ここは何階だろう…

 

 スイッチを押したらガコンッと床が斜めになって、滑り道が完成した。これ踏ん張れば滑らないくらいの摩擦だから、尻が削れるな…革の敷物だけじゃ厳しいぞ…


「ミズキさん、本当にこれだけで尻が無事なんですか?」

「十回中五回は大丈夫だったよ」


「五割は駄目ですよ。あっ、そうだ」


 前に倒した雷牙王の毛皮を使おう。

 SSランクの毛皮なら大丈夫でしょ。という事で頑張って入れ換える。


「…凄く勿体無い使い方だね」

「尻の方が大事ですよ」


 じゃあ行こー。

 踏ん張る足を離すと、スルーッと滑った。

 おー、流石はSSランクの毛皮…速い速い。


「えっ、ちょっと…速すぎ速すぎ!」

「速いですねー」


 おっ、カーブだ。

 スルーッ…ちょっ…ミズキ抱き締め過ぎ…苦しいよ。


「いやぁーー!」

「耳痛いんで叫ばないで下さいよ。あっ、ジャンプ台ですね」


「えっ! ジャンプ台なんて知らないっ! きゃぁーー!」


 うるさいよ。

 きゃぁーは駄目だよ。

 女子をきゃぁーって言わせるのは好きだけれど、きゃぁーって言っているのを至近距離で聞くのは好きじゃない。


「速いからルートが変わったんですかね。あっ、魔物」


 ゆびーむ。

 おっ、普通のコウモリ型の魔物だ。

 ここは隔離された場所だから合体しなかったのかね。


「あーっ! またジャンプ台っ! いやぁぁー!」

「なんか楽しいですねー。また滑りましょうね」


「嫌だよ! 死ぬ死ぬ死ぬぅ!」

「安全な死の恐怖って癖になるらしいですよ。遊園地にまた行きたくなるのはそのせいです」


「あぁぁー! 遊園地なんてあるのぉ!?」

「裏世界にありますよ。私のお勧めは逆スカイダイビングです」


「逆って意味解らんしっ!」

「反重力加速装置で上空一万メートルまで十秒で到達するんですよ。その後は自由落下で地上に激突…凄い装置ですよねー」


「それただの自殺っ! うひゃぁー!」

「もうすぐ終わりっぽいですよ。ほらっ」


 滑り道の終点は普通に壁だね。

 激突したらバキバキだから、ソルレーザーを噴射して減速しよう。

 おりゃー……あっ、ぶつかる。


 どーん。


「ごふっ…やばい…息が…」

「ぐはっ…ちょっと…これは…洒落に…なりませんね…」


 結局二人で壁にごっつんこ。

 仲良く粉砕骨折した。


 エナジーヒール…

 …よし、なんとか回復。

 ミズキも回復中か…


「ミズキさん、大丈夫ですか?」

「…痛かった」


「ちょっと休憩しましょうか。丁度噴水の部屋ですし」

「うん…レティの回復もして。ちょっと身体がギシギシする」


「良いですよ。エナジーヒール」

「はぁ…気持ち良い…これ複製して良い?」


「多分出来ませんよ。やってみて下さい」

「複製……あっ、出来ない」


 エナジー魔法はルゼルの固有魔法だから、上級魔眼の能力じゃ難しい。

 …にしてもここは何階層?

 地下への階段を進む迷宮だから結構進んだと思うけれど…


「いつもは何階層に着くんですか?」

「五階層。城の記録では地下二十階らしいよ」


「ふーん。二十階か…ちょっと周りを視るんで休憩していて下さい」


 深淵の瞳を解放して、奥まで視ていこう。

 造りは一階と一緒だけれど、通路が広くて魔物が大きい。下の階もあるから最下層ではないか……エーリンの姿は見えないな。

 休憩したら先に進もうかな。


「レティ、どうだった?」

「エーリンは居ないですね。とりあえずここに転移ゲートを設置して、私の部屋に行きましょうか」



 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇



 転移ゲートをくぐって私の部屋に到着した。


「じゃあ一緒に寝ましょうか」

「えっ、エーリンちゃんは良いの? 早く行ってあげないとお腹空いているかもよ」


「あぁ…大丈夫ですよ。エーリンは普通に虫食べるんで、手ぶらで何個か迷宮攻略していますよ」

「凄いメンタルだね…変わっているとは思ったけど」


「それだけエルドラドが厳しい環境だって事ですよ」


 今頃迷宮を攻略していそうだな。

 意外とオールラウンダーだからなんでも出来るし…

 よしっ、脱いで脱いで。


「…寝るだけじゃないの?」

「いや、Tバック見せて下さいよ。スパッツ頼んでおきますから」


「…もぅ、仕方ないな」


 服を脱がせてTバックを確認……良いね、プリっとしたお尻の中心に掛かる赤色のTバック…紺色も良かったけれど、赤も素敵だ。


「四つん這いを希望します」

「色々見えるから恥ずかしい」


「赤のTバックを履いたミズキさんが悪いんですよ? こんなの襲ってくれと言っているものじゃないですか」

「だって…役職が邪魔して下着くらいしかお洒落を楽しめないんだよ?」


「そうやってギャップエロ狙いですか? 可愛いですねっ」

「えっ、ちょっと…それ何?」


「ふふっ、なんでしょうね…」


 ふっふっふ。

 ヘルちゃんとクーちゃんが来るまで休憩しようではないか。


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