綺麗になる為に化粧をしているけれど、化粧をしている姿は結構ブスだよね

 

 何故転移者なんだ?

 魔眼があるから?

 いや、使い勝手が良いからか?

 つまり、いつでも斬り捨てられるようにって事かね。


 歳は同じくらい…この転移者の魔眼は私にとって脅威では無いかな。目的はなんだろうな。


「早く案内しなさいよ」

「早くと言っても私はここの者ではないので知りませんね。あっ、レジンさんこの人が迷子みたいです」


「あ? 誰だ?」

「私はアレスティアよ」

「私は白雲っていいます」


 久し振りだなレジンさん。アスティちゃんだぞー。

 おでこで敬礼すると、少し目を閉じて上を見上げた。


「そっ、そうか…こ、こっちだ」

「あれれーレジンさん何か面白い事でもあったんですかー?」


「いや…白々しいな。白雲…俺の机になんてもん置きやがったんだよ…魔斧なんておかしいだろ…」

「斧なんて使う人いないので、在庫処分です」


 確かお土産は適当にいらない斧をあげたんだっけ。

 上手く処分してくれ。


「はぁ…ミリアに聞いたが時間作って遊びに来いよ。えーと、アレスティアさんこっちだよ」

「…ねぇ、この白騎士は有名なの?」


「あーそうだな。俺より強いぞ」

「ふーんそう。じゃああなたも来なさい」


 おっ、お呼びが掛かったから付いて行こう。

 レジンさんが嫌そうな顔を隠さないし…恐らく私の目的地なんだよ。


「レジンさん、面白い話をして下さい」

「…白雲の話より面白い話が俺に出来ると思うか?」


「出来ますよ。ミリアさんに怒られた話とか、ミリアさんに軽蔑された話とか、ミリアさんに…」

「おい…泣いて良いか?」


「駄目ですよ。おっさんの涙に需要はありません」

「はぁ…ほんと変わらねぇな」


 と話をしている間に到着。

 私とレジンさんが話している間は無言だったな。緊張しちょるんかね?


 フーツー王国第一王女控え室と書かれたお部屋。

 中に入ると…ふむ、メイドさん達がお出迎え。知らないメイドさんだからフーツー王国のメイドさんか? 解らんな。


「待たせたわね。さぁ、頼むわよ」

「「はい」」


 これからメイクやら着替えをするのか。

 ……おいレジンさん、なんで居るのさ。おっさんが居て良い場所じゃないよ。しっし。


「じゃあな。クロムも居るから言っておくわ」

「はーい。あっ、クロムさんにこれあげて下さい。机の物は適当過ぎたんで」


「あん? なんだこの本」

「アース城の書庫にあった魔導書です。貰ったんですが私に才能は無いので」


「そっか、じゃあなー」


 ばいばーい。

 …さて、自称アレスティアさんの様子でも眺めますかね。

 ……先ずはピンクのドレスに着替え…なんか私が昔着ていたドレスに似てんな。

 金髪を綺麗に整え……目は黒いけれど良いのか?

 …なんか飲んだな。おっ、目の色が変わっていくっ。

 青っぽい瞳に変わったなー。へぇー、すごー。


「…あの、そちらの方は何者ですか?」

「白雲というらしいわ。知ってる?」


「いえ」


 メイドさんにチラチラ見られている。そりゃ全身白鎧の男か女か解らない奴が居たら気になるよなぁ。

 ……うーん…なんかこう…化粧がなぁ…普通過ぎてアレスティアになっていないんだよなぁ…

 うーん…


「白雲、何か言いたい事があるの?」

「はい、化粧なんですが…私がやりましょうか? こう見えて得意なんですよ」


「……何が言いたいの?」

「いやだって、この化粧じゃヘンリエッテに勝てませんよ?」


「……良い度胸ね」

「そもそも帝国流の化粧じゃあなたの顔に合いません。ヘンリエッテ側には、帝国、アース王国、レイン王国の化粧を極めた達人ブリッタさんが居ますからね」


「……本当にあなたが出来るのね?」

「はい、じゃあ時間もあれなのでやりますねー」


 いくら出来レースだとしても、せめてヘンリエッテの足下くらいにはさせてやらないと大変だぞ?

 とりあえず無駄なメイクを落として…兜邪魔だな。


「よくそれを被って出来るわね」

「これ魔防具なんですよ。ところでなんでグランプリに出場したんですか?」


「それはね…聞きたい?」

「はい、喋る事無いんで教えて下さい」


「優勝したら、帝国の皇子様と結婚出来るのよっ」

「ふーん。それだけですか?」


「えっ、それだけって…皇子よ? 皇子様と結婚出来るのよ?」

「はい結婚ですよね。で? 結婚してどうするんです?」


「えっ…どうって…」


 えっなに? 皇子と結婚するのが目的なの? 意味解らんぞうさん。

 メリット無いでしょ。

 やっぱり兜邪魔だな。


「お会いしたんです? 因みに第二皇子ですか?」

「そうなのっ! あぁ…格好良かったわ…一目惚れなんて初めて…リーセント様…」


「なんかゲボですね。やっぱり兜が邪魔なんで取ります」


 よいしょっと。流石にアレスティアの顔は不味いので男バージョン。

 今回はイケメン眼鏡バージョンに加えてミーレイちゃんとお揃いの泣きホクロ装着済みだから、変装バッチリなのだ。


 手甲も取って、素手でサクッと終わらすか。

 ルゼル直伝…カワモテ系クール姫メイク……よく思うけれど、なんで雑誌の表紙は意味の解らない用語が並ぶんだろうね。


「「えっ…」」

「アレスティアさん動かないで下さい喋らないで下さい」


「は、はい…」


 顔に力入れんなよ。

 やり辛いから顔赤くすんな。トイレか?


 メイク道具は自前を使おう。

 首の色と同じベースを塗り、コンシーラーはあえて筆で馴染ませる。

 黒い眉毛な目立つから少し脱色…薄くしてから眉ペンでカキカキ。

 目が少し小さいからアイラインで目尻を長く……なんかこの顔難しいな。付けまつ毛を使うか。シャドウを入れれば…まぁまぁ良くなった。

 鼻が少し低いから暗い色で陰影を付けて高く見せてっと…シリコン付けるか? いや、別人になるからやめておこう。

 チークを塗りたいけれど、顔を赤くするせいで解らない…このままで良いか…

 口紅を指で伸ばすと何かのアイコンタクトをしてきた…無視だな。


「…凄い…これが私…」

「よし、出来ました。では満足したので帰ります」


 兜と手甲を装着。

 うんうん、良いね良いね。これでアレスティア風になったよ。


「まっ、待ってっ!」

「あっ、帰ってはいけませんでした。そろそろ来る頃ですが…」


 コンコンッ…と部屋の扉が鳴り、メイドさんが扉を開ける。


「入るわよ。……えっ」


 入って来た少女は私のメイクで変貌を遂げたアレスティアさんに驚き、私を見て誰だコイツという視線を向ける。

 そして再びアレスティアさんを眺めながら歩み寄り、至近距離で感心していた。

 なんか変装しているけれど、私が見たらバレバレだぞー。


「どう? イケてるでしょ?」

「凄いわね…お姉さまの足下のゴミくらいにはなれたわ」


「……おい、ゴミってなんだよ…」

「で? そちらの白騎士さんは誰?」


「……ちっ、彼がメイクしてくれたのよっ」

「彼?」


「どうも、白雲と申します。コーデリアさん」


 おでこで敬礼。

 コーデリアの目が細められ、私に何か目の力を放って来たけれど効かないよー。警戒心マックスだねー。


 やぁやぁ元妹のコーデリアさん。元お姉ちゃんだぞー。

 というかこれはどういう事かね?

 偽物アレスティアの首謀者はコーデリアだったのか?

 第一皇女とコーデリアが繋がっている?

 ちょっと訳解らんぞ。

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