ、ママンに相談だな…これを使えば…叶うかも。
「ひめさまぁ、私にもご褒美をー」
休憩していた家を片付け、天の王が居る切り立った山を目指す。
と、その前に自殺の名所の中心へ来てみた。
私が荒らした場所だと思うと感慨深い。
相変わらず広大な砂漠が広がり、大渦は激しく回転し、鬱蒼としたジャングルには魔物が徘徊。切り立った山も相変わらず絶壁だ。
「ちょっとやり過ぎましてね、この大渦は私がここまで吹っ飛ばしたんですよ」
「だからいつまでも消えないのね」
「ついでに賢樹も吹っ飛ばしました」
「だから話し掛けてもボケていたのね」
「色々聞いても良いです?」
「うん、良いよ」
よしっ、いつもはぐらかされていたからね。
色々聞きたい事はあったんだよねー。
ありすぎて絞れないけれど…
銀色仮面を取り出して、リアちゃんをジーッと見詰めてみる。
……教えてくれそうでくれない絶妙な雰囲気を作らないで欲しいな。
「あの人って、誰です?」
「コーデリア姫と一緒に大地の王を倒した人よ。この奇想天外な場所が気になって星の記憶を視た筈だから」
「…知っているんですね。お名前は、なんていうんですか?」
「ルナリード。聞いた事あるでしょ?」
ルナリード。
破壊の神…裏世界序列三位か。
薄々感じていたけれど、私の根源について合点がいった。
ルナリードの魔力が邪魔して、この世界の魔法が上手く使えなかったんだな。
でもまだまだ解らない部分もある。
「はい、聞いた事があります。破壊神ですよね?」
「そう。驚かないのね」
「私の親百人の内の一人というだけですからね。きっとルナリードさんにとっても、私の事は道端の石程度の存在でしょうし」
「そ、そう…ドライね。もし…アスきゅんを大事に思っていたらどうする?」
「大事に? ははっ、それなら会いに来る筈です。嫌がらせを受けていたら守ってくれていた筈です。私を外の世界に連れ出してくれた筈です。だからそれは有り得ません」
「あぁ…そぅ…かぁ…」
会っても話す事なんて無い。
親百人を生贄にただ召喚されて、血をあげただけ…そこに愛は無い。実は私の存在知らなかったみたいだけれど、リアちゃんが知り合いなら嫌がらせにこの事を伝えて貰えると嬉しい。
苦労したんだから。
魔法が上手く使えなくて、陰で出来損ないと馬鹿にされて…
ムルムーが居なかったら…いや、考えれば考える程マイナスの事を考えてしまう。
話題を変えよう。
「ところで、顔の傷は治ったんですね」
「あぁ…治ったよ。恥ずかしい話、昔は自分を治すのが苦手でねー、傷だらけだったのよ」
「意外ですね。迷子は怒られました?」
「あっ…まぁ、ね」
乾いた笑いを浮かべて…怒られたんだな。
サティさんという人は親友らしい。現在は子供から大人までの玩具を作っている職人さん…因みに私が持っているデンマは師と崇める方の作品らしく…まぁ、今度紹介して貰おう。
色々込み入った質問をしているけれど、リアちゃんがご機嫌なお蔭でほとんど話してくれた。
ルビアの事も。
まだまだ聞きたい事はあるけれど、時間は沢山あるからまた今度。
「じゃあ、そろそろ行きましょうか」
「うん」
バシュンと山の頂上付近まで転移。超高原スイカを収穫しつつ、以前来た頂上までやって来た。
何も無い円形の頂上。とりあえず真上に手を振ってみた。
おーい。
晴れ渡った空に大きな白い光の玉が見えた。
二対の白い翼が美しい…
天の王が私達を見下ろすように降りてきた。
ムルムーは透明になって私を盾にしている。怖いんだな。
「じゃあ、名前を呼んであげて」
「名前? 知りませんよ」
「今名付ければ大丈夫。天の王はアスきゅんが名付け親になれば良い契約だから」
へー。
名付けねぇ。
天の王だからテンちゃんとしか思い浮かばないんだよなぁ。
私の名前から取ってティアちゃんとか?
うん、あの光線魔法は凄かったからレイティア。愛称はテンちゃんだな。
「ひめさま、今日の晩御飯はうなぎの白焼きが良いです」
「ちょっと黙ってて。名前はレイティア。愛称はテンちゃん!」
テーンちゃーん!
おいでー!
おっ、繋がる感覚…契約成立したんだな…光の玉が小さくなっていく。
数百メートルあった光の玉がどんどん小さくなり、遂には手の平サイズにまで収縮。
ポンッと気持ち良い音を立てて、白い妖精さんの姿に変化した。
『……あれ? 私…キモい龍に食べられて…それから、魔物になってずっと…宇宙を見ていた。あっ、イリアスと…幽霊さん?』
キョロキョロと辺りを見渡し、リアちゃんと私を見てもあまり状況が解っていないみたい。
というか私は幽霊さんという認識だったのか。
「レイティア、この子が…アスきゅんが世界を救ってくれたのよ」
『…アスきゅん? レイティア?』
「アレスティアだよっ。あの時は喋れなかったけれど、やっとお話出来るねっ!」
『アレスティア? あの…あいつ、倒したの?』
こてんと首を傾げるテンちゃん…かわいい…かわいい…かわいいかわいいかわいいかわいいかわいいかわいいかわいいかわいいかわいい。
ヤバい…可愛い過ぎて鼻血出そう。
ムルムーは既に鼻血がボタボタ出ている…透明だけれど服に付くのは嫌だから離れてくれ。
「うんっ。ぼっこぼこにしたよっ」
『…ありがとう。みんなは?』
「みんなも魔物に変えられてね、これから元に戻しに行くのよ。アラステアちゃんも健在よ」
『…良かった』
「それでね、あなたはレイティアとしてアスきゅんと過ごして欲しいの。数年で契約は切れるから、そこからはあなたの自由」
『…分かった。アレスティア、よろしく…』
「よろしくー!」
テンちゃんが背中の羽を羽ばたかせながらふよふよ飛んで、私の胸に座ろうとしたけれど、無い事に気が付いて泣きそうになっていた。
『…座るところ無い』
「いや、肩とか頭とかあるじゃん」
『おっぱいが良い…ふわふわしたい…』
「ふわふわは夢物語だよ」
『ふわふわ…ふわふわぁ…』
心が痛いよ。色々な意味で。
とりあえずテンちゃんは指を咥えてリアちゃんの胸を眺めながら私の肩に座り、尻のポジションを調整している……小さなお尻が当たる感覚に幸せを感じていた。
この世界の最強種と呼ばれる王種達を倒すという夢というか目標は叶える事が出来なかったけれど、それを上回る達成感は得られた。
だって、星が認めてくれたんだから。
私が一番だって。
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