嫌がらせにパーリーは出てみようかな

 

「フリシアちゃん、ごめんね連れて来ちゃって」

「い、いえ…あの、さっきはありがとうございました。嬉しかったです」


「あぁ…実はね、あの兵隊が言っていた姫さまって私の事じゃないの」

「えっ?」


「まぁ…とりあえず座って」


 パンパンへと帰り、バックヤードにてそれぞれ座った。もちろんフリシアちゃんは私の隣だ。

 ホールでは店員さん達が魔導テレビでグランプリを観賞中。


「ヘールちゃん、ただいまー」

「あらアスティ、早かったわね。で? その子はなんで連れて来たの?」


「可愛いかったからつい…」

「ふーん。ねぇフリシアちゃん」


「はっ、はいっ!」

「私はヘルトルーデ、よろしく」


「存じておりますっ! フリシアと申しますヘルトルーデ様!」

「様はいらないわ。後でお話しましょ」


 ヘルちゃんがクールに格好良くホールへと入っていく。口元が弛んでいるのは見逃さない。

 フリシアちゃんはヘルちゃんと話せて嬉しそう…ファンなのだろう、剣技大会を観ていたのかな。


「ヘンリエッテ…あんな場所でわっちを可愛いなどと恥ずかしいじゃろ」

「あぁ…あれはそこの白鎧の仕業ですよ」


「なんじゃとっ、わっちを喜ばせて何を企んでおるっ!」

「別に何も。あっ、ヘンリエッテ…ちょっと来て」


「なになに?」


 ヘンリエッテをキッチンへ連れ込む。

 よしっ、白兜を取ってイケメン眼鏡を解放しよう。

 一応頑張ったから、癒してやろうではないか。


「ヘンリエッテ…可愛いかったぞ」

「……ぁぅ」


「ご褒美…欲しい?」

「くっ、ください……んんっ」


 ヘンリエッテを壁へと追いやり、両手で顔を抑えて強引に唇を奪ってやった。

 …………


「続きは、また今度な」

「はぃ…」


 よし戻ろう。

 再び白兜を装着。


 戻るとフリシアちゃんは少しみんなと打ち解けていた。

 でもかなり緊張はしているな…面子が面子だし…


「うそー!」「えー!」「あり得ないよ!」

 あっ、グランプリの結果発表されたかな。


 リアちゃんは幼女を置いてホールへと入っていった。

 グランプリが気になるんだね。ミズキとヘンリエッテ、ブリッタさんと侍女さんもホールへ。

 そして入れ換わるように茶髪の幼女イッきゅんが現れ、幼女の隣にちょこんと座った。

 ダブル幼女…良い光景だ。


「アラステアちゃん、先月の食費が凄いんだけど…何買ったの?」

「えっ、いや、それは…あの…」


「まさか他世界から高級品を取り寄せてないよね?」

「そっそそそそんな事しないぞえっ。イッたんの所から黄金牛を買っただけじゃっ」


「えっ…まじ…黄金牛……一頭いくらすると思っているのっ!」

「ひぃっ! ごめんなさいっ!」


 イッきゅんが幼女に資料を渡して問い詰めている…あっ、幼女が泣きそうだ。黄金牛を一頭買いしたのか……私食べていないぞ…一人占めか?


「あ、あの…なんか…凄い所ですね…ここ、どこなんですか?」

「ここはパンケーキのお店パンパンの中だよ。食べに来た事ある?」


「あ……そ…そうなんですね。初任給で食べに来てから…よく、通っていました」

「おー常連さんかぁ。会っているかもね」


「あの…」


 フリシアちゃんが喋ろうとした時…ヘンリエッテが出てきて私にポカポカ攻撃を仕掛けてきた。

 どしたの?


「やっぱりやり過ぎだったんだよー! 神器のせいで審査対象外だってー!」

「物は言い様でしょ。絶対に勝てないから知恵を絞った結果だね。観客は?」


「大荒れに決まってんじゃん! 私の姿が無いから表彰前にみんな帰って行っているよ!」

「予想通りだねー。じゃあ祭典ホールの帰り道に騎士団があるから、仕返しに行って演説でもしてみる?」


「負けた腹いせみたいで嫌だよっ」

「まぁでも、ヘンリエッテは仕返しを先にしているから良いんじゃない?」


 ヘンリエッテが首をこてんと傾げ、「仕返し?」と、あざとく聞いてきた。

 …えっ、知らずにやっていたのかね。

 フリシアちゃんはヘンリエッテと私を交互に見て不思議そうにしている……あっ、私の自己紹介をしていないや。後でね。


「先ず…アース王国第一王女は女神幼女、天使、ヒルデガルドさんとの深い交流を帝国に見せ付けた。この時点で帝国が喉から手が出る程欲しがる存在に格上げされたのは解る?」

「そうね…普通に考えたら皇族や貴族などの権力者、商人達は私に接触を図ろうとするわね」


「でも帝国は第二皇子の無礼や美少女グランプリでランク外にされたから、誠心誠意謝罪して許して貰わない限りどう足掻いてもヘンリエッテは手に入らない。更に世界の脅威を帝国よりも早く民衆に伝えた重要人物になってしまった」

「あっ、あれはミズキが頑張っているんだぞって言いたくて…」


 今そのせいで帝国上層部はてんやわんやだろうな…

 世界の脅威なんて情報はヘンリエッテの発言で初めて知った形だ。情報の確認やらをしたいのにヘンリエッテは居ないし…確認する前に謝罪も必要だし。

 帝国からも討伐する人を出さないと、世界の脅威に対して何もしない帝国は国民の支持が大きく下がる。


「アース王国所属の勇者ミズキが帝国の英雄…いや、世界の英雄になる…そして何も知らず、何もしなかった帝国は支持率急降下……いやぁ策士だねぇ」

「うっ…どうしよぅ…」


 本来ならアース国王が皇帝に伝え、国際会議にてどうするか話し合うんだけれど……この場合、アース王国は帝国に何も期待をしていないという意味にもなるかな。


「この件に関して、帝国は無理矢理にでも関わろうとする。でも正直に言うと邪魔だから、パーリーなんか出ないでここでのんびり過ごした方が良いんだけれど……それだと詰まらない」

「……何企んでいるのさ」


「何食わぬ顔でパーリーに出る。ただ……悪い女になって貰うけれどね」

「……はぁ…分かった。言う通りにするよ…なんか私も毒されてきたのかな…楽しみになっている…」


 素直だねー良い子良い子してやろう。

 まぁヘンリエッテのドレスやアクセサリーはそのままで良いか。

 フリシアちゃんは作業着だから、流石にパーリーはドレスコードに沿おう。


「じゃあ準備しようか。フリシアちゃんはこれ着て」

「これ? はい…分かりました」


 という事で私のゴン・ジーラス作品のドレスを渡して、着替えて貰おう。フリシアちゃんが私にビビっているのは気のせいに思いたい。

 フリシアちゃんが更衣室へ行った後、ヘルちゃんがやって来た。


「アスティ、パーリー行くの?」

「うん。この格好だけれどね」


「ふーん。私は面倒だからパス」

「なんだかんだで質問責めに遭うから面倒だよね」


「まっ、気が向いたら行くわ」


 そう言ってヘルちゃんが落ち込んでいる幼女を抱えて二階へ上がっていった。

 イッきゅんは幼女を見届けた後…私にウインクをして忙しそうに消えていった。

 ……幼女よ仕事しろ。


 ホールでは、リアちゃんが店員さん達に何かを話している。真剣な話かな?


「ねぇみんな、アース王国でも働いてみない?」

「良いですねー」「楽しそう」


 ……店舗移転の計画かな。恐らくここの店舗とアースの店舗を転移ゲートで繋ぐんだろうけれど…


「ヘンリエッテ、アース王都にもパンパンとロンロンが出来るみたいだよ」

「やったー! みんなに直ぐ会えるねっ!」


「とりあえずリアちゃんも交えて話し合いでもしようか。あっ、フリシアちゃんおかえりなさい」

「…なんか…作業着よりも動きやすいです」


 フリシアちゃんが着替えてきた…ちょっと着られている感だけれど良い感じ。青と黒のストライプ模様のドレスで、装飾品は適当に私の奴を渡しておいた。


 細かい準備は後にして、リアちゃんの居るホールに入ると…


「あっ、フリシアちゃん可愛いかったですよ!」「待っていました!」「じゃあ行きましょうかっ!」

「えっ、ちょっと…」


 フリシアちゃんは店員さん達に連れ去られた。

 きっと一緒にご飯食べてパンケーキ食べて仲良く喋りながら化粧するんだろうな…良いな…


「さぁアスきゅん、好きに計画を決めて良いわよ」

「……私が最終決定するんですね。パーリーで決めて良いですか?」


「うん、ところでその兜脱がないの?」

「あぁ…今の状態は…店員さん達が居る時に脱ぐと大変なんですよね」


 またチューの行列が出来ちゃうからね。あれ結構しんどいのさ。

 丁度店員さん達が居なくなったので、白兜を脱いでイケメン眼鏡を解放。


 ホールの隅に居たフラムちゃんとミーレイちゃんが、案の定ホイホイ私の元へやって来た。


「アスティちゃーん!」「格好良いー!」

「…こうなるんですよ」


「なるほど…じゃあ行こっか」

「何処へ?」


「パーリーまで時間あるし、イツハも居ないから…ね?」


 ね? じゃなくてさ。転移して何処へ行くのよ…


 私の右腕をフラムちゃんのおっぱいが拘束…左腕をミーレイちゃんのおっぱいが拘束…そして顔面をリアちゃんのおっぱいが拘束……ふむ、最高だ。


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