早く引きこもりたい…

 

「…ねぇレティ」

「なんですか?」


「休憩なのに疲れた」

「ちょっと頑張り過ぎちゃいましたね」


「なんでそんなに体力あるのさ…」

「私には美少女約百人分の性癖がありますからね。そっちに関して底無しです」


 ん? 扉が開いて幼女を抱っこする蒼禍が顔を出した。


「…終わったか?」

「はい、一段落です」


「あの…部屋が向かいだから声が聞こえるんだが…」

「あれ? いつもアテアちゃんが張る結界で聞こえない筈ですよ?」


「……アラステア、どういう事?」

「なんの事かのー。わっちは解らんぞい!」


 わざと聞かせてんな。

 蒼禍の顔が真っ赤だから、モロ聞こえしていたのか。そうか…もっと聞かせてあげよう。


「蒼禍さんもします?」

「えっ、いや、私は興味無いから大丈夫だっ」


「…本当に興味無いんですか?」

「あっ、ある訳無いだろっ!」


 ……明らかに興味津々だな。

 この前あわよくばのチューが出来たから、その先に興味が出てしまったのか…

 おっ、幼女がシュタッと降りた。珍しいな…あっ、そういう事ね。

 ミズキをチラリと見ると、うんっと頷いて幼女を抱っこして幼女の部屋に入っていった。


「蒼禍さん、翼が見たいですっ」

「翼? まぁ、良いが…」


「服の上からじゃなくて素肌から見たいです」

「別に見ても面白くないぞ」


 青いローブを脱がせると、白い厚手のタンクトップ…良い脇だ。

 後ろに回って翼を確認する…青くて少しツルツルした小悪魔みたいな翼だな。大きさは私の腕くらい…意外と小さいな…これは可愛いぞ。


「凄いですね…触ったら解るんですか?」

「あぁ、魔力を通せば飛べるんだ」


 ほうほう…翼の先から付け根までツーッと指をなぞらせてみる。

 そこから付け根をクルリとなぞってみた。


「んっ…ちょっと…くすぐったい…」

「あっ、すみません。これならどうですか?」


 付け根をペロッと舐めながら少し引っ張ってみた。


「ゃっ…なにっ…だめっ…」

「ここですか?」


 今度は付け根を甘噛み。


「ぁんっ、ゃっ、ゃめっ、あぁ!」


 ここまでしちゃったら…やめられないとまらないー。

 ……

 ……

 ……

 因みにハズラ式のなんたらも教えて貰った。

 まぁ、内容は割愛しよう。


 さて、ヘルちゃんクーちゃんがパンパンでパンケーキを食べているから行こうかな。


「…アレスティア」

「なんですか?」


「…アレスティアが死んだら、私は寂しい…人間は、寿命が短すぎる…」

「あー…まぁ、長くて百年ですからね。人間は…」


「私にとって百年なんてあっという間だ…その後の生を考えると、どうしたら良いか解らない…」

「ふふっ、私が寿命で死ぬと思っているんですか?」


「だって…人間だろう?」

「はい、ですが…私の周りに居る方々は、私を寿命で死なせると思いますか?」


 身体の成長期が終わったら、過保護な誰かさんが私の寿命を消すと思うんだ。

 一応エナジー魔法があるから、不老くらいなら自分で出来るけれど…


「…確かに、アラステアとクロスハートが居れば簡単…なんか、少し安心した…」

「…クロスハートって誰です?」


「あっ、ここでは違うのか。私の髪を切ったイケテル女だ」

「やっぱり知り合いなんですね。リアちゃんはハズラの人なんです?」


「いや、金色の世界ルビアだな。補佐に居た覚えがある」

「あぁールビアかぁーなるほどぉ、序列は?」


「二位だな。強さは別格…補佐ですらハズラドーナに単独で勝つくらいだ」


 あぁ…だからあんなに強いのか。

 ルゼルと初めて会った世界がルビア…でも色々気になる事がありけり…リアちゃんは教えてくれないし…って今リアちゃんが蒼禍の発言を止めないって事はリアちゃんの情報解禁が近い?

 今解っている事は、昔聖女で千歳以上…ルビア所属で、可愛い女の子を守る会の会長…


「序列戦をしたらその内戦いそうですね…はぁ、まだ勝てないんだろうなぁ」


 強くなったという自信は付いたけれど、上には上が居る。

 頑張らなきゃな。



 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇



「いらっしゃい、可愛い子ちゃん達」

「…なんかこの光景は久し振りね」

「レティ格好良いです」


 久し振りにカウンターに立ってみた。

 注目される感じが良いね。

 定期的にキャーキャー言われたいから、身長を伸ばしたいんだけれど…短足を直す薬って無いかね?

 クーちゃんの脚が長いから比べちゃって…コンプレックスなんだよ。


「そういえば愚姉に言っておいたわよ。面倒だから断るって」

「あーそうなんだ。何か言っていた?」


「予想通りみたいだったから、会いに行くって言っていたわよ」

「パンパンに来るの?」


「さぁ? 帝都に出たら接触してくると思うわね」

「ふーん、会っても私に不利益しか無いから会わない方が正解かな」


 どうせ野次馬に囲まれながら、お待ちしていましたアレスティア王女ーとか大声で言ってまた私の外堀を埋めようとするからね。


「ふふっ、外堀を埋めて第一皇女主導で第二皇子との婚約を無理矢理にでも進めてしまえば、国民の支持率は上がるわね」

「あの演劇の先入観って怖いよねー。早く皇帝になれば良いのに」


「まっ、闇の魔眼があれば準備が整い次第皇帝になるでしょ。私達が動くのはその時ね」

「だね。それまで引きこもり生活を楽しむよ」


 エーリン探し、美少女グランプリ、エルドラドに行ったら…パンパンと裏世界を往き来する楽しい楽しい引きこもり生活が待っている。


 よしっ、早速迷宮へ行こうじゃないかっ!


 ……ありゃ、幼女の部屋を覗いたらミズキがすやすや寝ている。なんか気持ち良さそうに寝ているから起こさないでやるか。

 癒し効果のあり過ぎる幼女と寝たら堕落しちゃうけれど、ミズキなら大丈夫かな。多分。


 あっ、幼女の目がチラっと開いて目が合った。でも拗ねた顔をしながらミズキに抱き付いてまた寝てしまった。

 沢山寝ておくれー。



 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇



「アスティ、ここ何階?」

「さぁ? 下の階もあるから最下層じゃないよ」

「魔素が濃いです」


 現在ヘルちゃんクーちゃんと共に迷宮に来ていた。

 ヘルちゃんは白ローブに雷牙王の小剣…テーマは白魔導士風らしい。

 クーちゃんは緑色の服に緑の魔槍…テーマは魔法槍士風らしい。


「なんか二人とも戦闘職業っぽくて羨ましい」

「アスティが適当過ぎるのよ。いつもの白い普段着に手ぶらとか迷宮舐め過ぎよ」

「レティの職業すっぴんです?」


「すっぴんだと普通じゃん。じゃあ私に似合う戦闘職業考えて」

「遊び人ね」「遊び人です」


「ゼロタイムで言わないでよ。なんかいや。他の」

「変態美少女」「素敵変態」


「それただの褒め言葉だよ。戦闘職業の話」

「無いわ」「無いです」


 無いのか…仕方ない、ここは遊び人で頑張ってみよう。

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