意外と早く終わってしまった

 

 クーちゃんが小人だったものを持とうとしたけれど、ポロポロと崩れ去った。

 しゅんっとしちゃったな。


「クーちゃん、今度お人形買いに行こ?」

「…はい」


「あの小人は危険だったのよ。ほら、こんなに魔薬があるわ」

「…むぅ」


 クーちゃんは唇を尖らせて、城の地下部分にあった魔薬入りの小瓶を手に取った。そして匂いを嗅いで眉間にシワが寄る。


「これ…禁薬です」

「へぇー、効果は?」


「夜霧の妖薬…自我を奪って操り人形にする外道薬です」

「小人にとって、私達は敵であり資源なのよ。私達にとっても、小人は敵…そうでしょう?」


「敵…可愛いくても敵」

「そうよ、敵は殺しなさい。一番可愛いのは己なのっ!」


「はい、ヘルたん。分かったです」

「クー…良い子ね。さぁ、私達が目指すのはお宝よっ!」


「はいっ!」


 ……うん、ちょっとよく解らない。

 で? もうお宝部屋に行けって?

 はいはい。


 でも外道薬は回収しよう。

 もしかしたら使い道があるかもしれないし。


「あれ? 開かない」

「鍵穴があるから鍵が必要なのよ」

「お城にあるです?」


 まぁ、開かないなら隣の壁を壊せば良いや。アビスフレイムー。

 …よし、壊せた。


 壁を抜けた先は小部屋があり、その中心に銀色の宝箱…罠は無いからそのまま開けようかな。


「ところでどんな物なら嬉しいの?」

「可愛い服ね」「お姉ちゃんに勝てる物です」


 なるほど…念を込めればそれっぽい物が出そう…


 深緑のシャツ……森と同化出来るシャツ。

 深緑のズボン……森の中だと能力上昇…

 深緑のスニーカー……深緑色の靴。効果は森林を速く走れる。


「クーちゃんいる?」

「…一応貰うです」


 可愛い服……可愛い服が出たよっ! ピンクのフリフリが付いていて、中心にクマさんが描いてある女児向けの服っ! ズボンはジーンズ柄の伸びる素材!


「ヘルちゃんっ! 出たよ!」

「その可愛いじゃない。アーたん行きね」


 魔導回転円盤……フリスビーだな。


 魂の瓶……なんだこれ? 魂を入れられる瓶か。ロンドの魂は私が収納すればルゼルに届くし…何かに使うかもしれないから覚えておこう。


 ボロい聖剣……ボロい。一応聖剣だから使い道あるかな?


 青の書……あっ、これフーさんが使っている奴と色違いだ。


「クーちゃん、あったよ」

「これ…青の書…頑張るです」

「フーさんは赤の書よね」


 禁術書・透明化……透明になれば、あんな事やこんな事が…


「アスティは使っちゃ駄目よ。没収ね」

「なっ、なんでさっ」

「レティはお風呂覗くから駄目です」


 ドスケベステルンベルギアの盾……何がモデルの盾だ?


 ルビーの宝剣……高そう。


 ……後は宝箱の底にあるお金と宝石。

 念じれば中身が変わる説が有効だな。

 可愛い服が出たし、魔法書も出た。相変わらず迷宮の宝箱は謎だよ。


「クー、魔法書があって良かったわね」

「はい、先ずは追い付くです」


「他はあんまり実用的じゃなかったね」

「迷宮の宝箱なんてそんなものよ。かなり上出来よ」


 宝箱も回収して…と。

 次の階段が近いから壁をぶち抜いて進もう。


「多分次の階にエーリンが居ると思うよ」

「エーリンと会うのは久し振りよね」


 そういえばクーちゃんとエーリンって仲良いのかな?

 まぁ会えば解るか。


 階段に到着し、降りていく。

 代わり映えしない石造りの壁…森とか砂漠とかあったら楽しめたのになぁ。


「ねぇ、アスティ…飽きたわ」

「もう少しで終わりだから我慢して」


「レティ…帰りたいです」

「エーリン回収したら帰るからね」


 階段を降りると噴水の部屋に到着し、扉は一つだけ。周りを見ると一本道みたいだった。

 扉を開けて一本道を通っていく。魔物は居ない…ボス部屋かな。


「ところで、エルドラドには誰が行くの?」

「私、ミズキさん、エーリンだよ」


「私とクーは行けないの?」

「そうだね。何日掛かるか解らないし、序列十位級の深魔貴族が相手だから危険だよ」


 ……ヘルちゃんがムスッとしちゃった。行ったら多分死ぬよ。私に守る余裕なんて無いし。


 っと一本道が終わって、銀色の大きな扉が現れた。

 ボス部屋だな…少し開いて中を確認……おっ、もう終わっている?


「エーリンがボスを倒した後みたいだね」

「あら、本当ね。ボスってあれかしら?」

「肉の塊です」


 あの肉は食べられないからね。

 ボコボコになった大きな血肉の塊がビクビクして、エーリンはその奥にある金色の宝箱を開けていた。


「……あった」


「エーリンっ、迎えに来たよー」

「ん? アレスティアー、遅いですよー。もう攻略しちゃいましたしー」


 やっぱり未攻略の迷宮だったのか。

 エーリンの髪ボサボサだな。帰ったらお風呂入れないと…

 ん? 何かを谷間に入れたな…


「占いの目的は達成したの?」

「はいー、バッチリんこですー」


「何がゴールだったの?」

「アイテムですよー。内容は秘密ですー」


 秘密なら仕方ない。エーリンの谷間に手を突っ込んでみた。

 ……あれ? 何も無い…


「どこにやったの?」

「大事な物は身体の中に入れる鬼族の秘術ですー」


「だから巨乳なんだね。全部出せや」

「おっぱいは元々ですー」


「は? ざけんな」


 とりあえず乳揉むか。

 ヘルちゃんクーちゃんおいでー。巨乳ご利益を貰おう。

 もーみもみ。

 前よりちょっと大きくなったな…くそ。

 ヘルちゃん舌打ちしちゃ駄目だよ。

 クーちゃんそれはもみもみじゃなくてべしべしだよ。


「ちっ…お宝回収したら帰るよ」

「はいー、私は目的を達成したから全部あげますよー」


「やったー。ありがとうエーリン大好きっ!」

「エーリン大好きよ」

「エーリン大好きです」

「見事に手の平返しましたねー」


 早速宝箱を確認しよう。

 エーリンが開けたから不安だけれど…金色だから期待しよう。

 ちょっと、エーリン近いよ…なに? 寂しかったの?

 人差し指を出すと、がじがじし始めた。食べるなよ。


 豪血寺一族の秘薬……若返り効果。これすげぇな。


 聖剣・ラストレクイエム……おー、まともな聖剣だ。アンデット特効。


「ミズキにあげなさいよ」

「そだね」


 魔斧・ネファリウス……今度は魔斧だ。誰も使わないな。


 アミルの槍……水色の槍。水属性強化と風属性強化。


「クーちゃん使う?」

「はい」


 金の鶏……あっ、これ凄い。一週間に一度金の卵を産む鶏の像。


「ヘルちゃん、楽してお金儲けだよっ」

「でかしたわエーリン」

「みんな目がお金ですー」


 聖杖・アンジェラスホーン……光魔法強化に神聖魔法強化に魔力増加。


「ヘルちゃん使う?」

「そうね…神聖魔法は珍しいし」


 剛鬼の鉄鎚……重てえ。

 剛鬼の兜……重てえ。

 剛鬼の籠手……重てえ。

 剛鬼の足具……重てえ。

 剛鬼の鎧……重てえ。


「これエーリン使いなよ」

「えー、ダサいですー」


 迷宮配列変換の宝珠……なんだこれ? 視れない…ルゼルに見てもらおう。


 後はお金と宝石…凄い量だな。

 全部回収して、宝箱も回収出来た。

 すると部屋の中心に魔法陣が現れた。


 帰り道か。じゃあ早速帰ろうー!



 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇



 ……お? なんか草原に出た。

 近くにアース城が見えるという事は、街の外か。


「アレスティアー、眠いですー」

「何日寝ていないのさ」


「十日くらいですかねー」

「じゃあ帰ってお風呂入ったら寝て良いよ」


「えー、お風呂面倒ですー」

「入れ。十日分の汚れを落としてくれお願いだ」


「じゃあ一緒に入りましょうよー」

「…みんなで入ろうか」


 星乗りでアース城へ行き、窓からミズキの部屋に侵入。転移ゲートを設置して、私の部屋に帰ってきた。


「リアちゃーん」


「はーい。アスきゅんおかえり」

「ただいまです。リアちゃん、お風呂貸して下さい」


「良いわよ。付いてきて」


 大浴場の場所解るよ。あっ、リアちゃんも入るのね。

 意外と早く迷宮探索が終わって、ヘルちゃんクーちゃんの予定が結構空いた。

 ……旅行でも行くか。

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