また、力になれない…悔しいよ

 

『かぁっこいー!』『いけいけー!』『おねーさん頑張れー!』『ちょっとみんな手伝ってよぉ』『……うとぅくしぃ』


 妖精さんは戦わないのか?

 手持ちの太鼓やボトルを叩いてドンチャンドンチャン応援して…あっ、これバトルビートっていう支援魔法だ。


「狙うは…中心。エンジェリックランサー!」


 空中を高速で旋回し、屍王の胸元に槍を突き刺し聖なるエネルギーを叩き込んだ。

 少し動きが止まった…でも浅い。

 そこから更に聖なる力を流し込み、屍王が唸りながら腕を振ると同時に離脱。

 今度は真上から槍を突き刺し、背中、腕、脚と高速で突き刺していく。


「いやー、硬いなぁ。ホーリーブラスト!」


 突き刺した箇所から、聖なる光が溢れて爆発。

 身体の大きな相手と戦い慣れているな。


 いやぁ…戦い方も華やかで格好良い。

 今のリアちゃんなんてまともに戦わないからなぁ…いや、まともに戦える者が居ないのか。ルゼルママン襲来の時は見せ場無かったし。


「キャハハハハ! そんなやわな攻撃じゃ僕の屍王は壊せない! さぁ、楽しませてよ。形態変化」

『ギャォオオオオ!』


 人型から…翼が生え、首が伸びた。これは…ドラゴン?

 首が伸び、口が出来た。

 重そうに空を飛び、口から邪気満載のブレス。

 真っ黒い霧状で粘着質のブレスは、辺り一面に広がり妖精さん達が堪らず結界で防御。


「これ凄いなぁ…浄化しなきゃ。ホーリーレイン!」


 上空に上がった光の玉が弾け、雨のように降り注ぐ。

 黒いブレスに触れると浄化されて消えていった。

 アテアちゃんはまだ力を溜めている…武神装をやるつもりだけれど、まだ掛かるのか。


「お主…聖女かえ?」

「はい、元…ですが。っ来ます!」


 屍王が巨体を生かしたボディプレス。

 触るだけでも病気になりそうなのに押し潰されたら一溜りも無い。


「仕方がないの。星砕き」


 アテアちゃんが白い柄…神鎚星砕きを取り出し、ギュインとハンマーの形に変化。

 両手で持ってフルスイングー。

 ドゴンッ! と大きな音を立て、屍王をぶっ飛ばした。

 おー…巨体が打ち上げられると壮観だなぁ…良い角度で飛ばされて回転して面白い。


「うわぁ…すご…」

「伊達にボッチで女神やっとらんからの。ったく、キリエが居なくなってから忙しくて敵わん」


「えっ? キリエ? 奇遇ですねー私もキリエって人に会いたくて時間を飛んだんですよ」

「…それ、本当かえ? キリエは…どうしておる?」


「えっ、違う世界の話ですよ?」

「いや、お主あの歪みから来たじゃろ? きっと同じ人物じゃ。キリエもあの歪みへ入ったからの」


「へぇー…そうだったんですか。私が居た元の時代から…約千年前、聖女キリエは邪族を相手にたった一人で戦い抜きました。お手伝いしたかったのですが…この世界に迷い込んだんですよ」

「千年前…そうか…」


 キリエの戦いは…凄かったな。

 私の夢が変わる程に、心に残った戦いだった。

 アテアちゃんはキリエがもう居ない事を悟ったか。


「キャハッ、やるねぇ。屍王、お前はもういい。弾けろ」

「っ! イリアス、防御じゃ!」

「えー…最悪」


 うわ…打ち上げられた屍王がボンッと弾けて、邪族の雨に変わった…うわうわー…落ちてきたー! ばっちい!

 グチャリドサリと邪族の肉片がまじ嫌。

 逃げ惑う妖精さん達…口々に汚いだのくちゃいだの言ってキーキーしている。

 あっ、白妖精さんが私の方へ飛んできて、私をツンツンしようとしたけれどすり抜けた。

 やっぱり私が見えるの?


『あなた…だぁれ?』


 アレスティアちゃんだよー。

 よろしくー。

 ははははー、喋れねー。

 ゆびーむ。おっ、弱いけれど使えるじゃん。字くらいなら書けそう…アレスティアって地面に書いてあげよう。


『んー…読めない』


 なんてこった。


「よし、綺麗な場所が出来た。そろそろ、ちゃんとやろうかなぁ…カオス・ミューテーション」


 サーストの腕に嵌まっている蛇が…うげっ、ウネウネする単目の龍に変化した。趣味悪いわー。


『グギッ、グギギギギ』

「よーしよし良い子だぁエリザベス。待たせたねぇ」


『いやー! あれ怖いー!』『いやいやいや!』『逃げなきゃ!』『なにあれ…』


 なんていうミスマッチな名前だ。

 妖精さん達が怯えて賢樹の方へ飛んでいった。

 白妖精さん、君は行かないのかい?

 私の周りを旋回して、白い結界を張った。

 ……私を守らなくても大丈夫だよ。

 そんな事をされたら…


「キャハッ、喰らえ」


 速いっ。

 エリザベスが一気に伸びて口を開き…


『いやぁーー!』

『スイレーン!』『あぁ…なんてこと…』


 青い妖精さんを丸呑みにした。

 妖精さん…あぁ、くそ…こんな時に弱い力しか使えない。


『ギブブ、グギギギギ!』

『お前達! 逃げろ! 護樹封印!』

『賢樹様を守らなきゃ!』『でもっ! でもっ! スイレンがっ!』『泣くのは後!』


 樹がエリザベスに絡み付くけれど、食い破って巨大化。

 おぞましい奇声を上げながら、大きな口で赤、緑、黒の妖精さんを纏めて呑み込み…賢樹に噛み付いた。


「いかんっ! 止めるのじゃ!」

「はっ、はい!」


「キャハハハハ! そうはさせない! 大地に刻め! 混沌魔法・カオスディザスター!」


「なんじゃと!」

「きゃぁ!」


 大地が…変貌した。

 同時に、大地が悲鳴を上げるような地響きが鳴り響き…

 賢樹が枯れていく光景が映った。

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