それは…駄目ですよ…
サーストのカオスディザスターにより、混沌とした天変地異が起きていた。
周囲は地震と共に砂漠と化し、地面から天を貫く切り立った山々が発生。
山からは溶岩が流れ、大量の酸が吹き出し、空中には大質量の大渦が荒れ狂っていた。
星が…悲鳴を上げていた。
「お前だけは許さぬ! 全壊擊!」
「キャハハハハ! 少しはマシになったねー! 君もこの星も! エリザベス!」
『グギギギギ!』
真っ白い全身鎧を纏ったアテアちゃんが星砕きを振り下ろす。
そこにサーストの右手に嵌まっているエリザベスが体当たり。
鈍い音を立てながら拮抗している。
その隙にサーストが左手から黒いエネルギーを放ち、アテアちゃんを吹き飛ばした。
賢樹は…枯れていて…リアちゃんが魔力を送り込んで回復に努めているけれど…駄目かもしれない。
白妖精さん、早く賢樹の所へ行きなさい。
「くっ…武神装は難しいの」
「デカイの行くよぉ! エリザベス!」
『ギゴォオォオオ!』
エリザベスの口からどす黒いエネルギーが発生。頭の前で球体に変わり凝縮していく。
アテアちゃんは星砕きを構えて魔力を高め、白いオーラが武神装から溢れ出した。
「もっと良い世界にしてあげるよ! 混沌砲!」
「これ以上はさせぬよ! モードランチャー!」
エリザベスから放たれるおぞましいエネルギー。
アテアちゃんが星砕きを肩に担ぎ先端をサーストに向けると、頂点がカパリと開く。
武神装から溢れる白いオーラが星砕きの先端に吸収され、混沌砲が間近に迫った時…
「死ねぇぇえ! シャイニングフォース・ブレイカー!」
うぉぉおおお! 超レーザーすげーー!!
純白のエネルギーが凝縮したレーザーにより、混沌砲を少しの拮抗の後に呑み込み、サーストとエリザベスをも呑み込んだ。
…死ねとか口の悪い女神だな。
レーザーが収まった後…武神装は解除され、アテアちゃんは膝を付きながら息を荒くしていた。
凄く消耗している…これで仕留められたら良いけれど……
「キャハ、キャハハ…久し振りに…痛かったなぁ…」
「はぁ、はぁ、なん、じゃと…」
サーストのベレー帽は吹き飛び、軍服は所々破けているけれどサースト自体は致命傷を追っていない。
エリザベスも傷あるものの、グブグブ言いながら単眼をアテアちゃんに向けて涎を垂らしていた。
「エリザベス…まだ駄目だよ。女神を直接喰らうとお腹を壊してしまう。そうだ、僕が美味しく料理してあげるよ! カオス・デスペリア!」
どす黒い魔法陣が発生。
これは…心を殺す呪いの力。
駄目だ…それはまずい…
「ぐっ…あぁぁぁあぁあ!」
「アラステア様! あっ…あぁぁぁあ!」
アテアちゃん! リアちゃん! それに賢樹からも悲鳴が聴こえる! 駄目だ…このままじゃ全員食べられる。
『……だめ。守らなきゃ…ごめんなさい私…行かなきゃ』
白妖精さん…行かないで。
食べられちゃうから…
アテアちゃんとリアちゃんに癒しの魔法を掛け始めたけれど…あぁ…エリザベスが…
『ギブブブブ!』
「エリザベス、どうしたんだい? ん? まだ餌が残っていたのか。食べて良いぞ」
「逃げ…るのじゃ…」
「うっ…くっ…あぁ…」
『この人は…帰してあげなきゃ…フェアリータッチ』
白妖精さんがリアちゃんに回復魔法を施し、直ぐに飛び立った。
飛び立った先には、単眼龍の大きな口…
『行きたかったなぁ…あの
空を見上げ…そして…なんで、なんで私を見て笑うんだ。
くそ…見ているだけ…力も弱いものしか使えない…どうして、何も出来ないんだ。
万全であれば、戦えるのに…
『ギブブ! ギブブ!』
「キャハッ、美味しかったかい?」
「くっ…くくっ…ふっ、ふふっ…」
「まずい…イリアス! 気をしっかり持つのじゃ!」
リアちゃんがこの状況で笑って…さっきのカオス・デスペリアで、リアちゃんの心が不安定になっている。もう…戦えるのはアテアちゃんだけ。
そのアテアちゃんも弱っている。
「そうだぁ、良い物を見せてあげるよ。エリザベスの能力は…喰らった物を魔物として復活出来るんだ」
『グギャッ! ギブブブブ!』
エリザベスの口から放たれた五色の光。
その光が、形を成していく…
「なんて事じゃ…皆…」
「……」
青い光は下半身が渦になった手の長い魚人の姿に…
赤い光は炎を吐く真っ赤な炎の身体を持つ龍…
緑の光は深緑の巨鳥の姿…
黒い光は黒く淀んだ霞になり…
白い光は白銀の球体に変化…
みんな…魔物になってしまったのか…
「世界を守っていたこいつらが、世界を壊す…ゾクゾクするよ。と言っても幼体だから、次の星で活躍してもらうかなぁ。エリザベス…女神はメインディッシュだから、あの女を食べて良いぞ」
『グギギギギ!』
リアちゃん!
アテアちゃんはまだ膝を付いて動けない…私がなんとかしなきゃ!
破壊の瞳よ! 発動しろよ!
エリザベスがリアちゃんの前で大きな口を開けた…
もう、駄目だ…
「……ふふっ、やっと…繋がった。次元断裂、ホーリーレクイエム」
『グギャァァアアア!』
えっ……
エリザベスが、真っ二つに切断された?
なにが…起きた。
リアちゃんの口元が弧を描いて…
真っ二つに別れたエリザベスをグチャリと踏みつけた。
「エリ…ザベス…何故復活しない! 早く起き上がってくれよ! あぁ…あぁあぁ…うわぁぁぁああああ!」
「イリアス…お主…」
「この頃の私は弱かった…無知で、無力で、無理ばかり…」
「……僕の…親友を…」
「この魔装・戦乙女も、身体能力が上がるだけだった…懐かしいなぁ…」
顔の傷を撫でながら、大人の余裕を持つ微笑みが浮かび上がる。ガラッと雰囲気が変わった…
まさか……リアちゃん?
私の時代の…だよね?
「くそ…くそ…お前…お前だけは…」
サーストが手を下に向け、魔力を放出。
すると、辺りに散らばっている邪族の破片が移動を始めた。
…円形? じゃあこれは、魔法陣。
「でも今は違う。力を、手にした。この子達を救う力を…」
ブォンッ! っと、リアちゃんの頭上に、紫色の魔法文字の刻まれた球体が出現。
立体魔法陣…こんな一瞬で作成出来るものなのか…
「許さないぞぉぉおお! カオスの儀式!」
邪族で形成された魔法陣が鈍く輝き、どす黒いオーラがサーストを包む。これは…桁違いのエネルギーだ。
サーストの内包するエネルギーとは別の力…まるで、混沌神のエネルギーが宿ったみたい。
「ふふふっ、だから何? 魔神装・時の歯車」
頭上にあった立体魔法陣がリアちゃんへと落下、すると魔装・戦乙女の鎧に…回転する歯車が装着され、首にはネックレス型の懐中時計が下げられた。
まるで、魔導具の中身のような魔装。
これは…なんだ…あまり力を感じないような。
「これは混沌神様の力! こんな世界! 僕が粉々にしてやる!」
「この瞬間を…どれ程待ったか。さぁ…始めよう。神位魔法…タイム・ストップ」
リアちゃんが懐中時計を掲げた時…
……景色が…止まった。
アテアちゃんも、賢樹も、サーストも魔物になった妖精さん達も止まった。
動いているのは、リアちゃんと私だけ。
絵画のように止まった景色…世界を止めたというのなら、どれだけの力が、魔力がいるのだろう。
「この魔神装・時の歯車は、たった一つの魔法を使うためだけにある」
鎧の歯車は全て停止していた。
たった一つの魔法…時間を、止めたという事か。
「そう。本来時間の魔法を使用中は弱い魔法しか使えない。でも、この魔神装を発動中はその制限が無い」
ニンマリと笑う姿は、いつものリアちゃん。
…というかお話出来るのね。
……いや、ちょっと待って。
何する気?
歴史…変えちゃ駄目だよ?
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