真っ向勝負で計画を邪魔してやろう

 

「……効かない…何者?」

「…白い雲のように映り変わる存在です。お久し振りですね」


「久し振り? 私はあなたを知らないわ」

「これを見れば思い出しますよ」


 収納からマグカップを取り出すと、素早い動きでマグカップを奪い取られた。


「っ……これは…お姉さまのじゃない」

「それは私のです。欲しければどうぞ」


「くっ…いらないわ」

「じゃっ、じゃあ私が貰うっ!」


 いや返してよ。それ高い奴なんだから…危ない危ない。アレスティアさんは物を見る目はあるんだな。


「何故…あなたがここに」

「友達が出るので遊びに来ただけですよ。目的はこの方が第二皇子と結婚する事ですか?」


「……私は無理矢理付いて来ただけだから詳しい話は知らないわ。お母様が動いているのは確かよ」

「おや? 随分素直ですね。じゃあベアトリスクが第一皇女派と連携しているという事ですか…メイドさん達はどちらの暗部の方です?」


「……」

「あぁすみません、私はヘンリエッテの応援に来ただけですから無理して言わなくて良いです」


 メイドさん達は何も言わない。少し安心した雰囲気なのは言ったら自害しなきゃいけないからか。

 まぁ視たから言わなくて大丈夫だよっ。

 なるほどねっ、フーツー王妃直属の暗部さん達か。色々な事情を抱えているけれど、私がどうこうする立場じゃないしなぁ…


「ねぇ、お姉さまは来ているの?」

「探したら会えるかもしれませんね」


「…意地悪ね。好奇心旺盛なお姉さまの事だから、噂を聞き付けて見に来ていると思ったけれど…」


 噂を聞き付けてホイホイ目の前に来ちゃっているよ。

 それにしてもコーデリアは落ち着いているな…何かがあったんだろうね。

 もっとこう…殺意剥き出しで襲い掛かって来てもおかしくないのに。


「私はここでは何も言えません。コーデリアさん、少し…大人っぽくなりましたね」

「……どういう意味よ」


「そのままですよ。ディアスさんとは話しましたか?」

「……ええ」


「それは良かった。そうですね…ベアトリスクと第一皇女ヴァランティーヌの性悪コンビが何を計画したか気になって来ました。という事でまた会いましょう」


 ばいばーい。

 パーリーで会いましょう。

 さっ、戻ろう戻ろう。



 * * * * * *



「…良いの? あんな嘘付いて」

「あいつは完全には信用出来ないわ。あなたはグランプリに集中して」


「はいはい。ほんと、怖い母娘よねー。まっ、私は約束を守ってくれたらそれで良いわ」

「ええ、期待していなさい」



 * * * * * *



 ヘンリエッテの控え室に到着。

 …なんか談笑しているから入りにくいぞ…私が入った時にシーンとなったら泣いてしまうかもしれない。


「ただいまー…」

「あっ、おかえりなさい。どうだった?」


「二人とも会えましたよ。魔眼持ちは偽物アレスティアさんと元妹のコーデリアでした」

「…うわ…どんな人だった?」


「転移者でしたよ。ミズキさんと同郷かもしれませんね」

「あっ、そうなんだ…目的とか解る?」


「優勝して第二皇子と結婚するのが目的みたいな事を言っていましたが、何かをやらかす筈なので警戒は怠らずに」

「ふーん。こっちに被害が無ければ良いけどね」


 こっちに被害、か。

 確率は半々かな。

 ヘンリエッテの名前を出して牽制してみたけれど…コーデリア、アレスティアさん、メイドさん達それぞれの思惑というか目的が違う感じがした。

 第一皇女派の目的は皇位継承だから最終目的は解りやすい。でも過程が解らんからなぁ…まぁ考えても仕方無いんだけれど…


「ヘンリエッテ、準備出来た?」

「うんっ、化粧は出来たよ。どう?」


「良いね、安定の可愛いさだ」

「えへへっ、アレスティアがドレスとか用意してくれるって言っていたけれど…」


「うん、バッチリんこだよ」


 ふっふっふっ、実はドレスやアクセサリーは私が用意する事になっていたのだっ!

 ブリッタさんと共にヘンリエッテへ装備していこう。


 先ずはドレスからっ!

 ゴンザレス店長…幻の職人ゴン・ジーラスによるベーシックスタイルのドレス。白と黒で一見地味に見えるけれど、キメ細やかな刺繍やフリルに目を奪われる事間違い無しっ!

 お値段なんとっ…プライスレス!


「うわぁー! ゴン・ジーラスのドレスだぁっ!」

「これ凄い…五千万ゴルドはしますよ」


 ブリッタさんにも今度あげますからね。

 ヘンリエッテは跳び跳ねて喜んで…まだまだ行くよ。


 リアちゃんから貰ったキラキラした宝石の靴!

 表面がほぼダイヤモンド!

 足の甲にはダイヤモンドがお花の形になって…因みにこのダイヤモンドはイッきゅん作…

 お値段なんとっ…脇に挟んだ金貨一枚!


「…ねぇ…このダイヤモンド…本物?」

「…本物なら数億ゴルドですよ」


 お次は幼女の部屋にあったストール!

 幼女が一回着けて放置していた一品で何故か神気が出る。

 お値段なんとっ…干し芋二袋!


「…これ、着けて大丈夫?」

「いやぁ…これはまずいかも…でも折角なんで着けて…おー! 神っぽいですよ姫さまっ」


 あとイッきゅんがくれたイヤリング!

 ティアドロップ型のダイヤモンドで見る角度によって様々な色に変わるっ!

 作成時間十秒でお値段は…私のパンツ一枚!


「もう…何も驚かないわ…」

「…豪邸二軒くらい買えますね」


 そして最後に…ルゼルからレンタルしたネックレス!

 銀色に輝く魔防具で名前はスゲーネックレス改…相変わらず名前はダサいけれど能力はスゲーらしい。

 レンタル料金なんとっ…私の手作りお弁当!


「……ね、ねぇ、これ、なに? 凄い力…」

「スゲーネックレスだよ。おかぁさんに借りたんだー」


「姫さま…神々しいです…」

「因みに諸々の装備の効果で、防御力だけなら世界一かもね」

「…いやいやいや、装備の重圧で私の心が砕けそうなんだけど…」


「……ねぇレティ…これで優勝じゃなかったら暴動が起きない?」

「それも狙いですね。魔改造ヘンリエッテを前に審査員はどうするのか楽しみですよ」


「アレスティアが優勝したら大ブーイング…でも優勝させないと第一皇女派から制裁があるかも…可哀想に…」

「もうリアちゃんは美少女グランプリのスポンサーじゃないので、この大会は汚職が蔓延している筈なんですよ。いやぁーどうなりますかねぇー」


 美少女グランプリの審査は、去年は自己アピールと即興スピーチだったけれど…今年はドレスやアクセサリーやら見た目の審査と自己アピールになっている。財力やコネクションも審査対象という事だ。


 だから私のコネクションをフルに使った魔改造ヘンリエッテが場を荒らしまくるんだ。

 ふっふっふっ、アレスティアさんが優勝する筋書きをとことん邪魔してやろうではないか。

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