私だって、心を鬼にしているんだよ

 

 早速階段っぽい所を目指そう。

 真ん中の扉を開けて、広い通路を進んでいく。


「アスティ、魔物は任せたわ」

「レティ頑張るです」

「いや、遊び人が働いたら駄目なんだよ? ソルレーザー」


 ナイスバデーのスライムをソルレーザーで貫くと、毒ガスが発生した。まぁ、効かないから無視で良いか。


「今のスライムボンッキュッボンッだったわね」

「あれに色縫ったらバインバインお姉さんだったよ」

「だから胸を貫いたです?」


 働く度に対価として二人のお尻を触ろう。

 さわさわ…くそっ、ヘルちゃんがローブだからお尻を楽しめない…


「ヘルちゃん、白魔導士は白ビキニって昔から決まっているんだよ」

「お肌が荒れるから嫌よ。クーなんてズボンが硬い生地じゃない」


「私レベルになるとヒップラインさえあれば後は妄想でカバー出来るんだよ」

「全部妄想でカバーしなさいよ」


「目の前にヘルちゃんクーちゃんが居るのに自己完結は泣きそうになるから嫌だよ」


 あー…迂回しないと階段に行かないなぁ…結構長い通路だから、一時間くらい掛かるかも…壊すか。


「久し振りのアビスフレイムー」


 黒い炎を壁に当てて、脆くなった所をゆびーむでくり抜く。

 ぼこんっ。よしよし、真っ直ぐ行けば階段だ。


「アスティ、その調子よ」

「レティ、頑張るです」


「二人ともまだ何もしていないよね。まぁ、私もピクニック気分だから良いんだけれどさ」


 階段を降りていくと、少し魔素が濃くなった。そろそろ最下層だと思うんだよなぁ。


「お宝なんてあるかしら」

「取り残しがあればねー。今の所は見当たらない…ヘルちゃんってお宝に興味あるの?」


「そりゃぁもちろんあるわ。楽してお金儲けしたいじゃない」

「聖女らしいです」


 いや、聖女がそんな事を言ったら教会に怒られるよ。


「天使が欲望にまみれているから大丈夫よ」

「何も言い返せないねっ」


 階段を降りたらまた同じような造りで噴水の部屋…正直飽きたな。

 よしっ、周囲の確認をしよう。深淵の瞳ー。


 ……下の階は、まだあるのか…ん? なんか赤い人影がチラッと見えた。エーリンかな?

 周りは…上の階と同じ造りで…おっ、あれはっ…宝箱っぽい!


「ヘルちゃん、右の壁を五回くらいぶち抜いたら宝箱だよっ!」

「よしっ、行くわよ!」

「楽しみです」


 よしよし、頑張れアビスフレイム。

 とりゃー。おりゃー。

 あっ、魔物。

 おぉ…獣の脚が生えたサメだ。


「エラなんて必要無いじゃない」

「水陸両用かもよ?」

「中におっさんが居るです」


 あっ、本当だ…口の中からハゲたおっさんがこっちを見てニヤニヤしている…

 ソルレーザー。さよならー。


「この壁を壊せば…アビスフレイムっと」


 壁を壊すと、宝箱のある小部屋に到着した。

 色は銀色…これは、良い物がありそうだ。


「銀色は珍しいです」

「良い物がありそうね」

「罠は…ボウガンか。後ろから開ければ…」


 開けたらボウガンでグサッとなる罠だから、後ろから蓋を持ち上げれば安全…うぉっ、一気に十発出てきた…殺す気満々だね。


 さて…中身を見よう。


「呪われている物もあるから、一つずつ取るよ」

「じゃあこの上に乗せてね」


 ヘルちゃんが収納から白いテーブルを出した…この時の為に持ってきたんだね。深淵の瞳が呪いの力でパワーアップしたから鑑定はお任せあれ。



 じゃあ順番に…


 妖刀・黒薔薇……黒光りしてなんか強そう。効果は…狂気か。


「装備したらヤバい奴になるよ」

「ヤバい奴が装備したらどうなるの?」

「もっとヤバい奴です?」


 常闇とこやみの兜……黒い兜で、効果が闇属性の攻撃を半減。


 常闇とこやみの鎧……黒い鎧で、効果が闇と同化出来る。


「誰か使うかな?」

「いらないわね」

「フラムが好きそうです」


 機動武神装ルナカイザーHG……なんだこれ、人形かな。武神装というか、もろロボットだし。ハイグレードって事は他に種類がありそう。


「オモチャです?」

「なんか格好良いわね」

「うん…多分これ…いや、なんでもない」


 黄金の懐中時計……デザインは悪くない。


 ロマネコンティンティン……お酒かな?


 割りとお洒落なリュック……収納魔導具だ。


 剛竜覇道剣……名前が強そう。曲刀だから私は使わないかな。


「ヘルちゃん使う?」

「重そうだからパス」


 餅をつく少女……白いスライムを虐めている女の子の絵画だな。


 体重計……これはいらない。


 終わった…大した物は無かった…次に期待か。


「あっ、なんか底の方はお金とか宝石が詰まっているよ」

「それが一番の収穫ね」

「指輪とかもあるです」


 結局お金とか宝石が一番嬉しかった。

 一応宝箱も値打ちがありそうだから貰おう。


「さぁ、次の宝箱はどこ?」

「ちょっと待ってね……あった、階層の中心部分。壁を三つ壊せばあるよ」


「行くです」

「クーちゃんもお宝好き?」


「はい、お金があれば働かなくていいです」

「志は一緒だね。あっ、エーリンの魔力を捉えたよ…うん、元気そうだから宝探しだね」


 よし、サクサク行こう。

 一つ目の石造りの壁を壊すと、可愛い部屋で天井から吊るされている人形達が現れた。人形劇に出てきそうなコミカルな感じ…兵士やら王様やらが吊るされていた。


「これは魔物かしら?」

「動きそうです」

「可愛いねー。アビスフレイム」


 いらないから黒い炎で焼いていこう。

 あっ、動き出した。


『ぎゃぁぁあああ!』『あづいあづいあづい!』『身体が焼げるぅぅ!』『だずげでだずげでだずげで!』『平和に暮らしていただけなのにぃぃ!』『悪魔めぇぇえ!』


 ……よし、燃えた燃えた。

 壁を壊していこう。アビスフレイムー。

 ん? 今度は小さな町があるな。小さな人が生活している…私達を見て驚いているなー。


「今度は小人です。撫で撫でしたいです」

「へぇー、可愛いわね」

「ほんとだねー。アビスフレイム」


 邪魔だから燃やそう。


『うわぁぁあ! 巨人だぁあ!』『巨人が攻めて来たぞぉぉ!』『王に知らせるんだぁぁ!』『痛いよぉー! 痛いよぉー!』『家がぁぁああ!』『悪魔めぇぇえ! 憎い! 憎いぞぉぉぎゃぁぁあああ!』


 ……よし、燃えた燃えた。

 次の壁を壊せば後一つ…アビスフレイムー。

 おっ、今度は部屋の中に小さいお城だ。しかも奥に扉が見えるから、ここを越えたら宝箱だな。

 小人の兵隊さんが隊列を組んで、私達に武器を向けている。


「さっきのが城下町だったみたいね」

「二頭身だから人形みたいで可愛いです…あの…レティ…」

「お城がよく造られて綺麗だねー。アビスフレイム」


 黒い炎がお城を包んで、良い感じに落城している。

 あっ、あれが王様かな?


『いやぁぁ!』『くそぉぉお! 巨人めぇぇえ!』『城が…私の城が…』『王よ! 早くお逃げぐぎゃぁぁあ!』『酷い! こんなのって!』『ぎゃぁぁあああ!』


 ……よし、終わった終わった。


「……ねぇ、アスティ」

「なに?」


「心…痛まないの?」

「全然」


 …なんかため息付かれた。

 えっ、だって迷宮の魔物だよ?

 普通の小人と迷宮の小人は全く違うからね。殺さないと仲間を呼び続けて後が面倒なんだよ。それに捕まると薬漬けにされて巨人兵として使われるんだ。

 結局敵だから、ケガするくらいなら燃やすからね。


「クーの為に一匹くらい残しておきなさいよ。可哀想じゃないの」

「小人さん…燃えたです」


 匹って言っている時点でヘルちゃんも私と同類だよ。

 …いや、睨まないで。

 とりあえず、クーちゃんを慰めよう。

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